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さて、明日から三連休なわけ

 なんだけど、特に予定ないよって人、いる?あぁ、それに引け目を感じることなんか全然なくてさ、むしろ解放感を覚えるくらいの心持ちでいた方がいいよね。最近はなにか言うとさ、ほら……人間関係が面倒くさい、みたいなね。もはや何かとかかわることが面倒くさい。口を開くのですら面倒くさい。そうすると、目とかも閉じたまま休日を過ごすか! そこまでいくと問題もあるだろうけど、何事もとことんやる人はさらに先を目指そうとするんだよな。目を閉じたあとはどうする? 
 掌でも閉じてみる?
 そりゃあんた、赤ん坊のまんまの姿になってしまうよ。ギュッと手を握ってな、目を固くつむって、口を横に結べば、ほらどうだい。
 ──と、自分にツッコミを入れたところで、去年の冬に亡くなった友人の話をしておこう。話の展開が分からないとか、そんな話聞きたくないとか。そう、でも僕には話す権利があると思うんだ。そして、君にも聞く義務が……。

 別段、なにも気にする必要のない三連休だ。ただの連休。罪悪感も、希望も、人によっては必要もない期間なのかもしれない。
 或いは、誰かがどうしても得たかった期間なのかも。こればっかりは、本人しか分からぬ。時間の使い方は、誰かが言ったとおり無限大にあるからだ。それなら、我々の人生に限りなど設けてくれるなと、時間の使い道が無限であるならば、人生において期限を設けてくれるなと友人は言ったわけだ。
 たしかに、彼の言い分は理解出来る。何故なら、友人は既に身体を病魔に蝕まれていたし、そんな男の最後のわがままを、僕はなんとしてもきいてやりたいとさえ思った。無論、無理な話ではあったのだが。
 なんやかんやがあって──書く意味もない、なんやかんやがあった。結局僕は、人生にはたしかに期限が設けられていることを実感した。
友人も逝く間際、改めて実感したことだろう。
 十二月の雨の日、かじかんだ手をポケットにしまった僕は、それから彼のはにかんだ笑顔を思い出してしまったりして、
「あぁ、なんか気の利かない曲の歌詞にでも、迷い込んだようだ……」
 思考にまとまりが付かぬまま、最寄り駅にてハンバーガーを食べようと考えた。我々がよく食べていたビッグマック、フライドポテトに、飲み物は決まって爽健美茶だった。
 しかし、運悪くも去年の冬、ポテトは輸送上の不運が重なって、販売中止となっていた。
 彼との因果関係も分からぬまま、僕はどうしても口に入れたくなったジューシーなポテトが忘れられず、自宅の冷蔵庫で秘蔵っ子の渾名を付けたジャガイモ──その生命力に溢れる芽をすべて除いた上で、秘蔵っ子を油の海に突き落とした。仕方がないことだった。
 結論からいうと、長い間放置したジャガイモは食べるべきではない。もしかすると、イモに限った話ではないかもしれない。
 僕はその日の夕方から腹痛に倒れ、そのまま数日間に渡って調子が悪かった……のなら仕事を休む口実にもなっただろうが、翌日の朝には我が身体もいつもの調子を取り戻したようで、泣く泣く出勤するためジャケットを羽織った。
「すみません、傷んだジャガイモを食べたら、腹を壊しましてね」
 そんな理由は、ズル休みと思われて仕方ないので、それを本心から言わずに済んだ自らの運に感謝すべきか、または恨むべきか。

 脱線した話というのは、場合によっては面白いものだ。たとえば、僕は君に言いづらい話をしなくて良いように、あえて不明瞭な口ぶりをしているとしたら?
 ジャガイモで腹を壊した。どうでも良いことに聞こえるが、やはりどうでも良いことだな。
 君は覚えてない?
 一緒に食べたビッグマック。
 やや焦げた、ポテトのMサイズ。
 爽健美茶の香ばしい匂い。
 君は僕の意識のなかに生きているのか、それとも僕が君に囚われているのか、分からない。昔に、死者が自らの死に気づいていない、そんな悲しいストーリーの映画を見た気がするよ。
 人の時間は限られている。それでも、誰かの記憶に生き続けることは出来るらしいね。
 さよならだ。もう、君とはさよなら。最後にどうしても言っておきたいことがある。


 マクドナルドといえば、ビッグマックだね!ボリューム満点、ジューシーな味わいが口の中に広がって忘れられない記憶となる!
 そんなビッグマックが、平日に限り90円もお得になる! こんな奇跡があっていいの?
 今日のお昼は、ビッグマックに決まり!
 明日のお昼も、ビッグマックに決まり!

 それでもビッグマック、明日からの三連休は普通の価格じゃないか。全然旨味、ないよ。
 いや、ビッグマック。肉の旨味はあるけどさ

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