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オフィスの賃貸料を各部署で負担しよう(前編) ~ 超初級 誰にでもわかる管理会計 ~

第4話 

本日の登場人物

先生
今日は、会社の運営のための費用を各部署に負担してもらう方法を勉強します。
会社の運営のための費用とは、例えばオフィスの賃貸料や本社勤務社員の給料などです。これらは直接売上に貢献していませんが、会社の運営に必要な費用である事には変わりありません。
どの部署がどのくらい利用しているをある程度把握できるものの、正確に算出できるわけではありません。
そのため、できるだけ考慮をしつつも、最終的にはルールに従って機械的に割り振るのが一般的です。
費用の負担先と金額が確定させることを配賦といいます。

新人経理
直接配賦法とか相互配賦法ってやつですよね?
簿記2級にも出題されるって聞いたので予習してきました。

先生
そうです。勉強熱心ですね。
今日は、直接配賦法を説明します。

新人経理
はい。お願いします。

直接部門と間接部門

先生 
配賦方法を学習する前に、まず直接部門と間接部門を説明する必要があります。会社の部門を大きく2つに分けると直接部門と間接部門に分けられます。
直接部門とは業務が会社の売上に直接結び付く部署を指します。こちらの会社ではクリーニング事業部、清掃事業部の事です。営業部門がある会社では営業部も直接部門に含まれます。
間接部門とは直接部門を支援する部署を指します。こちらの会社では、人事総務部と、経理部の事です。
管理会計では、会社の運営のために発生した費用を最終的にどこかの直接部門に配賦します。

直接部門と間接部門

新人経理
つまり、うちの会社だとクリーニング事業部と清掃事業が負担するって事ですね。

会社の運営のための費用は、最終的に直接部門が負担する。

先生
そうです。

直接配賦法

先生
直接配賦法とは、間接部門の費用をいきなり直接部門に割り当てる方法です。直接配賦法は誰でも思いつく方法なので暗記しようと思わず論理的に解釈しましょう。
例えば、オフィスの賃料を直接部門へ配賦する場合、社員数で割って一人あたりのオフィスの賃料を計算したり、もしくは、部署が利用するオフィスの面積の比率から負担する費用を算出します。

新人経理
ルールは一つじゃないんですね。

先生
そうです。
前者は、社員全員がオフィス勤務で一人ひとりに座席がある場合に適しています。
後者は、オフィスのフロアをたくさん使う部署があったり、他社へ出向などが理由で一人ひとりに座席がない場合に適してます。


(例)社員数から算出
(例)専有面積から算出

先生
どの配賦方法を適用すべきといったルールはありませんので、考え方を理解した上で、ご自身の会社に適した配賦基準を作ます。

新人経理
なるほど、直接配賦法は分かりやすいです。


その他の配賦方法が役に立たない理由

新人経理
次は、相互配賦法の説明でしょうか?

先生
いいえ、相互配賦法や階梯式配賦法など有名な配賦方法は説明しません
理由として、残念な事に覚えても役に立たないからです。

新人経理
役に立たない!? 教科書や簿記の試験にもあるのにですか?

先生
試験に採用されている理由も、計算式が明確で採点し易いからだと個人的に思ってます。相互配賦法や階梯式配賦法を採用するとなんとなく正しく配賦している感は味わえます。実際、これらの配賦方法を実装したソフトはあるので利用している会社もあるでしょう。
ただ、それが誰もが納得のいく配賦ルールとは全く別の話になります。

新人経理
誰もが納得のいく配賦ルールですか?

先生
例えば、オフィス賃貸料の負担額の額に不満を持った部長が質問してきたとして、「〇×△配賦法を採用して算出しました」と回答して納得されるでしょうか。〇×△配賦法について説明したところで、きっと「よく分からないけど、ウチの部が不利になるルールは間違っている」と言い返されてしまうでしょう。責任を負っている方は誰もが、会社の期待に応えるべく自身の担当の業績を少しでも良くしようと必死です。自身に不利になるような中途半端な社内ルールに対して、厳しく問い正したり調整の可能性を探る人もいるのではないでしょうか。

新人経理
でも、私が決めるわけではないですし、配賦ルールだって経営陣が決めますよね?

先生
仰る事は分かります。
ただ、経営陣は暇ではなく、他にもっと重要な検討事項を抱えている場合もあります。つまり、検討した時には理解していてもずっと記憶している事はなく、詳細は”経理の〇〇さんが担当"といった記憶の仕方をします

経営陣が、配賦の細かい計算式まで覚えている補償はない。

新人経理
なるほど...。必死な部長さんから物凄い剣幕で質問責めにされる想像をしてしまいました。

先生
ですから、誰もが納得のいく配賦ルールが必要になります。

問題:配賦ルールの具体的な事例

先生
それでは具体的な事例をあげるので、ご自身で配賦ルールを考えてみてください。

  • 直接部門は、営業部とコンサルティング部の2つある。

  • 営業部は社員が2名、コンサルティング部は社員が70名在籍している。

  • オフィスの賃貸料を直接配賦法を使って社員数で算出しようとしたところ、コンサルティング部から物言いが来た。彼らの主張は以下3点。

  • 主張①
    オフィスの賃貸料のうち、コンサルティング部エリアの負担は納得がいくが、会議室の負担割合に納得がいかない。

  • 主張②
    会議室は営業部が多く利用している。しかもイベントで一定期間貸し切りの時もある。利用できないのに費用は負担しているのは納得がいかない。

  • 主張③
    その期間は我々は習慣的に外部の会議室をレンタルして利用していた。その費用も会社で負担して欲しい。

  • 経営層もコンサルティング部の主張に一定の理解をした。

  • 一方で、経営層は会議室を誰でも自由に使えるようにしたいと考えている。単純に利用時間で費用換算すると、会議室の利用抑制になってしまわないかと懸念していた。

新人経理
かなり具体的ですね。しかも、実際に会社で発生しそうな問題です。

先生
ここが管理会計の面白いところです。
次回までの宿題にしましょう。


-- 目次 --

第1章 部署ごとに業績を把握しよう

第2話 部署ごとに業績を把握しよう はじめに
第3話 年間の費用を分解しよう
・実務簿記1 仕入勘定ってあんまり使わない
・実務簿記2 保守契約の負担額を月々で分けよう
・実務簿記3 実務的な原価償却
第4話 オフィスの賃貸料を各部署で負担しよう(前編)
第5話 オフィスの賃貸料を各部署で負担しよう(後編)
第6話 《まとめ》部署ごとに業績を把握しよう

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