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「東京」という曲の名曲率の高さ① 銀杏BOYZ、くるり編/"東京"の持つ郷愁性
日本の首都、東京。
経済活動の中心地、若者にとっての夢追い場。
今日現在、夢の終着(執着)点であった東京にかつての面影はなく、猛スピードで世界を侵食していったコロナ禍によって、精神的成長の果てに「あの頃は若かった」と恥ずかしながらも東京を懐古する、そんな機会すらも奪われてしまったように感じるが、これまでの東京が"情緒のたまり場”であったことは確かだ。
こと音楽においてもそんな東京を舞台とし、それを冠した曲があらゆるバンドから発表されている。
そして、それらのほとんどが高確率で名曲だ。
今日は「東京」という名のついたの数々の名曲をピックアップしてみたい。
・「東京」という曲の名曲率の高さ① 銀杏BOYZ/くるり編←本記事
・「東京」という曲の名曲率の高さ②=きのこ帝国/BUMP OF CHIKEN編
・「東京」という曲の名曲率の高さ③=毛皮のマリーズ/サニーデイサービス編
・銀杏BOYZ「東京」
![キャプチャ1](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70814317/picture_pc_011f227255ef329c2822b5c7883da6ad.png)
2005年リリースの『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』に収録されている、アルバムのラストを飾る約9分の大作ロックバラード。
曲中では恋人と別れた男の哀愁が歌われており、イントロからギターソロに至るまでその感情が見事にサウンド化されている。
長尺の曲であるにも関わらず長さを一切感じさせないのは、ボーカル峯田和伸の表情豊かな歌声があるからに他ならない。
個人的に心に来た歌詞は次の3ヵ所。
君と別れて僕は石ころになって 蹴とばされて転がって疲れた
出会えた喜びはいつも一瞬なのに どうして別れの悲しみは永遠なの
まず引用したのは冒頭の歌詞。
恋愛経験のある人なら、誰しもが経験したことがあるであろう感情が、ストレートな言葉で表現されている。
別れの悲しみが永遠に消えないのはもしかしたら男性特有のものなのかな?
ふたりの思い出が東京の空に吸い込まれて 君はいつも僕の記憶の中で笑っているよ
続いて引用したのはサビで歌われる歌詞。
「東京の空に吸い込まれ」、ここではじめて東京という言葉が登場する。
そこが「東京」であることで、2人の青さが表現されている。
きっとこれは「東京」以外のどこの地名であってもマッチしない。夢追い人が集まる東京だからこそ、2人の若さが強調されるのだ。
Aメロではその情景の奥行を深めるように
僕と別れて君は仕事を辞めて 新幹線に乗って郡山に帰った
と歌われている。
そして個人的に最も心に来るのは次の歌詞
人を愛するということはきっと 君が君以上に僕を愛してくれたこと
別れた直後の男性は誰しもこの境地に達する(…と思っている)。別れで初めてその時の愛のありがたみに気付くのだ。
東京を舞台にした失恋ソング、まだ聞かれたことがない方は是非。
・くるり「東京」
![キャプチャ2](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/70814328/picture_pc_9428fd656b88c0bdc84200cdb5fe5827.png)
1998年リリースの1stシングル曲。
翌年発売の1stアルバム「さよならストレンジャー」にも収録されている。
くるりのメジャーデビュー曲でもある「東京」は、映画「ソラニン」や「モテキ」の劇中歌としても使用されており、上京してきた若者を視点に断片的かつ具体的に語られる歌詞が聞く人それぞれの思い出を刺激する。
サウンドはシンプルなギターロックという感じだが、その素朴さがより歌詞を引き立てているように思う。
東京の街に出て来ました あい変わらずわけの解らない事言ってます
恥ずかしい事ないように見えますか
駅でたまに昔の君が懐かしくなります
引用したのは、冒頭の歌詞。
歌詞は全て、地方から上京してきた若者を主観にして語られている。
第三者目線の俯瞰した歌詞ではないことで、リスナーの感情移入を加速させる。
歌詞全体を通して出てくる「君」が、地元の恋人なのか友人なのか、はたまた家族なのかは最後まで語られないが、それも聞く人それぞれが思い当たる「君」を当て込んで歌詞を聞くことが出来る。
個人的には「君」という言葉に、"上京したての過去の自分自身”を当てはめて聞いてみたりする。
そんな解釈で次の歌詞を聴いてみたい。
雨に降られて彼等は風邪をひきました
あい変わらず僕はなんとか大丈夫です
よく休んだらきっと良くなるでしょう
今夜ちょっと君に電話しようと思った
引用したのは、冒頭の歌詞に続く2回目のAメロ歌詞。
「雨に降られて彼等は風邪をひきました」
言葉通りのストレートな解釈もできるが、個人的には、東京の風に当てられて、荒んでいる状態と解釈してみたい。
「僕はなんとか大丈夫です」という弱弱しい言葉の後に、「今夜ちょっと君に電話しようと思った」と続く。
昔の自分自身との対話を試みる、そんな風に理解すると次に引用する後半ラスサビにかけて歌われる歌詞がよりぐっと来た。
君がいるかな 君とうまく話せるかな
まぁいいか でもすごくつらくなるんだろうな
君が素敵だった事 ちょっと思い出してみようかな
希望にあふれていた昔の自分自身と、うまくいっていない今の自分、理想と乖離する現実のなかでそれでもここにいることを肯定したい、そんな風な解釈をしてみた。
地方出身者はもちろん、東京で生きる人それぞれに寄り添うようなそんな名曲を是非聴いてみてください。
長くなったので続きは次回。
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