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違いを生み出す名刺交換。

実るほどこうべを垂れる稲穂かな、という言葉がある。

社会的なステータスが上に行けば行くほど、謙虚でいなければなりませんよ、という教えを、稲穂にたとえた名作中の名作。誰が言った言葉なのかは知らない。


考えてみると、この方は信頼できるなぁ、と思う年上の方ほど、私に対して丁寧に接してくださる。きちんと敬語で会話をしてくれるし、私のお話をきちんと聞いてくれる。


26歳のとき、ある大きな企業の創業社長とお話をしたことがあった。昔書いた「上品な社長」である。60歳台だったと思う。


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それはそれは緊張したもので、名刺交換のときから、そのオーラ的なものに飲まれる心地がしていた。私みたいな人間がこんなお偉い方と話して、何か役に立てることがあるのだろうか、と緊張していた。


今日はそのときの名刺交換のときのお話をしよう。



上品な社長との名刺交換のエピソード


社会に出て、ある程度経っていれば、名刺交換くらい何度もしたことがおありだろう。互いに対面して、名刺を差し出すあの儀式。

相手の立場が上なら名刺を下から差し出し「株式会社〇〇のイトーです」みたいなそんな感じ。


一般的な名刺交換の流れを書いてみよう。

[1] 互いに対面する
[2] 名刺入れを出して、名刺を差し出す
[3] 会社名と名前を名乗る
[4] 初めまして、とか言いながら席に座る
[5] 名刺入れの上に相手の名刺を置く

多分なんだけど、こうじゃない?
名刺交換はただの儀式なんだから、これでしょ。


その社長は違った。


互いに対面した。
できるだけにこやかに。
緊張を隠すようにね。

で、会社名と名前を名乗って、名刺を渡した。

いつもならこれで終わり。

席に座って、会話がスタートだ。


ところが、その社長は違った。


私が「初めまして、株式会社◯◯のイトーです」と言って名刺を渡すと、こう言ってきたのだ。


「はい、イトーさんですね、よろしくお願いします。お名前はどうやって覚えればいいでしょうね?」


その社長は、手元の名刺から視線を私の目に移して、にこやかにそう言ってきた。そう言われたのは初めてだった。




あわわわわわわわわわ、と思いつつ、
私は自分の名前の覚え方を適当に説明する。

すると社長は「わかりました、よろしくお願いしますね」と言って席に座った。


ここで私が感じたことを素直に書こう。



「えっぐ、俺ってば、
 この人に認められてんじゃん!」

なんと自意識過剰な男か

1人の人間として認められている感じがしたのだ。


その後の商談もきちんと話を聞いてくれて、うまい風にまとまった。実るほど頭を垂れる稲穂かなを思い出したものである。



あの名刺交換の意図はなんだろう

その帰り道、名刺交換の瞬間を思い出しながら、考えたのは「きっとあの社長はみんなにあぁしてるんだな」であり「年下の人にはあのような質問を」「年上の人には別の質問をしてるんだろうなぁ」である。

つまり、名刺交換のタイミングで、相手に興味関心を持って何か質問をする、ということである。


これをやるだけで、お互いの間にある見えない壁は、音もなく美しく崩れる。


と、いうわけで翌日から真似することにした。

「よろしくお願いします。このお名前は初めて見ました」

「あの有名人と同じ珍しい名字ですね」

「どうやって覚えればいいですか?」


こうすると、これに慣れていない人ほど、あわわわわと反応することもあったし、表情がほぐれるのが見てわかった。

きっと、あの社長と名刺交換していたときの私も、同じような顔をしていたんだろう。


もちろん、これは札幌という地方都市だからこそ通用するものかもしれない。

東京や大阪というビジネスシティならば「うるせー、早く本題に入れやボケ、ぶっ飛ばすぞ」みたいな感情を失ったサイボーグが多そうで、逆に嫌われそう。



要は使いようだ。



というわけで名刺交換について整理。

<よくある名刺交換>
[1] 互いに対面する
[2] 名刺入れを出して、名刺を差し出す
[3] 会社名と名前を名乗る
[4] 初めまして、とか言いながら席に座る
[5] 名刺入れの上に相手の名刺を置く

これでも全然いい

<違いを生み出す名刺交換>
[1] 互いに対面する
[2] 名刺入れを出して、名刺を差し出す
[3] 会社名と名前を名乗る
[4]視線を名刺から相手に移す
[5]関心を持った質問を1つしながら席につく
[6] 名刺入れの上に相手の名刺を置く

なんか違うと思ってもらえそう


神は細部に宿るから、些細な儀式にもなにかしらのこだわりと思いやりを持つと、差別化ができるというものである。


勇気を出してやってみてね。


<あとがき>
東京に出張に行ったときに感じたのは、ビジネスライクな管理職ほど、こういう余計な問答を嫌うものだな、ということです。がしかし、役員クラスになると世界は変わり、それがたとえ東京でも名刺交換で会話に花が咲くということが多かった気がします。やっぱり、実るほど頭を垂れる稲穂かな、というやつかもしれません。最後までありがとうございました。

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