【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
120. 令嬢、歴史を知る ①
王都中を歓喜に包んだパレードから一週間、ノブレスオブリージュのメンバー五人は王宮の書庫でロアと共に本に向き合っていた。
本はブレイブニア王国の正史である。
新たに書き記された今回の魔王討伐の顛末が綴り込まれた正史は、過去に何度となく作り直されたが、書き直しをする事は厳しく禁じられている為、建国の昔を記した辺りは最近の言い回しとかけ離れており、エマ達には読めたとしても意味不明な外国の言葉のように感じられた。
「ここに記されているのが、建国王のパーティー、つまりルーク様と共に魔王を倒したお仲間についてですね」
「ふーむ、文字に施された装飾が多過ぎて何と書いてあるやらまるで分りませんねぇ、如何ですお嬢様」
ロアの指さした先の文字を見て首を傾げたイーサンがエマに聞き、問われたエマは答えるのであった。
「本当ですわね、この装飾も書かれた時代時代の特徴を残す為に模しているのかしら? ロアさん」
「そうですね、皆さんの物語も王国が続く限り、今回、私が認めた装飾が施されて書き直される事でしょう! あ、ほら、ここにデビットさんのご先祖、パズス・アイアンシールドの記述がありますよ、ほら伯爵、ご覧下さいな」
ロアの言葉に顔を赤らめて答えるのは、伯爵と呼ばれたデビットであった。
「その伯爵は止めてくれよロア、二枚半も陞爵されてしまって、まだ慣れていないんだよ……」
「同感です、まさかこの私が兄トマスと同じ伯爵位、更に刑部省の官位まで二段も陞官してしまうとは、慮外でしたよ…… デニー」
デビットの声に同意を返したイーサンは、当惑と言うより軽い非難を含んだ視線でデニーを見た。
「ははは、だから言ったろう! 王宮としては手柄に対する褒美として爵位持ちには陞爵、更に領地持ちには持て余している直轄地を割譲する機会を手薬煉引いて待っているような所があるからね、今回はその思惑とピタリ当て嵌まっていたからさ、こうなるだろうなとは思っていたんだけどね、でもストラスに比べれば随分マシじゃないかい? 彼、というかシンシアのお父さんなんて軍務省の官位が四つも陞官させられて副総監になったそうだよ? 彼、その座を継がなければならないんだからさ、ふふふ、皆大変だねぇ」
可笑しそうに笑うデニーにマリアが呆れた声で言った。
「まあ、デニーは王様になるんですのに、他人事みたいに言うのですね」
デニーは肩を竦めてお道化た様に返す。
「僕は子供の頃からそう言われ続けて来たからね、もう慣れているんだよね、分かった? 未来の伯爵夫人様? 」
「ぶー」
「ははは、だけど大丈夫だよ、バーミリオンの家にはトマス卿やスコット卿みたいな良い先生が多いし、寄り子にも優れた次男三男も多いらしいじゃないか、彼らと力を合わせればきっと大丈夫だって! それに比べて…… エマ、君には苦労を掛けてしまうね、申し訳なく思っているよ」
「えっ! 」
ロアの手元の装飾文字を読み解こうと頭を捻っていたエマは、デニーが突然自分に振った話に驚いたが、何となく耳に入って来ていたマリア達との会話を思い出してデニーに向き直って答える。
「苦労だなんて…… デニー、私は貴方と一緒に居られるのならば、王妃でも王太子妃でも、いいえ冒険者妃でもモンスター肉の串焼き屋妃でも構わないのですわ! 喜んで付いて行きましてよ! 」
「っ! …………エマ」
「デニー」
ジッと見つめ合う二人。
お互いの思いを知ってからと言う物、何かと言えばこんな調子で二人だけの世界に浸るのがマイブームとなっているらしい。
「ゴホンッ! 良いムードの所申し訳ないけどね、デニー、アメリア、君達が知りたかった記述が見つかったんだが…… どうするラヴシーンの後にした方が良いのかな? 」
ロアの言葉でハッとした顔を浮かべ、互いに視線を逸らして頬を赤らめてモジモジする。
ここまでがここの所のセット動作になっている二人であった。
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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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