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奇人変人伝

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私が世界中で出会った不思議な変わり者(褒め言葉)たち。ヒッピー、ホームレス、難民、薬中等、私の人生に影響を与えてくれた人たち。多様な人で溢れる世界は美しい。
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記事一覧

私にしかない生まれながらの特権

遊園地のエントランスでこんなことを言われた。 「あなたはこれより先入場禁止です。あなたがあそこの地域出身なので入園禁止です。それか追加料金払っていただきます。」 こんなことを言われたら、あなたはどう思うだろうか。理不尽さから頭に来るだろうか。突拍子もないことで全く意味を理解できないだろうか。 実際こんな遊園地は差別を禁止している日本には存在しないだろう。おそらくほとんどの国ではこのような扱いは法律的に許されないだろう。しかし、グローバルなレベルではこれは日常茶飯事だ。つ

虚像と付き合う

彼は彼自身の過去についてどこまで知っているのだろうか。彼が鏡の中で見ている彼自身の像は、蜃気楼なのではないだろうか。彼はそれが蜃気楼だと気づいているのだろうか。 彼のレストラン彼はグアテマラの小さなヒッピータウンで、奥さんと一緒にインド料理屋を営んでいた。話し方やジェスチャーが典型的なアメリカ人だ。インド料理屋というのは、ヒッピータウンに欠かせないものだ。ベジタリアン天国インドの料理は、一度でもインドに行ったことのあるヒッピーにとっては、第二の母親の味のようにどこか懐かしさ

狂気の人種差別主義者

このホステルに人種差別主義者が泊まっているから気をつけてね。 あなたはアジア人だから… 出入り禁止にしようか考えているんだけど… このホステルに来た時にまず最初に注意喚起されたことだ。その人種差別主義者の彼は私がここに来る前日、自分はトランプ支持者で、いかにアメリカが偉大な国かの演説を行っていたらしい。ホステルのみんなによると、彼は人種差別思考が酷くて怒りっぽく、言動が奇妙で少し気持ち悪かったらしい。 人種差別者がいることに驚きはなかった。バックパッカー社会には少ないけれ

一生出会えない親友

「俺の親友は俺を殺そうとしていたよ。」 彼は酔っぱらうと、いつも少し憂いのある笑顔でそう語ってくれた。 Imagine there's no countries It isn't hard to do Nothing to kill or die for And no religion too Imagine all the people living life in peace, You -Imagine by John Lennon 想像してごらん 国なんて無いんだ

私史上最も男らしい男はゲイだった

男らしいとは何なのか。 女らしいとは何なのか。 私は男らしい、女らしいという言葉が嫌いだ。生物学的差異に注目しての男らしい、女らしいという使い方ならまだしも、小さなコミュニティ内でしか使われていない普遍的でもない尺度で、社会的な意味での男らしさや女らしさを定義することに何の意味があるのだろうか。私は保守的な田舎で生まれ、保守的な祖母と父親に、女の子なんだからああしろ、女の子だからこれをしちゃいけないと言われて育ってきたから、普通の人よりもこのような言葉に嫌悪感を示すのかもし

ボブ- 謎と呼ばれた男(2)

Part1はこちらから 今日出会った他人が裸で自分のベッドで寝ているという、まさしくインド人もビックリな状況にしては、私は冷静に対応していた。ルーさんに「ねえ、よくわかんない人が裸で寝てるんだけど」と伝えて、対応してもらおうとした。ルーさんもよくこんなことを聞かされて動揺せずに「分かった、俺が話す」なんて言えたもんだ。彼は本当に肝が座っている。 私のベッドで爆睡しているボブを起こし、とりあえずベッドから出てもらおうとした。しかし彼は頑なに断った。 「絶対にこれが僕のベッド

ボブ- 謎と呼ばれた男(1)

人は狂人を見た時に恐怖を感じるのではない。むしろ憐むのだ。凡人だと思っていた人が狂人であると分かった時に恐怖を感じるのだ。 昼間に人間として普通に生活している男が、満月の夜に獣へと変身するから恐怖を感じるのであって、彼が昼夜構わず半獣だったら、我々は人間になりきれない哀れな生物と哀れむのではないだろうか。 後にEnigma(謎)と呼ばれるようになった男はボブと名乗った。インドのヒッピータウン、プシュカルのホステルで出会ったインド人のバイカーだ。自身は物理学者だと言っていた