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【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~

118. 令嬢、凱旋する ⑤

 十日前エマがショックを受けデニーが修正を約束したロアの物語(創作)は結局シンシアとストラス、そしてクリスが大活躍するストーリーのままであった。
 別にロアが改稿を拒否したとかそう言う事では無い。

 幾度かに及んだ修正版の叙事詩じょじしは全て、現王の従兄弟いとこに当たる式部卿しきぶきょうバース公爵のげんによって悉くことごとく不採用になっていたのである。
 それならば、そう言ったデニーの一言で最初のロアがつづった物語のままにしたのであった。

 諦めた? とんでもない。
 彼らは実力行使を選択したのである。

 途中まで自分の功績を盛る事にノリノリだったシンシアとクリスも、デニーとストラスのお説教が効いたらしく協力してくれることになった。
 子供たちなりに作戦を練って練って練り捲り今日の日を迎えたのである。
 そうして一同は開かれた南門を順次潜ってパレードの歩を進めるのであった。

 演出家がパレードの先頭に選んだのは、今回の魔王討伐に一切関係の無いダキア伯爵家とタギルセ伯爵家の騎士による行進であった。

 続いてストラスとシンシアが乗った四頭立てのカブリオレに、クリスとレッド、ホワイト、更にはジャック達『努力あるのみ』のメンバーを荷台に乗せた二頭立てのワゴン馬車二台が続き、その後ろをエマ達のキャリッジとグラオ、最後に十二頭立ての儀装馬車であるキンピカなカブリオレに乗ったデニー、ダニエル王子が登場すると言った内容になっていた。

 パレードの先頭が門の内側に進んだだけで王都の中央通りに押し寄せた人々がワァッと大きな歓声を上げる。
 進行方向に向かって右にダキア家、左にタギルセ家の騎士がくらを並べて縦に二十騎づつゆったりと進んで行った。
 続けて門を潜った四頭立てのカブリオレからストラスが号令を掛ける。

「よおしっ! 全体止まれ! 下馬、散開、速やかに警護を交代せよ! 」

『ははっ! 』

 ストラスの指示通り、素早く下馬した騎士たちは馬の手綱を、人混みから抜け出して近寄って来たぴったり四十人の騎士に渡すと、彼らに変わって警護の役目に着いた。
 現れた騎士の隊長らしい男が大声で告げた。

「バーミリオン騎士団、騎乗っ! 」

『応っ! 』

 一斉に騎乗した騎士たちの鎧には華美な装飾の類は一切なく、只々無骨な黒鉄くろがね拵えこしらえられた物ばかりであった。
 言い換えれば常にデビットが装備している物と同じ鎧兜である。
 彼の物と違っていたのは鎧も兜も無数の刀や槍の痕が生々しく、良く見れば装着者の騎士自体も四肢の何れいづれかを失っていたり、中には隻眼せきがんの者も見受けられた。

 先程号令を掛けた隊長に並んだ騎士が、旗を掲げた瞬間中央通りに集まっていた観衆がどよめきの声を上げた。
 朱一色の隊旗の中央に染め抜かれたマークはウォーハンマーである。

『バーミリオンの鉄槌てっつい

 十八年前、突如国境を侵した南方諸勢力の合従軍は無抵抗の開拓村や、軍事的な力の脆弱ぜいじゃくな地方領主の都市を次々と落とし、略奪と殺戮さつりくの限りを尽くしていた。
 百年以上戦争らしい戦争をしていなかったブレイブニア王国は対応に苦慮くりょしていた。

 敵が神出鬼没な事も一層の混迷を齎しもたらし、王宮の会議は紛糾ふんきゅうを重ねるだけでこれと言った方針も立てられぬままに時間だけが虚しく過ぎて行った。
 勿論その間も南方勢力の襲撃は続き、国民達は塗炭とたんの苦しみの中恐怖で眠れぬ夜を重ねていた。

 敵の最初の侵略から十日ばかり過ぎた頃、名も無き開拓村に向けて襲い掛かった南方兵凡そおよそ二千を、僅かわずか二百騎程の騎士団が追い払い村人を保護すると言う出来事が起こった。
 騎士団は村人たちを落ち着けると二十騎程の護衛を残して敵を追撃して行った。
 その後到着した数千の本隊は村に十分な護衛を残し、騎士団を追う様に進軍して行ったという。

 村の老人は一人の兵士に聞いた、貴方達は国軍だろうか、王様が我らを助ける為に遣わしてくれたのか、と。
 兵士は答えた、自分たちは主人に従って来ただけだ、同じ国民の危急を黙って見ていられなかっただけの義勇軍だ、と。

 老人は唖然として兵士と本隊を見送ったが、その後村の仲間から聞かされたのである。
 本隊を率いていた人物は周囲からマークグリフ、辺境伯と呼ばれていた事を、そして一部の騎士からはパトリック様と言われていた事も……

 ここら辺りに一番近い辺境伯家はバーミリオン領であり、その地の若き領主の名はパトリックであった。

 その後も無数の村や町の危機を救い続けたバーミリオン辺境伯の名は、人々の希望と共に語られて、やがて、王都の人間の耳にも届いたのであった。

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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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※この作品は『小説家になろう』様にて、完結している作品でございます。是非こちらからご覧くださいませ^^↓

公爵令嬢冒険02


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