【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
128. バルコニーのアメリア ①
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デビット、イーサン、マリア、それにレッドとホワイトが旅立ってから、早二か月が過ぎようとしていた。
王家とバーミリオン家の話し合い、ダニエル王子とアメリア令嬢の婚約に向けての話し合いは佳境に入っていたのである。
実質的な加増を受けたバーミリオン一門はすっかり満足した素振りでにこやかに話し合いは進んでいたのだ。
王家、と言うより国王派としてもこれで縁戚として国内最大戦力を取り込めた、そう胸を撫で下ろしていたのだが……
二か月前まではトマスとスコットが家の代表として出席していた話し合いであったが、寄り子を外れ別個の侯爵家となったトマス・スカウトがバーミリオン家として参加するのはおかしい事となってしまった。
そこで一応引退した形になっている先代のバーミリオン家当主、パトリック・バーミリオン、別称『バーミリオンの悪魔』が柄にもなく話し合いの場に参加する事となったのだ。
国王派のメンツの中には、時に直情的で歯に衣着せぬ事で有名なパトリックが国王と同じテーブルに着く事を懸念する声もあったが、王太子と令嬢が結婚し、子を為した際には大公になる事などを勘案した結果、公爵達への顔合わせの意味も込めて招聘する事となったのである。
それからこの日、三回目の話し合いまでの二回は何事も無く済んでいた。
パトリックも娘の幸せが嬉しいのかニコニコと笑って過ごしていたのである。
辺境伯を除く伯爵以上の貴族たちを集め婚約を発表する事や、仲睦まじい二人の為の新居代わりの別荘の造営、挙式の日程、王都民たちへの奉賀金の支給手順などが大方決まり、皆が同意した時、ここまで大人しくしていたパトリックがやらかしたのであった。
「おお、漸く面倒な話し合いも完了いたしましたな! いやはや、これで一安心ですな、思えばあのまま殿下と娘が見つからなければ…… 考えただけでも恐ろしい事になって居りましたなぁ~」
この発言を聞いた国王派筆頭の式部卿がパトリックに対して真顔で聞き返したのだ。
「どういう意味ですかなパトリック殿、恐ろしい事とは一体? 何やら聞き捨てなりませんな」
眉間を寄せて声に圧を乗せて問い掛けた言葉も、豪傑であるパトリックには一切届いていなかったのである。
パトリックは朱色の髭の奥に、豪快な笑みを浮かべて言い放ったのである。
「そりゃあドンパチよ! 儂が止めた所で家の者は荒くれ者ばかりだからのお! 早晩クーデターでも起こしていたかもしれん! まあ、そうならなくて良かったわい! ガハハハハ! 」
「くっ……」
堂々と悪びれずに言われてしまった公爵達が下を向いてしまう程の迫力であった。
ここまでは良かったのである、問題は次の言葉で引き起こされた。
「王子殿下が行方不明なら行方不明だと最初に言ってくれれば良かったのですよ陛下? どうです一つ詫びて置きますか? お受けしますよ? ガハハハ」
何と不敬な言葉であろうか、パトリックでなければ捕らえられていてもおかしくは無かった。
だが国王は穏やかな笑みを浮かべているだけだった。
なら良かったのだが、そうでは無かったのだ。
「ふはは、変わらぬなその方は、ほれ、パッキーこれで良いか? 許せよ」
言いながらあろう事か王は自らの冠、クラウンを外してテーブルの上に置いてしまったのである。
「へ、陛下! 」
一斉にざわめき出す公爵達を尻目にパトリックは現王に言ったのである。
「はは、懐かしいですなあ、陛下? 」
現王は笑顔で答えたのである。
「で、あるなパッキー! 余も昔を思い出すのである! 」
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