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「東京」という曲の名曲率の高さ② きのこ帝国、BUMP OF CHIKEN編/既存の"東京″に対するカウンター
前回に続き、「東京」と名の付いた名曲をご紹介。
第2弾はきのこ帝国の「東京」とBUMP OF CHIKEN「東京賛歌」をピックアップ。
ともに、「東京」に対するある種のカウンターソング的側面を持つ曲となっている。
「東京」という曲の名曲率の高さ① 銀杏BOYZ/くるり編
「東京」という曲の名曲率の高さ②=きのこ帝国/BUMP OF CHIKEN編←本記事
「東京」という曲の名曲率の高さ③=毛皮のマリーズ/サニーデイサービス編
きのこ帝国「東京」
きのこ帝国は、2007年結成、2015年にメジャーデビューを果たした4人組ロックバンド。
フロントマンを務める佐藤千亜妃の繊細な歌声と本格ロックサウンドが特徴だ。
バンド名の由来は、3ピースロックバンド「ゆらゆら帝国」から。
ベース脱退を受け2019年から活動休止中だが、3年以上が経過した今なお復活を望む声が止まないバンドだ。
そんなきのこ帝国の「東京」は、2014年9月にタワレコ、HMV、ディスクユニオンにて5,000枚限定で発売された1stシングルの収録曲。
詩の内容をざっくりとまとめるなら「部屋の中で『あなた』の帰りを待つ私」。
寂しさを漂わせながらもただそこにいる自分自身を肯定する歌となっている。
前回の記事で紹介したくるりの「東京」、銀杏BOYZの「東京」の歌詞が上京者という立ち位置から心情をノスタルジックに歌っているのに対し、きのこ帝国の「東京」からはそんな郷愁性が一切感じられない。
ただ自分自身の過ごす「東京」をフラットな視点で語る姿勢は、既存の哀愁漂う「東京」ソングに対する一種の"カウンター”のようになっていると感じる。
日々あなたの帰りを待つ ただそれだけでいいと思えた
赤から青に変わる頃にあなたに出逢えた
この街の名は、東京
引用したのは冒頭の歌詞。
サビはじまりの曲だが、シンプルなリズムギターとドラムがボーカルのメロディを引き立たてる。
なにかを悟っているかのような穏やかな感情を表現したサウンドから一転、
「この街の名は」からのフルバンドインは聞きごたえ抜群。
16ビートに切り替わったリズムが迫り、「東京」と叫ぶ佐藤千亜妃氏の歌声が心に響く。
この瞬間、きのこ帝国のファンになったという人も少なくないはずだ。
「日々あなたの帰りを待つ ただそれだけでいいと思えた」
一見ただの強がりにもみえるその言葉が、どんな不安も寂しさも肯定する。
未視聴の方は、都会的でもなく田舎的でもないきのこ帝国ならではの視点で切り取られた「東京」を是非聞いてほしい。
BUMP OF CHIKEN「東京賛歌」
2007年発売のシングル「花の名」のカップリング曲として収録されている「東京賛歌」。
歌詞の概要としては、世間一般的に「冷たい」「空が狭い」などと言われがちな「東京」を擁護するような内容になっており、「東京」という空間に寄り添った独自の切り口となっている。
フロントマンの藤原基央が楽曲音源では初めてブルースハープを演奏していることも特徴の1つ。
この曲も、ある種のカウンターソングといえるだろう。
きのこ帝国がこれまでの「東京」という曲のカウンターであったのに対し、BUMP OF CHIKENの「東京賛歌」は世間の持つ東京のイメージに対するカウンター。
まるで子供に語りかける童謡、NHKの「みんなのうた」で流れていても不思議ではない優しい歌声とサウンドで、荒んだ大人たちを諭すような印象を持った曲だなと感じる。
嘘が多いとか 冷たいとか
星が見えないとか 苦情の嵐
上手くはいかない事の腹いせだろう
ここはいくつも受け止めてきた
嘘が多いのはどこでもだろう
星が見えたってどうせ飽きるだろう
上記の歌詞がまさにその例。
フロントマンである藤原基央を視点にして、「東京」に対する否定的な言葉を訂正するような内容が特徴的だ。
そして、やはりサビの歌詞は一番心に残る。
勝手に選ばれて 勝手に嫌われた
この街だけが持ってるよ
帰れない君の いる場所を
帰る場所がある人にとって「東京」は遠征先である一方、帰る場所がない人にとっての「東京」はその人が人生をともにする土地でもある。
そして曲の最後はこう締められている。
この街だけが知っているよ
育った街への帰り方を
「ここはいくつも受け止めてきた」、そんな東京だからこそ知る帰り方はきっと、その人が挑戦を終えたときに初めて気づけるものなのだろう。
次回は毛皮のマリーズ「弦楽四重奏曲第9番ホ長調『東京』」とサニーデイサービス「東京」を紹介します。
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