世界はデザインで

本当に、世界はデザインでできていた。

カフェにいる。クローゼットから洋服を取り出し、着替え、髪を結び、玄関で靴を履き、家のドアを開けて外に出て、鍵を閉め、階段を降り、道を歩き、カフェに入り、アイスカフェラテを買い、椅子に座り、机上でMacBook Airを開いた。『世界はデザインでできている』という本を読み返しながら、キーボードで文字を打っている。

世界はデザインでできている

カフェ

いまわたしが身につけているセーター、ズボン、靴、ヘアゴム。背負ってきたリュックサック。家の玄関、ドア、鍵、マンションの階段。道で見かけた建物、フェンス、「止まれ」の標識、信号、電柱、街路樹。目の前にある机、棚、パソコン、キーボード、プラスチックカップ、メモ帳、ペン、スマホ、本。座っている椅子、見上げた先にある照明と窓ガラス。

すべてデザインでできている。

身の回りにはデザインがあふれていること、デザインがなければあらゆるものが存在しなくなることに気づかされるところから、この本はスタートする。

読みながら周りを見渡し、デザインを探してみる。このデザインにはどんな意図や目的があるのだろう、どんなふうに役立っているのだろう」と考える。

世界がデザインでできているとすれば、デザインを楽しむことは、きっと世界を楽しむことにつながるのではないだろうか。この本を読むと、毎日の暮らしがより楽しく、豊かになる気がする。

いま手にしている本のデザインを考えてみる

たとえばわたしは、本自体のデザインについて考えてみた。

世界はデザインでできている

まずは「本」という物体そのもののデザイン。紙を束ねて、背の部分をくっつける。表紙と裏表紙をつくる。カバーを掛け、帯をつける。パラパラとめくれる小口があり、見返しがあり、奥付がある。平積みできて、立てかけることもできる。

これらはきっと、持ち運びしやすいように、読みやすいように、保管しやすいように進化してきたデザイン(?)

『世界はデザインでできている』のカバーは、カラフルでありつつも落ち着いた印象。糸井重里さんのコピーをワインレッドの文字で添えた帯がついている。本屋で見かけたら、パッと目を引かれて「お洒落だな」と思うだろう。それから糸井さんのコピーを読んで、「一体どんなことが書かれているんだろう?」と気になる。絶対に手にとってしまう。

これらはきっと、本に興味を持ってもらい、買ってもらい、心地よく読み進めてもらうためのデザイン(?)

本を開けば目次があり、「デザインの〇〇(距離、作戦、力……)」と章の名前にルールがあることがわかる。第2章「デザインの作戦」では、「〇〇をデザイン」という形に統一された小見出しに目がいく。面白そうだなと思う。読み進めると、見出しごとに【デザインの作戦ポイント】というまとめも登場する。繰り返しがクセになる。

これらはきっと、構成をなさった嶋津亮太さんがつくったリズムであり、読者がすいすい読めるように、理解しやすいようにするためのデザイン……(?)。そんなことを考えていると、限りなく楽しめてしまうのだ。

「デザイン」を「文章」に置き換えてみる

この本では、アートディレクターの秋山具義さんがデザインに込めた意味や目的、デザインをつくる過程やその工夫、デザインを人々に提案し伝える方法までを余すことなく語ってくださる。

デザインに関しては初心者のわたしだけど、本書の内容はデザイン業界以外に携わる人にもあてはまる部分があるし、役に立つと感じた。tamamiazumaさんのこちらのブックレポートに書かれていた「みんな、だれもがデザイナー」という言葉。まさにそのとおりだと思う。

たとえばわたしは、「デザイン」を「文章」に置き換えて考えたみた。

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知らない人に言いたくなる仕掛けをつくること(p 39)。
文章中にシェアしたくなるような魅力的なフレーズや「なるほど」と目から鱗が出る情報があると、人に伝えたくなる。帯を書いてTwitterでシェアしたくなる。

対象者の行動をイメージすること(p44)。
どんな人に宛てて、どんなテーマで、どのくらいの長さで、どんな文体で書くのか。読んだ人にどんな印象を持ってもらいたいのか。どんなことを考えてほしいのか。どんな行動に結びつけたいのか。文章を書くときにも重要なポイントだと思う。

「気づいたのは自分だけ」と思わせること(p49)。
たとえば小説の中に伏線をはる。気づいた読者は、「しめしめ、わかってしまったぞ」と嬉しくなる。

だれでも発信できる時代だからこそ、「自分が何を見せるか」が重要であり、人と違う“何か”を感じさせる必要があること(p99)。

世の中には数多くの書き手がいる。noteにも毎日1万件もの投稿がある。だれもが発信できる時代だからこそ、より個性が重要になり、「その人にしか書けない」オリジナルなものが価値を帯びてくる。数多ある作品の中から見つけてもらうためには、個性を磨き上げ、それを上手にアピールしていく必要がある。


このように、文章にあてはめても驚くほど自然に読めて、面白いのだ。きっとほかの分野で考えてみても、なるほど、と思える部分がたくさんあるのではないだろうか。

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『世界はデザインでできている』を読んだことで、普段何気なく目にしていたモノや商品の背景やストーリーを考えるようになり、自分の視野と思考が広がっていくのを感じた。そしてまた、秋山さんの考え方を日常や仕事に応用させていく楽しさも感じた。

きょうわたしは、このブックレポートを書くためにあえて数ヶ月に一度しかやってこないカフェ&セレクトショップにやってきた。店の雰囲気や音楽、置かれたモノの数々が本の装丁や内容にマッチしており、気持ちよく文章を書き進められると思ったからだ。身に着ける服や靴もセットで選んだ。

もしかしたらこれも、広義のデザインなのだろうか。そんなことを考えながらワクワクしてしまう午後だった。

レポートを書く機会を与えてくださった嶋津さん、素敵な本に出会わせていただきありがとうございました!


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