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奇縁堂だより 号外【本の紹介:東日本大震災を知る】

大津波と原発事故を引き起こし,岩手県・宮城県・福島県を中心に大きな被害をもたらした東日本大震災から12年が経ちます。

今回の「奇縁堂だより」では,東日本大震災のときに,地元新聞社がどのような対応を取ったかがわかるノンフィクション作品

○『6枚の壁新聞 : 石巻日日新聞・東日本大震災後7日間の記録』 石巻日日新聞社 編

○『河北新報のいちばん長い日 : 震災下の地元紙』 河北新報社

の2冊を紹介したいと思います。

情報が簡単に手に入る時代だからこそ,情報が手に入らなくなったときの被災者の不安感は相当のものだったでしょう。
その不安感を解消するための,記者たちの奮闘が描かれた作品です。

『6枚の壁新聞』は,石巻市の地域紙である石巻日日新聞社の記者の凄絶な7日間の記録です。
 東日本大震災後の混乱と絶望の中で,石巻日日新聞は被災者が待っている情報を〝少しでも早く,少しでも多く〟提供しようと,壁新聞で伝えました。
 被災者にとって情報がいかに重要なものなのかが,壁新聞を見た人達の反応でよくわかります。


『河北新報のいちばん長い日』は,仙台市に本社を置く河北新報社の記録です。河北新報は,地震の影響によりコンピューターが使用できなくなるなど,新聞制作・発行が困難な状況になりました。
 そのような状況下で,そして自らも被災者でありながらも「決して休刊はしない」との決意のもと,報道の使命を担い闘いつづけた凄絶な記録です。
 本書は,「新聞協会賞」と「菊池寛賞」を受賞しています。


2冊に共通していることは,新聞を作り続けた両社の記者たちは自分たちも被災者であることです。

家族の,親戚の,仲間の行方がわからないという状況でも,「情報を伝える」ということを決心し,それを実行する記者の姿勢には,心打たれるものがあります。

一方で,新聞を発行することを決意したものの,この災害の中で取材して良いのか,他にやることがあるのではないのかと,葛藤する記者の気持ちも読み取ることができます。

試行錯誤しながらも取材し,情報を集め,新聞を作る,二つの新聞社の姿勢に,新聞の存在意義を見出すことができる2冊だと思いました。

2011年3月11日から数日間,「情報を伝える」という強い決意とそれに対する葛藤もありながらも,決して伝えることを止めなかった,被災した記者たちがいたことを知ることができる作品です。

あのとき被災地で何があったのか。
そして限られる紙面の中で,何を伝え,何を伝えられなかったのか。

「石巻日日新聞」という地域紙だから伝えられた情報とその方法。
「河北新報」という地方紙だから伝えられたことと出来たこと。

災害報道を考えるきっかけにもなる本だと思います。

そして,東日本大震災だけでなく阪神淡路大震災など,日本で生活する上で大きな地震は避けられない災害です。被害を少しでも小さくするためにも,過去の出来事を知ることは必要です。

東日本大震災を知るという意味でも,重要な2冊だと思います。


今回は上手く本の紹介ができたか不安ですが,ここまでお読みいただきありがとうございました。

書肆奇縁堂のURLはhttps://shoshi-kiendo.stores.jpです。 
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また書名のところには,商品ページにアクセスできるようにリンクを埋め込んであります。

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