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素直な気持ちを見つけることからチームは始まる。

『お前はもっと人を傷つけたほうがいい』

「企画でメシを食っていく」(通称:企画メシ)を主宰する、阿部広太郎さんがかつて先輩から言われた一言。

何を書こうか考えている間ずっと、この言葉が床屋のライトのようにぐるぐる頭の中を回り続けている。

2年前、企画メシのスピンオフ講座である「言葉の企画2019」の企画生だったわたし(岡本彩菜)は、現在「企画メシ2021」に聴講生として参加している。この3回目は思い切って、講義のレポートライターに手を挙げた。

企画メシ、言葉の企画とは?
2015年に主宰の阿部広太郎さん(コピーライター&作詞家)がスタートした『企画でメシを食っていく』。
企画する力をはぐくみながら、仲間を見つけられる場をつくりたい。その思いのもと、毎回のテーマごとにお招きしたゲスト講師にお話を伺っていく連続講座。言葉の企画は2018年からスタートしたスピンオフ企画。

阿部さんはその時のことをこう振り返る。

『「人を傷つける」ってどういうことなんだろうなぁと思って、鵜呑みにもできなければ意図も理解できなかった』 

阿部さんが感じていたことが、まさにわたしのいまの心境。

講義レポートを書かなきゃいけないのに、心はずっともやもやしてそこに立ち止まっている。このもやもやは、簡単に晴れそうにもない。

何のもやもやなんだろう。ここまで引っかかることが気になって、もう一度講義を振り返りながら、わたしなりの答えを探してみることにした。

外は雨でじとじと、ますます暑く感じられる夏の日。

2021年8月14日(土)13時、オンライン。
企画メシ第3回、チームの企画の講義がはじまった。

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企画メシでは、講義の約2週間前に課題発表があり、私たちはそれに取り組んで提出を済ませてから講義に臨む。

今回も企画生が18のチームに分かれ、チームの企画に取り組んでいた。


講義前半は、阿部さんがチームで組んだ過去の実体験をまじえながら、『チームで組む』ときに何を大切にしたらよかったのか、いま感じていることや考えていること、心構えを話してくれて、考えを深めていく。

それは2009年、いまから12年前。
阿部さんがまだコピーライター駆け出しだった頃のお話。

『夢』をテーマにした新聞広告

コピーライター3人で『夢』をテーマにコピーを書くことになった。

わたしならなんと書いただろう。
想いを巡らせながら話を聴く。
 
阿部さんが打ち合わせに持ち込んだコピーはこういうものだった。

夢は、●●●●●●
△△△△な夢を大事にしたい
□□□□は、夢になる

打ち合わせのあと、案件のリーダーであるクリエーティブディレクターに「ちょっと来てくれ」と小部屋にひとり呼び出され、話をすることになった。それが冒頭の言葉につながっていく。

この仕事にはさ、タブーなんてないんだよ。

当たり前のことを当たり前に書いていたら、お前が書いている意味がない。

お前はもっと人を傷つけたほうがいい。

『その時は言葉の意味も意図もやっぱりすぐにはわからなかったけど、後からだんだん、だんだん、わかっていった』

自分自身が傷ついたこと、誰かの心に触れることができたこと、誰かの心に触れてしまったこと、そういうことに、わたしたちはもっと自覚的にならなくちゃいけなかったんだなと思う』と、阿部さん。

一方のわたしは講義を振り返っている今になっても、わかったとわからないを行ったり来たり。

自覚的になること。傷つけること。

この意味や意図がちゃんとわかるにはあと12年かかるの・・・?いやいや、このnoteそんなにひっぱれない。。。!と思い切って阿部さんにメッセージで尋ねてみることにした。

そこで阿部さんが伝えてくれたことを、せっかくだからシェアしたい。

「自覚的になる」は「目を向ける」というニュアンスかな!敏感でいたいなと思う。
素通りしないというか。

泣いている人がいたら通り過ぎちゃいけないよね。

そしてそれは自分だったりして。
感動も、喜びも、
たまらない気持ちも、
相手の心を傷つけるって言えないかな?

幸せな傷

幸せな跡

幸せな思い出
岡本さんは、「言葉の企画2019」のこと覚えてる?

もし覚えているとしたら、それは、思い出を刻んだんだよね

このやりとりを通して気がついていったのは、わたしは『傷つける』の言葉を痛みだけで捉えてたんだということ。

でも、ハッピーな気持ちだって、あったかい思い出だって、自分の心が震えて残り続けるものは、全部「傷つけてる」なんだろう。

それはきっと、伝わったってこと。

そう考えてみれば、傷つけられたこと、傷つけたことがわたしにもある。

言葉の企画でたくさんもがいて、やったことがないことにも自分から手を挙げて挑戦したことは心にも記憶にも刻まれた傷で、それがあるから今のわたしがあるのだと言えるし

当時の課題で『素敵な人』をテーマにnoteを書いたとき、わざわざコメントを書いて届けてくれた人がいて。それもきっと何かが傷となってアクションをしてくれたということなのだと思う。

阿部さんはこうも伝えてくれた。

『なにかを人に伝える仕事をする、すべての人に言えること。

夢についてのテーマだからといって、夢って言葉を書けばいいわけではない。

夢の大切さは誰しも感じている。

だけどそれがなかなか素直に受け取れなかったり、実行できなかったり、夢に向かうことができない中で、夢という言葉を使わずに夢の大切さを伝えなくちゃいけない

わたしたちが本当にコピーに込めなくちゃいけないのは、『夢』に対して自分は何を感じているのか、本当はどう思っているのか、体感そのままの素直な想いなんじゃないかなって。

それが「人を傷つけたほうがいい」の真意であり、「伝えた」ことが、触れた人を突き動かしたり結果として誰かの人生を変える、ちゃんと重みを伴った「伝わる」ってことに繋がっていくんじゃないかと感じるようになった。

わたしたちは「伝えよう」としすぎているのかもしれない

愛と書かずに、愛と伝える。

『伝える』ことを考えるとき、阿部さんの著書、『超言葉術』で扱っているI LOVE YOUの訳し方を思い出す。

愛している、それは自分にとってどういうことを指すのか。
その状態のとき、自分は何を考えてどんな行動をしているのか。

改めて自分が本当は何を感じてどう思っているのか、自分に問いかけていくことからはじめると、くっついている記憶や想いが繋がって芋づる式に思い出されたりもする。

わたしの訳はこんな感じ。

それはとっても天気の良い、ちょうど桜が満開の時期だった。

いまが一番綺麗だって思ったら、いてもたってもいられなくて。急いで家に戻ってカメラを引っ掴んで桜並木の下に戻る。ファインダーを覗いて見える2色の世界は、やっぱり間違いなく最高に綺麗だった。

この感動をひとりで抱えてるのはなんとなくさびしい。気づいたらわたしはその気持ちを分かち合いたくて、大切な人にこれを送っていた。

言葉にならない言葉がある、と思う。

この訳をした後で、『あなたに見て欲しい』『あなたと一緒に体験したい』そんな風に気持ちを分かち合いたくて連絡をするその行動自体がもうわたしのI LOVE YOUのカタチ、つまりわたしの愛情表現であり、わたしが愛を感じられる表現なんだ、と気がついた。

この訳は、Twitterのハッシュタグ『#I LOVE YOUの超訳し方』の企画で書いたもの。言葉の企画2019からうまれた、ことばの日のメンバーが主体となって、みんなのI LOVE YOUの訳し方を募集した。

同じテーマで、こんなに違った言葉が出てくるのか〜!という発見もあれば、あ、それわかる〜!という共感もたくさん。

感じていること、心が動いた瞬間には必ずそれにまつわるエピソードがあって、表現にはそれが滲み出ている。そこにあるものこそがその人が生きてきた証であり、唯一無二の特別なストーリーであり、その人らしさなのかなぁと思える。

▼募集したものを1つにまとめあげたのがこのnote。お時間の許すときに、ぜひゆっくり読んでみてほしい…!

こうやって考えてみると、伝えるときってもっと素直でいいのかもしれない。

躍起になるんじゃなくて、自分の心をゆっくり、じっくり、見つめ直してみる、それを 実はね、って話してみるくらいの気持ちの方が、本当の意味で伝わっていくような気がしてきた。

著書『それ、勝手な決めつけかもよ?』で阿部さんが使っている『解釈』という言葉も、前回のゲスト 九龍ジョーさん『演算装置をつかう』という言葉も、ここと繋がっているような気がする。

少し引いてみてみると、企画メシの講義は1回1回がバラバラなように見えて、講座全体がゆるやかな学びとしてつながっていること、自分の中にたしかに積み重なっていることも感じられる。

それは誰かにとっては今すぐ気づけないくらい小さいものかもしれない。わたしは今改めて企画メシを聴講しながら気づきや変化を自覚できているくらいだから、もし今感じられなくても不安に思わなくて大丈夫だよって自信を持って伝えたい。

『感動メモ』で思い出す初心のこと、チームになるということ


企画生ひとりひとりが講義の前後に自分の心が動いたことを記しておく『感動メモ』というスプレッドシートがある。

それを読んでいたとき、今回の課題、チームの企画について

・楽しかった、やってよかったと感じている人
・チームの企画のこれからを楽しみにする人
・チームのメンバーに感謝をする人
・もっとできたんじゃないかと自分のやり切れなさを反省する人
・もやもや、ざわざわ 何か言葉にできない想いを抱える人

みんなの心はさまざまな色のグラデーションになっていて、約80人ひとりひとり同じってことがない。

それぞれがこれまで個人で取り組んできた企画の時とはまた違った気持ち。誰かと交わって生まれてきたその柔らかく素直な気持ちに触れて、わたしたち聴講生チーム、チーム18のはじまりの日を思い出す。

前回の講義の2、3日後、事務局の平賀さんからメールで聴講生チームのメンバー発表があった。

とりあえずLINEを交換してグループをつくり、顔を合わせて話してみましょうかと、渋谷道玄坂のロイヤルホストで顔合わせをすることが決まった。

当日、4人が席に着く。せっかく会えたのに、何を話せばいいか戸惑いの空気が流れる。うーん、近づきたい気持ちはあるのになんだかぎこちない。

「ぐぅぅぅぅ」 それでもお腹は減る。


『あの、、、ご飯、食べてもいいですか?』

勇気を出して言葉にすると、さっきまでの言葉にならない迷いの空気が少し和らぐ。『あぁ、どうぞどうぞ』 さっとメニューを渡してくれる。

(ああ、ごはんを快く受け入れてくれるひとたちだ、大丈夫。やっていけそう。)ひとり勝手にほっとしながら、最近ハマっているフードエッセイスト平野紗季子さんのポッドキャスト「味な副音声」を思い出して、ビーフジャワカレーを頼むことにした。

えーどうしようかなーと迷いながら、メンバーも思い思いに注文をすませる。

店員さんがテーブルを離れると、自己紹介がはじまった。初めこそブラックボックスに手を突っ込むようにこわごわ、そろそろ様子を見るように話していたけれど、このテーマを話し出してから、それぞれのエンジンがかかりはじめる。

・なんで今回チームの企画に聴講生で参加しようと思ったか
・このチームの企画でこれだけは達成したいということ

事前に『今日話をしたいこと』としてLINEにあがっていたから、それぞれ心の準備ができていた、というのもよかった。ひとりひとり、話を順番に聴いていくと、全然違う4人だけど、参加の理由に重なるところがみえてくる。

・相手に遠慮して言いたいことを我慢してしまったこと。
・年齢や立場を気にして、自分が言っていいのかと諦めてしまったこと。
・もやもやしていた気持ちを一人で抱えてしまったこと。
・『企画を実行する』ことにこだわったら心がついていかない企画になってしまったこと。
・企画が続かずにチームが解散になってしまったこと。

わたし以外の3人は、言葉の企画2020でチームの企画を体験している。

一緒に組む人への愛があって、ちゃんと状況も見れて、相手の気持ちや想いも汲み取ろうとできる人たちだからこそ、そのもやもやした想いを1年も抱えていたんだなぁ、、

自分にも似ている体験があって、心がゆっくりと重なっていく。

阿部さんが事前に送ってくれていたチームで取り組むときの心構えの文章も参考にしながらそれぞれの話を聴いていくなかで、わたしたちの目指したいチームの形は、このもやもやを全てひっくり返したものになっていった。

・遠慮はやめよう。ちゃんと伝える。
・結果よりも過程を大切に。
・全員が納得いかなければ白紙も辞さない。
・チームの企画が終わっても、つづいていく関係性。
・さいごまであきらめない。

チームの中には色んな人がいる。そのバラバラな意識を一つにする土台になるものをみんなで作る。

阿部さんは関わる全ての人にヒアリングをして、そこに自分の解釈を入れて、手紙のようにして贈ることをしている、ということを講義で話してくれていた。

立ち止まったときなんども話した『もう後悔したくないよね?これで最後にしよう。だから遠慮なく言おう』それは合言葉のようだった。最初の土台がなかったら、こんなふうには話せていなかったかも。

そう思うと、組むのが仲間であれクライアントであれ、いつも全員が同じ場所(=意識)に立てるように、目指してるところが同じになるように、お互いに我慢や遠慮をしないために、初めに土台を作ることはとても大切なことだなぁと思う。

ついでにひとつ、土台をつくりながら面白かったことは『とりあえず10』

いま目につくもの、気になるものを10個、好きに書いて並べて、みんなで見せ合う。気になることを聴いてみる。

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ひとりに3人でいろいろ質問するのは、なんだか特集のインタビューのよう。書いたことだけ見れば、概念も固有名詞もばらばら。

でも話を聞いていくと、同じように見てきた景色、体験したこと、感じてきたことにつながっていたりもする。

本屋、旅、食、おさんぽ。予期せず偶然出会うものがおもしろいと感じる心。雑談余談を自由にできる空気。

今振り返ると、もうここに企画のタネがあった。

職業、経歴、見た目ではない、日々何をみているのか、考えているのか、もっている価値観。そういうものを通してわたしたち4人はお互いのカタチを知り、少しずつつながり、気づけばチームになっていた。

この日のことを思い出すと、昔うまく行かなかったチームの体験があったから、今回のチームの企画ができたのかもしれない、とも思う。そう想うと、抱え続けたもやもやした気持ちにも、とても意味があったんだなと、感慨深い気持ちになる。

お互いの気持ちや想いを知って、つながって、チームとして走り出したー!と喜びも束の間、障害物競走のようにいくつも難題が待ち受けていて。

ひとつ終わったと思った頃にまた試練かっ…!!の連続。

こんなふうに、きっと、それぞれのチームに企画をまとめあげるまでのストーリーがある。全てのチームの企画書をみているだけでも、それはほんの少しだけ、想像ができる。ほんとにみんな、よく頑張ったよね。

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自分が何を感じているのか、相手は何を感じているのか、一生懸命わかろうとして、歩み寄って、そんな誰かとのやり取りのなかでの学び、経験は、どんなものであってもかならず自分の身になるし、

それが企画として実行に至ったとしても、白紙に戻ったとしても、その経験を糧に後々チームを導くことができるはず。

そんなことを身をもって学んだチームの企画。


いろんな想いを抱えながらチームで過ごした約2週間の夏の日々。みんなにとって、それはどんな日々だったんだろう。

『やるぞ!』となったチームはここから本格始動。

自分のチームだけでなく他のチームや歴代の企画生も、マキコミ、ツナガリ、タスケアイ!!

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楽しみながら、もっともっと深く、そして広く企画でつながっていけますように。

外に向けて発信していく企画もあるので、ここからどんなふうに拡がっていくのか、乞うご期待!


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ライター:岡本彩菜

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