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土曜日っぽい海鮮エッセイ。

北海道ローカルの地上波番組を見ていた。

テレビ画面では札幌市民にはおなじみの狸小路たぬきこうじ商店街のグルメスポットが特集されていて、カヌレとかパンケーキとかのスイーツから、もりもりのラーメンなどが特集されていたのだけど、その中でもとりわけ目を引いたのは「海鮮丼」であった。

番組内で特集された海鮮丼は北海道で生まれ育った私から見てもなかなかのもので、6種の海の幸がどんぶりに「これでもか」というほどに盛り付けられていた。

乗っていたのはなんだっけ、マグロやサーモン、イクラにホタテ、それからなんだ、夢とか希望も乗っていそうな、人によっては「これは亡くなったお母さんに食べさせてあげたかった」とでも言いそうな、そういうものだけで構成されていて、ある人が見たら見たで「これは宝石やないか〜い!」と目をかっぴらいて叫びそうな、そういう海鮮丼。

驚くべきはその海鮮丼の料金で、1日限定10人までなら500円。通常は1000円で提供されているという。

テレビの中の人は店主に向かって「ご主人、これ豊洲なら1万円ですよ」とあんぐりしていたのだが、これを見ていた私と妻もあんぐりとした。


「これで500円は安いな」「うん、これは安い」


ただ、テレビに映るその海鮮丼を見ていると気になる箇所があった。どんぶりに盛り付けられている「イクラ」が弱々しいのである。

浸透圧なのかなんなのかそのへんよくわからないけど、ふにゃけたイクラだったのだ。

これはよろしくない。鮮度に欠ける。

イクラというのは誰が決めたか知らないがプチプチしていなければならない。テレビの中のイクラはふにゃふにゃとしなびていて、あまり美味しくなさそうだ。

ここで思うのは、たまにどこかの知り合いからもらって我が家で食べるイクラは、それはもうプチプチだなぁということで、なんならその食感はプチプチというか「プッチプチ」がふさわしい。プッチモニみたいな弾ける若さ。


テレビを見ながら「やっぱ海鮮は鮮度だよな」と妻に言うと「そりゃ鮮度でしょう」と言う。続けて、

「イクラにしてもマグロにしても、人間が食べるときには死んでるよな」

「そりゃ死んでるよね」

「いいお寿司屋さん行くとさ、大将が『こちらハマチです』って言ったそばから食べたほうがいいって言うじゃん」

「うん、鮮度が落ちるからね」

「海鮮って、死んでてこれだけ美味しいなら、生きてるうちに食べたらもっと美味しいのかね」

「調理の仕方にもよるけど、函館のイカの踊り食いとかはまさにそうよね」

「イカ。イカ以外で生きたまま食べる海鮮のやつらっているかね?」

白魚しらうおとか? マグロとかカレイに生きたままかぶりつく人はいないよね」

「食べづらいもんなぁ」


魚類を生きたまま「最高〜!」と言ってかぶりつく人はいない。でも、イカは割といかれてる。ならあいつらは?

「じゃあタコは?」

「あー、タコの踊り食いはあんまり聞かないね」

「なんでだろうね?」

「あたしに聞かれてもわかんない」

「イカもタコも魚もそうだけど、水中にいる連中って、基本的に感情なさそうだよな」

「クジラとかは別にしてね」

「そうそう、なんかなんにも考えてなさそうな。だから生でいける感じ」


魚介類に失礼だなぁと思いつつ、土曜日ならではのローカルバラエティをまじまじと見つめる私と妻であった。


〈あとがき〉
牛と豚には感情ありそうで、なんだか申し訳ない気持ちになります。旬の概念ってのがあって、その時期にグングン伸びたり大きくなるものを捉えて食べて、そのエネルギーをもらうみたいな考え方って、割と大人になってから気づきますよね。イクラ、そろそろ食べたいなぁ。今日も最後までありがとうございました。

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