(S)LD(学習障害)の基礎・対応

今回はLDについてまとめていきたいと思います✏️
(個人的には障害ではなく、障がいと表記したいのですが、こちらでは学術上の理由で障害と表記しています。)

SLD(限局性学習症)についてご存知ですか?

ハリウッド俳優のトムクルーズさんも字が読めないという読字障害であることを聞いたことがある方もいるかもしれません。

限局性学習障害とは

判断と診断に2つの基準があります。

文科省の判断基準(1999年)
1.学力に個人内差がある(その子の持っている能力の差をみる)
 WISC-Ⅳでは言語理解、知覚推理、ワーキングメモリ、処理速度
 K-ABC-Ⅱでは継次尺度、同時尺度、計画尺度、学習尺度
2.中枢神経に機能障害がある
3.他の要因で説明できない
読む、書く、話す、聞く、計算、推論の困難が1つ以上存在し、6ヶ月持続している

医学の診断(DSMー5)
1.読字障害(ディスレクシア)
 音韻の困難(文字と音が一致しない)+視覚機能の困難がある(SLDではない)
 ⇨音韻:文字を見て頭の中で音声に変える力が弱い、デコーディングの困難
2.書字障害(ディスグラフィア)
 音・イメージから文字が浮かばない(想起の困難)、順序性の困難(記憶力・計画性の困難)、字を書けない(手先の困難、発達性協調運動症)
 ⇨読めるけど書くことに困難がある
  考えた言葉(音声)を文字にする力が弱い、エンコーディングの困難
3.算数障害(ディスカリキュア)
 数概念の困難(数とイメージが一致しない)、ワーキングメモリの不足(暗算できない)、量感の未形成(空間認知能力の困難)
 ⇨・数の概念 数の三項関係(数詞:聴覚的・言語的シンボル、数字:視覚的・言語的シンボル、具体物:分離量・連続量)
 ・序数性:継次処理能力を元に発達。一般的に数詞を覚えた後に序数性を獲得する(何番目?何個目?など)
 ・基数性:同時処理能力を元に発達。量の感覚(だいたいこのくらい)

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知的障害とSLDの違い

全般的な知的障害のお子さんの場合は、個人内差があまりなく(例えば視覚処理能力・同時処理能力ともに6歳、聴覚処理・継次処理能力ともに6歳など)発達年齢に合わせて勉強を教えていくことが有効とされます。

SLDお子さんの場合は、個人内差があるため、(例えば視覚処理能力・同時処理能力は6歳相当、聴覚処理能力・継次処理能力が10歳相当など)能力に凹凸があるため、得意な能力を活かして勉強した方が学習が有利に進むとされます。

学習支援の2つの意義

学習の遅れのカバー
自己肯定感の回復や、将来の可能性を広げることにつながります。

二次障害の予防
叱られるなどの経験をすることで起こる反抗挑戦症、素行症などにつながることを予防できます。

LDの有無に関わらず、困っている人には支援を入れていくことが上記の意義からも必要になってきます。

どのようにアプローチ(学習支援)をするか

学業技能:視写、聴写、音読、暗唱、スピーチ、読書、計算
身体能力:手のひらトレーニング、体幹トレーニング、ビジョントレーニング
認知能力:ワーキングメモリトレーニング、記憶力トレーニング

その人の持っている力で得意な勉強方法を探していくことが大切です。

LDの認知負荷課題に、脳が使えるエネルギーは一定であり、LDを抱える人は情報処理に力をたくさん使います。そのため、認知負荷をいかに減らしながら教えていくかが重要になると言われています。

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例えば、音韻の課題がある場合
音→文字が得意であれば読み聞かせやオーディオブック(本を同時にみる)の活用
文字→音が得意であれば音読や歌で覚えるなど

読み書き障害がある場合
リーディングスラッガーやカラーバールーペの活用

書字障害の場合
視写 書き言葉の型を入れる
マインドマップや作文 記憶の想起の力を伸ばす
タイピングやフリック入力 IT機器の活用で「書く」のハードルを下げる(合理的配慮として申請すれば受験でも使用できるようになってきています。)


宇野彰・千葉リョウコ(2017)『うちの子は字が書けない』ポプラ社 宇野彰・千葉リョウコ(2020)『「うちの子は字が書けないかも」と思ったら』ポ プラ社
熊谷恵子(2018)『算数障害の理解と指導法』学研教育みらい 藤田和弘(2019)『「継次処理」と「同時処理」学び方の2タイプ』図書文化社
T.P アロウェイ(2009)『ワーキングメモリと学習指導』北大路書房 T.P アロウェイ(2011)『ワーキングメモリと発達障害』北大路書房 湯澤正通(2014)『ワーキングメモリと教育』北大路書房
日本精神神経学会(2014)『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引き』医学書院 榊原洋一(2020)『子どもの発達障害 誤診の危機』ポプラ新書
一般社団法人こども発達支援研究会

学習方法の工夫により、LDのお子さんでも得意を活かして学習を進めていくことができます。
周囲の方々と相談しながら、お子さんにとってやりやすい方法を見つけていけるといいですね🌱



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