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堕肉の果て ~令和に奏でる創造の序曲(プレリュード)~

第一章 悪魔たちの円舞曲(ロンド)
112.作戦会議 ①

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 コユキと善悪の二人は、オルクスとモラクスの二人を伴って、幸福寺の居間に顔を揃えていた。

 座布団に腰を下ろしたコユキは、両手に掴んで連れて来ていたオルクスとモラクスを、座卓の上に降ろし、二人はその場にチョコンと座った。

 その姿を微笑ましそうに見つめた後、善悪は会議に欠かす事が出来ない、お茶と茶菓子を準備する為に台所へ向かって行った。

 善悪が戻って来るまで、コユキ達三人は口を開く事もせず、真剣そのものの面持ちで待っている。

 いつになく緊迫している理由は明確であった。

 何しろ今回はオルクスとの邂逅かいこう、そしてモラクスとの接触の時とは違い、パズスとラマシュトゥの二柱ふたはしらが同時に顕現けんげんするのだ。

 その上、ゲームや小説なんかでも、割とメジャーなキャラクターともなれば、緊張すんなって方が土台無理な話しである。

 しばらくして戻って来た善悪は、慣れた手つきでコユキにお茶を注ぎ、オルクスとモラクスの前にもペットボトルのフタに淹れた緑茶を置き、最後に自分の分を準備してから、おもむろに打ち合わせの開始を宣言するのであった。

「では、『聖女と愉快な仲間たち』のパーティーミーティングを始めるのでござるよ、今回からモラクス君も加わって四人になったのでござる! はい皆モラクス君に拍手でござる」

 パチパチパチパチ

 善悪の音頭にコユキとオルクスの二人は、笑顔をモラクスに向けて、惜しみない拍手を送った。

 モラクスは照れたように、片手を後頭部に当てて何度もお辞儀を繰り返して、その拍手に答えている。

「では、モラクス君、自己紹介を頼むでござるよ」

「え! あ、はい、えーっと、エピドロあっ、日本風に言うとモラクス・トウ・エピドロミです。 昔の仲魔達からはフォライとかって呼ばれてました。 趣味は武芸の鍛錬をする事で、えーっと、好きなタイプっていうか、好みの魂の種類は、信じていた者に裏切られた際の、『いきどおり』と『惨めさ』の混ざり合った『絶望』です。 皆さんこれからよろしくお願いします」

 パチパチパチパチ

 再び沸き起こる拍手をさり気無く制した善悪は本題を切り出した。

「モラクス君ありがとう、こちらこそヨロシクでござる! さて、早速本題に入るでござるよ、オルクス君さっきの話、パズスとラマシュトゥでござったか? 例の如く出現する場所は分かるのでござるか?」

「ウン…… 35.4――――」

「コンチャーっ! 幸福さん! お届け物でーす!」

「はーい! みんな、ちょっと待ってるでござるよ」

 タイミング悪く宅配便が届いたようだ、ゴブリンの声に答え、善悪が慌てて玄関に向かって行った。

「あ、もしかして、シャトーブリアンかな♪」

「チッ……」

「まあまあ兄者」

 話しの腰を折られて不満顔のオルクスを、モラクスが慰めたりしている内に、善悪がダンボールを持って戻って来た。

「善悪、お肉だよね?」

「いや、結城ユウキ氏からのフィギュアでござるよ♪ 待ちかねたのでござる」

 どうやら善悪が待ちに待っていた、シリアルナンバーゼロが届いたらしく、ニコニコとご機嫌そうな顔で答えた。

「なんだ、あれか…… 何だっけ? 『あ、クマのネグラ』だっけ?」

「『悪魔もぐら』でござるよ、熊のねぐらってそれ只の巣穴であろ? どんなフィギュアでござるか?」

「なはは、そう言われればそうね」

「35.425:139.460!!」

 中々話しが戻らなかった事に業を煮やした感じでオルクスが座標を口にした。

 すかさず宅配便のダンボールにその数字をメモる、出来る男善悪。

 書き終えると自室へタブレットを取りに行こうとしたが、コユキはその動きを止めるように言葉を発した。

「あ、善悪、ググらなくても大丈夫よ」

「え、そうでござるか? 何で?」

「その座標なら偶然覚えてたから分かるのよ、確かアデレードの南東百四十キロ位の場所だったわ」

「ええっ? アデレードって、あの、オーストラリアの? でござるか?」

「そうよ、オーストラリア州のね、ま、その座標の正確な位置で言えば、クーナルピンね」

「おお、あのサイロに描かれた大きいアートで有名な! しかし、そうなると……」

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拙作をお読みいただきありがとうございました!

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