子どもが出てくる映画の話をしよう。⑰韓国発ゾンビ×ジュブナイル『今、私たちの学校は……』
世の中には、「ゾンビものがすき！」という方々がいる。別にゾンビ好きじゃなくても、映画を観ていれば「たまたま」でも一度ならずゾンビものに出会うはず。
それよりも、映画をつくるという設定の映画では、かなりの確率でつくっている映画はゾンビものではないかと思う。『スーパー８』しかり『カメラをとめるな！』や『キツツキと雨』もそうだったような。
おそらく、低予算でできるとか（ほんとうか？）理由はあるんだろうけれど、たぶんやっぱり、そういう映画がすきなひとがつくるからなんじゃないかと思う。
くりかえしていえば、我はべつにゾンビ映画好きじゃない。たいして観てもいないのに、「ゾンビ」と聞くと、またか…などと思ったりする心の狭い人間ですらある。
そんななか、ラジオで話題になっていたのが、これ。
どん。
韓国ドラマ『今、私たちの学校は…』。
流行ってるよね。ラジオでも、一度見ると止まらないと、ナビゲーターだかがいっていた。
ほんまかいな。疑心暗鬼の我。ゾンビ×学校もの。あざとさも透けてみえる。でもまあ、学校ものということは、我の好むジュブナイル。というわけで観てみた。すると……。
す、すごっ！！！ おもしろっ！！！！
いやややや、さすが韓国ドラマだ。一味も二味も違う。しかもこの見事なエンターテイメントぶり。
とまあいきなりこうだから、大人は信用できない。
あらすじは、もうお察しの通りというか・・
とある学校でゾンビが生まれ、次々増殖していく。残された学生たちは生き残りをかけて戦う。
簡単に書きすぎたかな。
ああ、例のパニックものか、と思うなかれ。これがもっと複雑で広く深いのだよ。でなければ１時間×１２回分のドラマになるわけがない。
このドラマのすごいところは、「ゾンビもの」×「学園もの」×「社会派もの」×「恋愛もの」の要素がぜんぶ詰め込まれていること。しかも、それぞれにぬかりがない。
まず、なぜゾンビが生まれたか、という設定がいい。
（注：ここからはネタバレあります）
ゾンビはウィルスからはじまった。いじめにあう息子をもつ理科教師が「弱者が強者に立ち向かう」ため、最強のゾンビ・ウィルスを見つける。そのウイルスに学生のひとりが感染してしまい……。
つまりこの映画のゾンビは人為的につくられたもの。しかも発端は『息子のいじめ』。繰り返し出てくる父親は狂気や悪意よりも、絶望感が漂っている。
さて、学園ものとして見てみよう。
学校が舞台なので、教室、保健室、図書室、学食、階段などなど日本の学校でもおなじみの場所が次々に出てくる。授業前にスマホを集めるというのもあるだろうし、やっと見つけたスマホで、学生が「ゾンビが出ました！」と警察に訴えても取り合ってもらえないのも、ありそうな話。
このリアルさがうまいんだな。だから生徒たちは孤立していく。
友情、恋愛、家族、部活、進路。
生徒たちがかかえている悩みはゾンビ映画だろうと変わらない。そうした人物像や人間関係の変化も、しっかり映像はすくいとっていく。
ゾンビをさけて校舎の壁をはいながら、「お前、あの子がすきなのか」なんて話をしたり。それどころじゃないだろ、と思いつつ、そして実際に口にしていたが、我も聞いた同級生もにまにまと耳をそばだてる。
しかーし、こんな彼らにとって何が一番の悲劇かって、友が目の前でゾンビ化してしまうこと。疑ってしまうこと。挙句の果てに自分がなってしまうこと！
ああ、これはきつい。
そこんとこも容赦なくドラマは攻めまくる。
社会派ドラマとして見てみよう。
発端となったいじめは、ゾンビ化のなか負の連鎖をまきおこす。
そして、大人社会も浮き彫りにしていく。
ゾンビは国あげての一大事に発展する。国は感染拡大をおそれて市民を隔離し、町を閉鎖して徹底的なゾンビ撲滅をはかる。
感染？ 隔離？ な、なんだこれは。まるで……。
そう。現代のコロナ状況とリンクしている。実際映画の中でも言及されているから十分意識されているんだろう。
人道的に考えてあえて悪いことをしたと告白し、かえって評判をあげようとする議員や、真実を知らせるためと大義名分かかげて町に侵入しちゃいました的なユーチューバーを揶揄したり、こうゆう人物配置も本当に見事なり。
かくして、救いの手もなく、絶望する生徒たち。
でも、
火を囲み語らう仲間や恋人がいる。
誰かのために奔走する大人たちもいた。
禰豆子（！）的な立ち位置の委員長の苦悩。
少年の最後の叫び。
くぅーっ。このジュブナイル感がたまらない。
もっといえば、ときおり出てくるユーモアにも ニヤリとさせられた。
最後のそっけなさも、きらいじゃない。
もしかしてパート２あるかも？
学校は、人生のある時期のみ通り過ぎる場所。教室から保健室に放送室に理科室、音楽室、体育館……すべて見せます！のゾンビ映画でした。というわけで、階段の踊り場を描いたタイトル画像を「みんなのギャラリー」からお借りしました。Thanks！
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