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売上ごとに発生した費用を分けるには ~ 超初級 誰にでもわかる管理会計~

第7話 売上ごとに発生した費用を分けるには

本日の登場人物

先生
第1章では、会社全体の費用を各部署に分けました。つまり各部署の利益が算出できるようになりました。
第2章では、もっと細分化して、売上ごとに発生した費用を算出します。売上を、ここでは案件と呼ばせてもらいます。案件という言葉がしっくりこない場合には、受注、契約、プロジェクトなどに読み替えても構いません。いずれにしても、売上高が分かる最小の単位で利益を算出します

新人経理
もし、案件ごとの費用が算出できれば、どの案件が儲かったか損したか分かりますね。

案件ごとの費用を算出できれば、案件ごとの利益も算出できる。

先生
はい。そうです。
損している案件が分かれば効率的に原因分析ができます。特に、単発の損失、もしくは今後も繰り返す損失かによって対応が大きく変わります。単発の損失の場合には再発しないように対応策を検討しますし、繰り返す場合にはできるだけ早く繰り返さない状態にする必要があります。契約金額に対して費用が高い状態ですので、非効率な業務・費用に見合った契約をできていないなどが考えられます。
また、案件ごとの利益を算出できば、顧客別の利益も算出できる事になります。 たとえの利益がマイナスの案件があっても、その顧客からの利益がプラスであれば問題ないと判断する事もあります。

案件ごとの利益を算出できば、顧客別の利益も算出できる。

新人経理
単純にマイナスだけで判断しちゃダメなんですね。

先生
そうです。
複数の注文をしてくれる顧客の場合、こちらにとって魅力的な案件だけを契約するのは、お客様にとってはメリットになりません。
断られた案件は他の業者に頼まなければなりませんし、手間が増えてしまいます。もちろん、厳しい要求であれば交渉の余地はあります。
これは、顧客との関係性にもよりますね。古いかもしれませんが、「この前は割の悪い仕事をお願いしちゃったから、今回は色付けて値付けして良いよ。」と言って下さる方もいらっしゃいます。そういった人情味ある顧客であれば、総合的に判断した方が良いでしょう。

受注と費用と売上の発生タイミング

先生
補足になりますが、ビジネスモデルによって売上と利益の発生タイミングが異なります。
まず、クリーニング事業の特徴を確認してみましょう。クリーニング事業は、基本的に受注を受けてから業務します。当たり前ですが、依頼を受けていない人様の服を勝手にクリーニングしたら大変な事になります。
確か、案件ごとにサービス内容が異なりますよね。

新人経理
はい。ウチの会社はお客さまのご要望に合わせて細かく対応をしています。
ホテル業のお客様だと、洗濯だけに加えて、ピシっとアイロンかけとボタンの解れチェックもします。
土建業のお客様だと合、どうせ汚れるからって基本コースです。でも、洗う前に機械オイルが付いてないかチェックして、酷い場合には別にして洗います。

先生
受注と費用と売上が発生するタイミングを時系列にしてみます。

受注と費用と売上が発生するタイミング(クリーニング事業)

先生
比較用に製造業も時系列にしてみました。
製造業は基本的に受注前に商品を作ります。その後、卸売業者や小売業者への販売で売上が確定します。このようなビジネスモデルでは、どの顧客に販売しても商品一つあたりの費用は一緒です。

受注と費用と売上が発生するタイミング(製造業)

新人経理
図で見ると、全然違いますね。
オーダーメードはクリーニングと同じビジネスモデルでしょうか?

先生
オーダーメードは、言葉の通り注文を受けてから製作しているように思いがちですが、最終工程だけオーダーメードにしているケースが多いです。
板前さんが開店前に「仕込み」をしているように、オーダーメードも途中まで仕込みます(製造業の場合、半製品と言います)。
そして、受注を受けてから最終工程を実施します。

受注と費用と売上が発生するタイミング(製造業:オーダーメード)

先生
さらに、ドラッグストアのような消費者向けの仕入れ販売のビジネスモデルはさらに違ってきます。
話が逸れてしまうので、機会があったらお話しましょう。


直接費と間接費

先生
売上ごとに発生した費用を算出しようとしたときに、いくら使ったか明確に分からない費用があります。

新人経理
前の章で学習した「どの部署がいくら負担するのか明確に決められない費用」の事でしょうか。

先生
はい。考え方は一緒です。
会社全体で発生した費用を、各部署に分けました。
「どの部署がいくら負担するのか明確に決められない費用」は配賦ルールを作って機械的に割り振る事を学習しました。同様に、部署で発生した費用を案件ごとに分けます。

新人経理
もしかして、案件にも「いくら負担するのか明確に決められない費用」が発生しますか?

先生
はい。会社全体の費用を部署に分けるよりも多くの費用で分けられない事が分かります。
負担額が明確に分かるを「直接費」と言い、分からない費用を「間接費」と言います。例えば機械のメンテナンス費用です。これは、機械を利用した案件で費用を按分します。
また、案件には関係ないものの、会社全体維持のために必要な費用を「販管費」と言います。こちらも、各案件で費用を按分します。

直接費か直接費以外か判別する

新人経理
直接費と間接費の違いって、決まりはありますか?

先生
「〇〇の費用だったら直接費で、××の費用だったら間接費」といった明確なルールはありません。負担額が明確に分かるか分からないかで決めます。会社の業務によって異なるので、揃えている機材によっても異なります。

先生
先ほどの例で、「クリーニング部の社員の給料」を直接費にしました。その理由は、こちらの会社ではどの案件で誰が何時間かけて作業したか分かるのからです。確かそのような運用にしていましたよね。

新人経理
はい。ウチの会社は担当になった人が洗浄からアイロンと包装までの全工程をやるんです。社長のこだわりで、「私が担当しました」って顔写真入りの包装に入れて返却するんです。なのでシフト表を見れば、どの案件で誰が何時間かけて作業したか分かります。

先生
誰が何時間かけて作業したか分からないければ間接費として計上することになります。
今度は「工場で使った電気・水」です。これは間接費にしました。もし最新鋭の設備を備えていて何wの電力と何ℓの水を消費したか分かるなら、直接費として計上できます。

新人経理
なるほど。ウチの設備は古いタイプで、1回の消費電力や水量も分からないから電気・水は間接費なんですね。

先生
はい。そうです。
もし、稼働時の電力と待機電力が分かるならば、稼働時の電力使用量を直接原価として扱うこともできます。

新人経理
取り扱い説明書...あったけなぁ。あ!メーカーのメンテナンス担当の方に聞いてみます!

先生
それが良いですね。
もし分けられる場合、このようになります。

案件で使用した電力と水を直接原価として扱う


-- 目次 --

第1章 部署ごとに業績を把握しよう

第2話 部署ごとに業績を把握しよう はじめに
第3話 年間の費用を分解しよう
 ・実務簿記1 仕入勘定ってあんまり使わない
 ・実務簿記2 保守契約の負担額を月々で分けよう
 ・実務簿記3 実務的な原価償却
第4話 オフィスの賃貸料を各部署で負担しよう(前編)
第5話 オフィスの賃貸料を各部署で負担しよう(後編)
第6話 《まとめ》部署ごとに業績を把握しよう

第2章 案件ごとに業績を把握しよう

第7話 売上ごとに発生した費用を分けるには


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