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サンタクロースによる言葉遊びの短編小説 第一章

今朝起きたらワシはお爺さんになっとった。もうクリスマスに浮かれる年齢でもなく、ワシはいつも通り会議に出席し、プレゼンを済ませたワシは最後に靴下を履き替えたのはいつじゃったかのう、と嘆きながら投げキッスを部下たちに分け与え、腰痛をこらえながら帰路に着いておった。

いつもなら真っ直ぐに帰宅して靴下を履き替えていたのじゃが、今日のワシはどうもいつもとは様子が違う。まずようわからんがとりあえず老けておる。そして自慢のスーツが真っ赤に染まっておられるではないか。

蚊に刺されたのかと思い、全身を掻きむしってみたものの、出血はますます酷くなる一方である。ワシは慌ててマツモトキヨ氏にメールを送り止血剤を手配してもらおうとしたのだが、マツモトは年甲斐もなくクリスマスなんぞに浮かれておる。

そんなキヨシを見ているうちに、今夜は清らかじゃのうと思えてきたワシは、ワシにはまだ希望がある、諦めなければ何だって出来るような気分になり、重い腰を持ち上げるが、やはり腰は痛む。

だが今日のワシには袋がある。アイテムをたくさん入れられる魔法の袋から止血剤を取り出したワシはまだ生きていることを実感し、この世界を血に染めようと神に誓う。サタンなのに神に祈ってもいいものか、それは今となってはもうよく分からないのであるが、とにもかくにも急がねばなるまい。

穴の開いた靴下を履いた子供たちにバンドエイド、ならびに消毒液を急いで届けねば!だが子供たちの傷を癒すよりも靴下の穴にバンドエイドを貼ったほうが早いかもしれんなと思い直したワシは靴下を履き替える間もなく永い眠りにつくのである。これからが人生の本番であることも知らずに——

第一章 完


—著者あとがき—
読んでくれてどうもありがとう。少し臭い私の靴下を来年もよろしくお願い致します。

解説

サンタ→プレゼント→プレゼン
サンタ→赤→血
きよしこの夜→マツモトキヨシ
のように連想して勢いで書きました。

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