【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
129. バルコニーのアメリア ②
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現王は先王の第三王子であった。
兄である第一王子、第二王子の夭折に心を痛めた先王は、幼かった現王のご学友に貴族派のバーミリオン辺境伯の長男を望んだのである。
通常であれば支持が強い国王派の子息、又は直属の部下に当たる宮中伯の子弟から選ぶ所を、わざわざパトリックを指名した理由は年が近いから、では勿論無い。
パトリックが生まれつき有していた『鏡』と『報復』のスキルがその理由であった。
二人の兄の死因は病気であった。
無論、パトリックの反射スキルでは病気を防ぐ事は出来ない。
とは言え、魔法が当たり前に存在する世界である、たった一人残った王子に対して出来る限りの安全を担保したいと考えたのだろう。
先王の気持ちを理解したのか定かではないが、パトリックの父はこの依頼を快諾し、幼かったパトリックは家臣に連れられて王宮での暮らしを始めたのだった。
父に一つの使命を言い含められた上で、である。
『片時たりとも王子から離れるな、そして『鏡』と『報復』を王子に張り続けよ』
幼いパトリックは毎日その言い付けを守り続け、毎晩床に就くころには魔力切れを起こしていた物だ。
魔力とは生命力そのものである。
幼くして日々の魔力切れの副作用として、強大な魔力を有する事になったパトリックは、十歳の時に体が石化し始め四肢を動かす事が出来なくなってしまった。
王宮の医師たちの手に負える状況では無く、途方に暮れていた時、現王は夢に精霊のお告げを聞いたのだった。
『王都の南の小さな町、ルンザにいる右腕一本だけの青年を探して友の危機についての話を伝えるのです、そうすれば彼の命は助かる事でしょう』
現王である王子は父王に夢の話をし、先王は藁にも縋る気持ちで数十の人を送り、ルンザの町で腕に欠損のある人物にパトリックの話を聞かせて回ったのである。
話を聞いた隻腕の青年は簡単に答えたそうだ。
『そうですか、むむむ、はい、これで治りましたが、そうですね…… これを飲ませて貰えますか? そうすれば再発する事も無いでしょう』
そう言って胸元から出した小さな包み、粉薬を渡して来たらしい。
粉薬の正体について尋ねた兵士に対して青年は答えた。
『うん? これは脳下垂体から分泌される成長ホルモ…… んまあ、元気になる薬ですよ、あとはそうですね、今後は魔力切れを起こすほどスキルを使うのは控える事です、伝言頼みましたよ』
そう言うと、兵士が一瞬目を離した隙に何処かへ姿をくらませてしまったのだった。
青年が言った通り、同じころ王宮ではパトリックが目を覚まして、自由になった自身の手足を不思議そうに眺めたのである。
戻ってきた兵士の話を聞いた先王は、持参していた粉薬をパトリックに飲ませたが、パトリックはパタリと眠りに落ちてしまい三日間眠り続けたのであった。
四日目に目を覚ましたパトリックの姿を見た現王、王子は肝を潰したのである。
可愛らしかった自分の二つ年下のパトリックは三メートルの大男に変貌していたのである。
パトリック自身も自分の姿に驚き泣き出してしまい、二日間自室に引き篭もってしまった程であった。
三日後、落ち着きを取り戻したパトリック少年(三メートル)は先王と現王の二人に、父の命令と毎夜の魔力切れについて正直に告白したのである。
先王は自分の浅慮を恥じて嘆きを漏らした。
自分の子可愛さに、年端も行かぬパトリックに重責を担わせ、結果、巨人の様に変貌させてしまったのである。
申し訳無い思いは現王、当時十一歳だった王子も同じであった。
王子はパトリックに聞いた。
『パッキー済まなかった…… お前が私を守っていてくれたとは…… なあ、どうすれば私を許してくれる? 何でも望みを言っておくれ、出来る限りの事をさせてくれ』
考える事も無くパトリック少年(三メートル)は答えた。
『許すも許さぬも…… でも、そうですね、折角ですし、殿下? どうです一つ詫びて置きますか? お受けしますよ? てへへ』
『そ、それで良いのかパッキー、ならば何度でも詫びよう、苦労を掛けた許してくれいパッキー』
僅か十歳のパトリック(三メートル)は笑顔を向けて言った。
『許せ、と仰ればいいのです殿下! この形ですから私は実家へ帰ります、王都では目立ってしまって仕方ないですからね! お近くでお守りする事は叶いませんが、これからは遠く離れた辺境の地で出来る限り殿下のお役に立つとお約束いたしますね! 』
『パッキー……』
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