見出し画像

ESG投資の欺瞞

JパワーはESG投資銘柄にふさわしいか

Jパワー(電源開発)がFTSEのESG銘柄に選ばれたことに対して、CSR・SDGs界隈の皆さんがお怒りです。
Jパワーはいわゆる「ESG投資」に該当する素晴らしい企業だと私は断言します(いわゆると付けたのは、後述の通り私がESG投資自体を疑問視しているためです)。

CSR・SDGs界隈の皆さんがいくら綺麗事を並べたところで(これは皮肉ではなく、実際に「きれいごとでSDGsを実現する」と皆さんおっしゃっています)、今後原子力も石炭火力も世界ではどんどん増えていくわけで、Jパワーの世界最高効率の火力発電技術こそ世界で広まらなければなりません。これは日本のCO2排出削減のみならず途上国の経済発展や貧困の解決にもつながり、SDGsやパリ協定と何ら矛盾しません。日本、そして世界にとって宝物のような企業です。

画像2

画像3


石炭=悪と決めつけている人たちには何を言っても理解されないのでしょうけど。。

ESG投資の定義はない

https://www.sentaku.co.jp/articles/view/20289

こちらの記事も一部の皆さんが拡散されていますが、データによる裏付けも客観性も欠いたただの感情論になっています。
いわゆるESG投資というのは定義がなく、そもそも金融機関や金融商品によって基準が異なります(この記事の言葉を借りればデタラメなのです)。この記事で指摘されているガソリン、製鉄、タバコがESG投資にふさわしくないというのはこの記者さんのただの思い込み・主観でしかありません。では自動車は?アパレルは?食品・飲料は?化学は?製薬は?…これらの業種がOKと言うならそれも主観ではないでしょうか。

同様に、この記事を拡散して批判しているCSR・SDGs界隈の皆さんも自らの主観で原子力や石炭火力がESG投資にはふさわしくないとおっしゃっています。この方々の主張通りになった場合、粗悪な石炭火力発電が世界中に拡散してしまいSDGsもパリ協定も達成できなくなります。

こうした方々は、おそらく機関投資家から企業に送られる調査表や質問書をご覧になったことがないのだと思います。現在のESG投資銘柄選定に利用されている評価基準や選定プロセスは、いわゆるESG投資の理念を全く実現できていません。もしも現在の評価基準や選定プロセスをご存知で、かつ適切だとお考えであれば、環境経営やCSRの専門家として企業や学生に指導する資格はないと私は思います。

ESG投資の欺瞞

以前、環境省の有識者会議に呼ばれた際に、日本を代表する機関投資家や大学の先生、コンサルタントの皆さんと様々な議論をしました。ところが、ESG投資銘柄選定プロセスの実態ならびに委員の皆さんの志の低さに愕然としました。産業界、つまり投資を受ける側の委員は私一人でしたので、問題点を指摘した上であるべき姿や方向性をご提案しましたが、真剣に環境問題や途上国の経済発展などを考えている人は残念ながらおられませんでした。曰く、「今はESG投資の流れをつくることが最重要だ」「評価基準、選定プロセス、企業間比較に関する精度・蓋然性は問わない」と。

画像1


この時、ESG投資の欺瞞に気が付きました。

あらたにESG投資の商品をつくったところで、個人投資家や市場規模が増えるわけではありません。あらたな投資商品ができれば当然ながら金融機関は個人投資家に対して新規開拓の営業を行いますので、ESG商品でも他の商品でも同じです。ESG商品だから環境意識の高い顧客が集まって市場が拡大するなんてことはあり得ません。
つまり、従来の銘柄や金融商品(CSRの専門家さんが批判する金儲け優先の株式市場)を上塗りして看板を付け替えるだけで、実は真水のESG投資市場なんかほとんど存在しないのです。「ESG投資の市場が急拡大している」という昨今の報告書や報道も巧妙なレトリックなのです。

何かに似ていませんか。
そう、何も企業の行動が変わっていないのに、タグ付けして胸にバッジを付けて満足するSDGsの進め方とソックリです。

そして、ESGやSDGsが複雑で分かりづらいほど、普及期間が長引くほど、クライアントの成果が上がらないほど、教えたりコンサルする側はビジネスになるのです。ただし、教えられる企業や学生側には何の付加価値もありません

ESG調査の実態

対象企業には、一年中、膨大な調査表が送られてきます。しかしながら、求められている評価項目は企業側からすると回答するのに手間がかかるだけで全く意味のない内容ばかりです。苦労して回答している担当者としては、「こんな項目から、はたして業態も規模も千差万別の企業をランク付けして投資判断なんかできるのか?」と疑問に思っていました。その後、前述の有識者会議に呼ばれて機関投資家の皆さんと議論した結果、ESG投資であっても選定の大きな要因はやはり利益率や成長性や技術力なのだと分かり、実態を把握することができました。

同時に怒りも湧いてきました。このESG調査に付き合わされる企業側がどれだけ生産性を落としていることか。。本社の環境・CSR担当者はもとより、関連部署や工場の担当者など多大な負荷を強いられるのに、見返りは全くないのですから。
調査表を返しても、自社がそのESG投資銘柄に選ばれたかどうかすら返答がなく、知りたければファンドを買って目論見書を見ないと分からないことが大半です。しかも、大抵のファンドは3か月ごとに銘柄を入れ換えるので、がんばって回答した成果が益々見えにくくなるのです。

金融機関側でも、スクリーニング作業は膨大なはずです。しかも、ほとんどの担当者が金融の専門家であり環境問題やCSRについてほとんど分かっていない人たちなのです(そこで頼るのが、冒頭のFTSEやCDP、DJSIなどの評価なのですが、最も影響力のあるCDPの実態がまたひどいのです。。別途述べます)。このESG評価のために発生したコストは、当然ながら当該ESG商品の手数料に上乗せされるはずです。でも、繰り返しますがユニバース(銘柄の母集団)は従来の成長性などが最も重視されるためほとんど代わり映えはしないのです。
さらに、理論上は、ESG投資が普及すればするほど(現実には従来の市場を上塗りしているだけですが)、いわゆるESG評価の悪い銘柄が魅力的な投資対象となるのです。

「こんな評価基準で選別されたら企業側はたまりませんよ!」「膨大な調査表に回答しても何の付加価値もメリットもありませんよ!我々の生産性が落ちるだけです!」と国の有識者会議という場の空気を読まずに申しましたが、どなたもお答えになりませんでした。
この方たちは今でも日本を代表する機関投資家でありCSR・SDGsの専門家です。

変化の兆し?

もしも、FTSEをはじめ世界の機関投資家やESGを評価している人たちと日本の機関投資家やCSR・SDGsの専門家の認識にズレが出てきているのだとすれば、良い傾向かもしれません。ESG投資が環境問題や途上国の貧困に対して実効性を伴う方向に進むことを期待します。
逆に、今後NGO等も騒いでJパワーが銘柄から外れてしまったら…、また元の木阿弥になってしまいます。
注意深く見守ります。

最後までご覧いただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?