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【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~
92. 令嬢、迎える ③
デビットが驚いたように叫んだ。
「マリアっ! お前その恰好はっ! い、一体何があったと言うんだっ!? 」
デビットが驚くのも無理は無い、いつも身に着けている純白のヘッドドレスと同じく純白のエプロン、ピナフォアを身に着けていないマリアを見たのはエマも初めてであった。
だけでなく、お気に入りで午前中であっても好んで着用していた黒のメイドドレスはボロボロで所々白い肌が見え隠れしている。
大事な所が辛うじて隠されているだけのぼろ布、そんな感じだったのである。
エマはマリアに席を進めながら大きな声で言った。
「ミランダさーん! 」
「はいはい、グラスですねぇ! 」
エマはミランダの持って来たグラスに水を注ぎながら確信を持った声でマリアに言った。
「マリア…… 言い当てるみたいではしたないのだけれど、貴女に何があったか当てても宜しいかしら? 」
マリアはエマが入れてくれたグラスを手にしながら答えた。
「構わないですよ、お嬢様! 何です? 新しいスキルか何かですか? 」
何故かワクワクしているマリアに笑顔で答えるエマである。
「いいえ、そうでは無いのだけれど…… マリア、貴女がそんなボロボロになっているのって、ずばりっ! どこかの家のメイドが自分の仕える令嬢を攫って逐電したと聞いて、面倒な事に巻き込まれない為に飲まず食わずで帰ってきた結果では無くって! どうですの? 当たらずとも遠からずでは無いかしら? 」
「え、全然違いますよ」
「ち、違うんですの? 」
「はい、全然」
ガックリと肩を落としたエマに対して、マリアが語って聞かせた内容は大体こんな感じであった。
出発した日の内に山間の里に辿り着いたマリアは、里人に教えて貰った山の中腹にある『鬼王の試練の岩窟』へと、無謀にも休息も取らずに向かったと言う。
辿り着いた岩窟の中は冷やりとした冷気と、周囲に隠れた燃える様な濃密な魔力の奔流が相反した、何とも気持ちの悪い場所であったらしい。
マリアの前に姿を現した一体の鬼、二メートルほどのムキムキの女性は、寝起きする為の小さな部屋に案内した後、こう告げたそうだ。
『今日からここに集った強者たちが昼夜を問わず貴様に襲い掛かる…… 死にたくなければ岩窟を出て貴様の住む世界に帰る事だ』
と。
マリアは思ったそうである。
鬼の岩窟とは言っても、人間しかいないんだなと、案内してくれた女性もオーガみたいな角も生えていなかったし、強さを求める者が集まる、共同訓練所みたいな物なんだな、とその時の彼女は思ったと言った。
マリアの予想は見事に裏切られたそうだ。
翌朝、ムニャムニャしながら小部屋を出たマリアに襲い掛かった武芸者達は、揃って巨大な角を生やした鬼であったと言う。
全身を金属質の光沢に包んだ鬼たちはマリアをぼっこぼっこにしたそうだ。
息も絶え絶えになったマリアは安全地帯である小部屋に逃げ帰り、震えてその日を終えたのだと言った。
安全な小部屋には水も食べ物も無かったらしい。
渇きに耐えかねたマリアは夜中にそっと部屋を抜け出して水が流れていた一角に向かったと言う。
美味しそうな清廉な水の流れを目にしたマリアは飛びついたそうである、無理も無い、渇きとは人が抗いがたい渇望のトップなのである。
しかし、水に後もう少し指呼にまで迫ったマリアを引き戻す存在が居たと言うのだ、何て意地悪な! 聞いていたエマが唇を噛み締める程である、因みに少し切れた下唇からはバーミリオンの血潮が流れていた。
背中や足をボコられながらも水場に進む、引き戻される、を繰り返すなか、魔力を放出し脚部に収束させたマリアのバタバタ蹴りが幸運にも意地悪の体を捉えて、一瞬の間を作り出すことに成功したそうだ。
なんとか、水場に辿り着いたマリアはホンの一口だけではあったが、求める潤いを口にする事が叶ったのであった。
その後は、殺されない様に地を這って自分に与えられた小部屋に戻ったマリアは考えたそうだ。
鬼どもがカチカチの金属質に変じる理屈についてである。
奴らは魔力を外に放出してはいない!
その事実に辿り着く事で、飢えと渇きを忘れてしまったマリアは、小部屋の中で三日の時間を費やしたのだそうだ、鬼の技の模倣の為に……
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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。
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