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【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~

109. 令嬢、魔王討伐 ⑥

 数百までバルーンボムを生じていたエマはそれらを消して、パーティーメンバーたちに問い掛けたのである。

「あら? しかして…… 勝ってしまいましたのかしら? ねえ、皆、私達、魔王ザトゥヴィロを倒してしまったのでは無くって? 」

 イーサンが緑の光を収めながら言う。

「ええ、何やらそのようですね…… ふむ、本気を出せなかったのは不本意ですが…… まあ、人類が救われたのなら良かったのでしょうか? 」

 マリアはつまらなそうに言う。

「なんだ、誰かの攻撃が遅効性ちこうせいだったみたいですね…… 初めて全力で戦えると思っていたのですけれど…… つまらないのですわ! 」

 デビットはオレンジに輝く姿のままで言った。

「はははっ、大方マリアの攻撃がきつ過ぎたんじゃないか? もう、気配すら残していないしな! よほど怖かったんだろうさ! 」

「まあぁっ! 」

 憤慨ふんがいするマリアの声をそのままにデニーがエマに微笑みながら言った。

「とにかく、人々の危機は避けられたようだよエマ、僕たちやり遂げちゃったみたいだね? どうだい? リーダーとして今の気持ちは? エマ? 」

 問われたエマは無言で何やら考え込んでいる様だ。

「……」

 デニーが心配そうに顔を覗き込んで言う。

「エマ? 」

 エマは暫くしばらく目を閉じて考えを纏めまとめていた様であったが、やや置いてから大きな瞳を開いて覚悟の籠った声で言ったのである。

「ええ、そうでしょうとも! イーサン、デビット、マリア、そしてデニー! 私達が冒険者を目指した目標である、魔王復活を阻止する、その事はたった今成し遂げられました…… ですので…… 私、エマはここにパーティーの解散、解消を宣言するのでございますわ! 今迄お付き合いいただいて、本当に…… 本当に心の底から感謝いたしますわっ! 」

「「「「え、ええっ? 」」」」

「これは、命令…… ですのよ! デビットとマリアは元居た場所に戻って結婚してくださいませ! イーサンも元の爵位を取り戻して更なる上を目指さなくてはいけませんわよ! それこそノブレス・オブリージュそのものでは無いのですか? ………… そして…… デニー? デニー…… 貴方は、貴方を待っている…… その、えっと、婚約者の元に帰らなくてはいけないのではなくって? でしょう? ですから私達『ノブレスオブリージュ』は今ここで解散しなければいけないのですわよぉ! 」

 イーサンが慌てて聞く。

「お嬢様は、エマ様はどうされるんですか? 家にお帰りになるのですか? 」

 エマは少し考えてから返した。

「そうですわね…… 家に帰っても一生部屋住みで弟達に迷惑をかけるでしょうし、アプリコット村のお仕事を手伝おうかしら? 」

 デビットが秒で返した。

「ならば私とマリアもアプリコット村で暮らします、爵位など冒険者になる時に捨てたも同じです、未練は有りません」

「当然ですわ! 付き纏いまといますから、お嬢様! 」

 マリアも同感の声を上げ、イーサンも大仰に頷いて続いた。

「お聞きになった通りです、何、四人で力を合わせれば通常のモンスター相手に不覚を取る事も無いでしょうから、今暫く、冒険者を続けてもいいかもしれませんよ、お嬢様? 」

「イーサン、デビットとマリアもそれで構わないのですか? 」

「もちろん、私たち二人が居れば村の開拓も捗りはかどりますしね、な、マリア」

「その通りですわ、たまに宝石も見つかりますわよ」

「ははは、そう言う事なら私も十七人分働けますからね、お得でしょうな、ははは」

「……」

 最早ついて行く事を決定している三人に比してデニーは只一人黙ったままであったが、エマに向けて重たかった口を開くのだった。

「エマ、僕は────」

「デニー貴方は無理しなくても良いのでしてよ、家に帰って待って居られる婚約者の方を幸せにする事こそが貴方、デニーのノブレスオブリージュですわ…… きっと全てうまく行く事でしてよ、解散したとはいえ貴方も魔王討伐パーティー『ノブレスオブリージュ』のメンバーなのですから、私達四人は遠く離れていてもデニーの幸福を祈っているのですわ、いつまでも」

「……分かった、ありがとう」

「「「……」」」

 吹っ切れたように言ったエマの言葉に、俯きうつむき気味に答えたデニーに対してイーサンとデビット、マリアの三人は掛ける言葉が見つからないのか無言のままで、並んで廃墟から出る二人の後を追うのであった。

「あら、霧が晴れていないのですわ、やっぱり自然現象だったのですわね、さあ、皆、来た時と同じように紐を掴んでついて来るのですわ、行きますわよ、宜しくって? 」

 紐を握って帰ろうとした所でデニーが奇妙な事を皆にうたのである。
 曰く、来るときはエマの後ろを歩いていたデニーだが、帰る時は最後尾のマリアと入れ替わって欲しい、だそうだ。
 理由は判然としなかったモノの、大方マリアの居眠り禁止か何かだろうと考えたエマは快く了承するのであった。

 そして精霊カーリーの助言に従って歩いたエマ達は霧のエリアを踏破して、グラオやシュバルツ、ヴァイスの待っていた場所へと戻る事に成功したのである。

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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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※この作品は『小説家になろう』様にて、完結している作品でございます。是非こちらからご覧くださいませ^^↓

公爵令嬢冒険02


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