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フラットホワイトの神様

ニュージーランド生活20日目。
天気、晴れ。最高気温、16度。夏ってなに。

楽しくない毎日を送っていてはダメだな!と思って、時間が空いたので、ちょっと歩いたところにあるカフェに行った。

ど田舎なので貴重なカフェなんだけれど、治安というか土地柄的に富裕層が多くお住まいなので、カフェのクオリティがはちゃめちゃに高い。

何気なく頼んだベーグルが美味しすぎて「んま」と言ってしまうほどには。


ここのカフェはすでに3回目。お仕事中はいつも「コーヒーが待ってる…!」と思って働いている。束の間のご褒美タイム。

レジでいつものように(いつも、だって。まだ3回目なのに)フラットホワイトを注文。ニュージーといえばフラットホワイト。カフェラテよりもエスプレッソをたくさん感じられる、謎の飲み物。


「フラットホワイトね、おっけ。サイズは?レギュラー?いいね。ちょっと待ってな」と、背の高いお兄さん。ニコニコスマイルで言われる。

何気なく、レジの前に置いてあるショップカードを手に取る。ひっくり返すと、スタンプカードになっていて、10個貯まると1杯無料になるらしい。


「カード、作っておく?」とニコニコお兄さんが、さらにニコニコしながら訊いてきた。

もう3回来てるし、これからも来るなら作っておこうかな…と思って「じゃあお願い」と頼むと、3個分のスタンプを押してくれた。


「はい、どうぞ。きみ、3日連続で来てるよね。日本人?」


ひ、ひぇ〜!

なんですかぁ!ナチュラルイケメンですかぁ!

なにこの神対応!私が3日連続で来てること、気づいてたなんて!しかも日本人って分かっちゃうなんて!(そりゃまあ分かると思うけど)

なにこの気持ち!
なに!この!気持ち!

ニコニコスマイルの彼から、スタンプカードを受け取り、思わず両手で包み込んでしまう。



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Boy meets girl 幸せの予感 きっと誰かを感じてる


空いてるテーブル席に座り、ニュージーランド名物フラットホワイトこと謎の飲み物を待つ。


思えば、この町に来てからずっと寂しさが隣にあった気がする。

前に住んでいたところは都会で、ごった返していて、なんだか忙しない日々で、私が望んでいたものとは少し違ったけれど。

でも顔を合わせてはケラケラ笑える友人がいて、中国語でひたすらアニメのキャラクターを教えてくれる知り合いもできて、美味しいお店を片っ端から教えてくれたルームメイトもいた。


ああ、そうか、私、寂しかったんだなあ。

ひとりで知らない町に来て、よくわからない生活が始まって。
そうかそうか、寂しかったんだ。

そんな寂しさを抱えた私、ちゃんと視界に入れてくれた人がいるんだってわかったら、やっぱりどうしたって嬉しい。


海辺の町にふさわしい、陽気な音楽が流れる店内。
水着姿のサンタクロースが、レジのカウンターに置いてある。


「はいお待たせ、フラットホワイト」
チューリップがきれいに描かれたフラットホワイトを、筋ばった形のいい手先から受け取る。

「ありがとう」そう言って受け取ると、爽やかスマイルで返された。


「 ごゆっくり〜 」注) 日本語で


ひょええええええ!!
な、なにそのファンサ!!!

誰!?誰がその日本語教えたの!?誰よ、その女!


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異国の地で、見知らぬ土地で、心にぽっかり穴が空いたような寂しさを抱えている私に、ちょっと、ちょっとそれは、ええ、ダメージが大きすぎます。


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ちょっぴり熱いカップをゆっくり口元に近づける。
きれいなチューリップが、口の中にすぅっと消えてゆく。

ニュージーランド名物、フラットホワイト。
カフェラテよりもエスプレッソを多く感じられる、魔法の飲み物。
少しだけ苦くて、あまい味がする。

ロマンスの神様 この人でしょうか。


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