「東京」という曲の名曲率の高さ③ 毛皮のマリーズ、サニーデイサービス編/東京をテーマとしたコンセプトアルバムの名盤
本日は、「『東京』という曲の名曲率の高さ」の最終章。
毛皮のマリーズ「弦楽四重奏曲第9番ホ長調『東京』」とサニーデイサービス「東京」についてご紹介。
ともにアルバム単位での名曲として聴きごたえタップリの作品だ。
「東京」という曲の名曲率の高さ① 銀杏BOYZ/くるり編
「東京」という曲の名曲率の高さ②=きのこ帝国/BUMP OF CHIKEN編
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毛皮のマリーズ「弦楽四重奏曲第9番ホ長調『東京』」
毛皮のマリーズは、2003年に結成し2011年に解散した4人組ロックバンド。
現在ドレスコーズとして活動するフロントマンの志摩遼平の感性を体現したバンドとして、解散した今なお根強いファンを持つ。
グラム、オルタナ、パンク、ブルースなどをルーツとする毛皮のマリーズのサウンドは、全ての音楽好きを納得させるのに十分な説得力を持ち、ある種"内向的”とも言えるパフォーマンスも相まって、「カルト的」との形容がよく似合う。
洋楽・邦楽問わず、音楽に対する造詣の深い志摩遼平のアイディアと遊び心をすべての曲から感じることが出来るだろう。
本日紹介する「弦楽四重奏曲第9番ホ長調『東京』」(以下、「東京」)は、東京をテーマとしたコンセプトアルバム『ティン・パン・アレイ』の収録曲。
2011年1月にリリースされた同アルバムは、バンドとして初のオリコントップ10入りを果たし、数々のミュージシャン、音楽ファンが名盤として取り上げている。
隠しトラックを除き、アルバムの最後を飾る「東京」は、『ティン・パン・アレイ』の1曲目「序曲(冬の朝)」のメロディラインを踏襲し、アルバム全体を通じた起承転結の"結”を見事に演出している。
おやすみ 街の灯よ
ねむれ 母のない子のように
ネオンも街路樹も 夢見る恋人も
星のカーテンコールに しばしの別れ
すぐにまた会おう
「東京」の歌詞は、アルバムのエンディングらしい夜(終わり)をイメージさせる言葉を紡ぎ、穏やかかつ愛情に溢れる情景表現が印象的だ。
少女は恋をする
少年は少女のヒーロー
遠く離れたまま二人は夢を見る
そのあどけない頬をバラ色にそめ
同じ夢を見る
子どもの両想いをこんなにも素敵に表現する志摩遼平のピュアさに脱帽する。
そして歌詞は続き、
そして 愛の日々よ それぞれの日々よ
銀色の夢に沈む夜 きみは僕だけのビューティー
眠れ 愛の日々よ 君と僕の日々よ
黄金の月に照らされて おやすみぼくの東京
「きみは僕だけのビューティー」こんなパンチラインを生み出せる感性が飽きれるほどに羨ましい(笑)
この歌詞は、私の生涯を通して残る言葉の中の1つだ。
誰よりもステキさ おはよう、美しい人
言葉にするだけで 涙がこぼれそう
「言葉にするだけで 涙がこぼれそう」、私はこの歌詞を書き込みながら涙がこぼれそうでした。。(笑)
そして曲のラスト、志摩遼平は東京をこう定義する。
愛しきかたちないもの 僕らはそれを
ーー"東京”と、呼ぼう
未視聴の方は是非、東京にこれほどの愛を表現した数少ない毛皮のマリーズの名曲を、アルバムを通じて聴いてみてはいかがでしょうか。
サニーデイサービス「東京」
サニーデイサービスは1992年結成、2000年に解散、その後2008年に再結成が果たされた老舗ロックバンドだ。
初期の楽曲は、日本語フォークロックの開拓者でもあるはっぴいえんどを彷彿とさせるサウンドが特徴的。
そんなサニーデイサービスの「東京」は、1996年にリリースされたバンド通算2枚目となるスタジオアルバム『東京』の1曲目の収録曲で、70年代の洋楽風日本語ロック=はっぴいえんどの系譜がはっきりと感じ取れることだろう。
これまで第3回までを通じてみてきた各バンドの「東京」とは異なり、90年代の空気を纏った楽曲となっており、過度な表現のないありのままの風景や感情、平和な日常がさわやかに歌われている。
曲時間も2分ほどと、『東京』というアルバムのイントロの役割を果たす。
赤い血潮が色あせる前に その熱い血潮の枯れぬまに
きみは駆け出すんだね 今日は春の中へ
瞳の中に花が咲いて
おんぼろ列車に乗って田舎道 銀の帆張った船は海の上
ぼくも駆け出そうか 今日は街の中へ
瞳の中で風が吹いて
引用したのは「東京」の全歌詞。
近年にみるような感情を複雑な言葉や独自の切り口で表現する歌とは異なり、サニーデイサービスの「東京」はサウンドも相まって、自然のなかにポツんとおかれたような、時代の風を感じるような、懐かしい空気感を体感できる曲だ。
未視聴の方は是非、こちらもアルバムを通じてチェックしてみてはいかがでしょうか。