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5秒間だけ四国と沖縄。

沖縄に行ったことがある。
それから四国にも行ったことがある。
九州には行ったことがない。

沖縄でも四国でも、レンタカーを借りて運転したことがある。いつもは北海道の道を走っているから、当然景色が異なる。

旅行に行くと、知らない街に来た感じがする。感じがするというか、実際に知らない街を走っている。


札幌の大動脈である国道36号線を南に向かって、車を運転していた。札幌から約30キロ離れた千歳ちとせで仕事があったからだ。


国道36号線というのは、札幌と千歳、苫小牧、室蘭を結ぶガチの大動脈。札幌市民からは国道36号さぶろくという名前で親しまれている。



これまでの人生で、この国道36号線を何回往復したかわからない。さすがに100往復はしていないと思うけど、それに近い数は走っているんじゃないだろうか。


何回も往復してるわけだから、
景色もおなじみである。


札幌ドームを右手に進むと、オートバックスがある。オートバックスをしばらく進むと日糧製にちりょうせいパンの工場がある。

もう少し進むと札幌を抜けて北広島市に入り、
右手にはコストコが見える。

さらに進むと、北広島市を抜けて恵庭えにわ市に入り、市街地を抜けると、次は千歳ちとせ市だ。



飽きた。



もう、何回同じ景色をみたら気が済むんだろう。
飽きた。毎度同じ景色。変わり映えしない。飽きた。もうええて。



そこで、3年前くらいに一度だけやった遊びを思い出す。車の中での遊びである。



3年前。


札幌から車で約5時間。

北海道の南端、函館市で仕事を終えた私は、車を飛ばして札幌に戻る車内に1人でいた。行きは高速道路に乗っていたが、帰りはゆっくり下道で。


函館から札幌に戻る道は基本的に海に面している。海沿いをず〜っと走るわけ。

北海道の形を思い出していただきたいのだが、北海道の左下って、腕が生えたように湾曲している。


湾曲した陸地に囲まれたこの海のことを、通称、噴火湾ふんかわんと呼ぶ。古代の火山活動でできた海のようである。


その湾曲した道を走って札幌に向かう。


湾曲しているから、天気がいい日には、はるか遠くの室蘭むろらん方面が見える。海の向こうに同じ北海道の陸地が見えるのだ。


3年前の私は、車を飛ばしながら、右手に見える噴火湾と、ベタに青い海、ベタに広い空、そして遠くに見える陸地を見て、四国を思い出した。

27歳のときに訪れた
瀬戸内海の景色に少しだけ似ている。


「ここを四国だと思ったらどうなるだろう?」


と、いうわけでやってみた。

今いる場所は北海道だけど、ここを四国のどこかだと考えたら、果たして私は四国にワープした気分になれるだろうか?


……


一瞬だけ四国だった。


5秒くらい。

ここは北海道だけど、脳をだませばここも四国になりうることがわかった。脳内ショートトリップである。




きょう。

国道36号線を走っていると、
景色が変わり映えしなさすぎて飽きた。

「おれは何回この道を通ればいいんだ。
 もう飽きた」

いい加減にしてくれ北海道。


というわけで、久しぶりに、
3年ぶりにあれをやってみよう。



車を運転しながら周りの景色を見つめる。


「ここは沖縄だ、ここは沖縄だ、ここは沖縄だ」



……


一瞬だけ沖縄だった。

また5秒くらい。

5秒経つと我に返って、
というか北海道に帰ってくる。



これは今朝の話だ。


今朝、こうやって考えて運転して、それをだれにも言わずに今日この時間になった。「あ」と思い出して急いで文章を書いた。だから遅れた。今書いた。


脳をだますと、一瞬だけワープできるから、
愉快な小旅行ができるよ。


<あとがき>
北海道の噴火湾も美しいですが、瀬戸内海に浮かぶ島々のあの美しさには勝てません。こんなところが日本にあるのか、と当時びっくりしたことを覚えています。徳島県にはいったことがありませんが、高知県にいくときの山道に「陸の孤島ではないか」と感じたことを覚えています。今日も最後までありがとうございました。

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