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【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~

104. 令嬢、魔王討伐 ①

 霧は永遠に晴れないかと思えた。
 それ程に深く濃厚な幕となってエマ達の周囲を満たしていたのである。

 今彼女たち五人は一列に並んで一本のひもを頼りに手探りで進んでいる。
 ヴァイスとシュバルツ、グラオの三頭は霧の外でキャリッジ馬車やキャリーと共にエマ達の帰りを待っていた。
 視界ゼロの真っ白な世界で仲間達を導いているのは、リーダーのエマであった。
 別にリーダーだから先に行く、とかの話ではない。
 この深すぎる霧の荒野を進むための恩寵おんちょうを持っているのが彼女だけだからであった。

 恩寵とは精霊カーリーとの交信、ズバリこれである。
 今もエマは心の中で交わされる精霊の案内に従ってよろよろと歩いているのであった。

「皆、あと少しだそうですわよ、頑張るのですわ! 」

「え、エマ、これ本当に進んでいるの? 僕なんだか同じところをグルグル回っているような気分がするんだけど……」

「大丈夫でしてよデニー、精霊のささやきを信じるのですわ! 」

「すみませんお嬢様、少し小用を足して来ても宜しいでしょうか? ぐに戻りますので」

「ダメに決まっていますわ! イーサン…… 入る前に済ませて置くように言いましたわよ? んもう! 一体どうしたと言うのかしら、貴方らしくもない」

「すみません、もうチョットだけ辛抱します……」

「ふわあぁー、にしても何にも見えないってのはつまらないですね、何だか眠くなって来ませんかぁ? 」

「緊張感を維持しなくてはいけませんわ、デビットが眠くならない様にマリアが話し掛けて下さいませ」

「グウーグウー」

「あ、マリアの奴、紐を腰に縛って既に寝ていますよ、どおりで重いと思ったんだ、金属質になれば引きられても痛くないからって、全く! 」

「仕方が有りませんわねぇ、あ、着いたみたいでしてよ! ほらっ! 」

 エマの言葉通り、数歩踏み出すと景色は晴れ渡った岩ばかりの荒野へと変わった。
 振り返ると真っ白な霧は背後に不自然に留まっている。

しかして、この霧も魔人達が作り出しているのでしょうか? 」

 イーサンの呟きに答えるエマである。

「それも魔人達、それに魔王ザトゥヴィロを討伐すれば分かる事でしてよ! 行きますわよ、皆! 」

「あ、ちょっと待ってください、その前に小用に」

「そうでしたわね…… 行ってらっしゃれば宜しくてよ……」

 多少出鼻をくじかれた感じであったが、今から対決する悪魔達は尿意を耐えながら戦えるような相手ではない、そんな風に思い直したアメリアは、すっきりした顔で戻って来たイーサンに、念の為『清潔(クリンネス)』を掛けて改めて言うのであった。

「では、行きましてよ、覚悟は良いですわね? 」

「ああ、勿論だよ」

「お任せください」

「シバキ回してあげますわ! 」

し潰して見せますよ、お嬢様」

「ならば特攻! ですわっ! 」

 言ってから周囲をキョロキョロと見回して、それらしい所を探し始める五人であった。
 中々に締まらない事この上ないが、何分初めての魔王討伐である、不慣れなのだ。

「あ、エマ! あそこじゃないかな? あの丘の上! 何となく赤青金に光ってるみたいだよ! ほら、見えるよね」

 額に手を翳しかざして遠くを見ていたデニーが、前方の丘の上を指さしてエマに同意を求めた。
 エマは指し示された方向に顔を向けて目を細めている。

「えー、どこですの? 見えなくってよ…… あ、見えた! もう、デニーったら嫌ですわ、丘の上では無くて中腹の廃墟の所でしてよ、まったくもうっ! 」

「本当ですな、中腹が光っていますね」

「あー! あそこですのねー! はいはい」

「廃墟だな、元は教会か何かみたいだな…… 行きましょう、俺が先頭に立ちますよ」

 デビットはやる気満々であった。
 イーサンが落ち着いた声で言った。

「待ってください、ず私が様子を見てきます、しばしここで待っていて下さい、宜しいですよね、お嬢様」

 エマが頷いて言った。

「ええ、お願いします、あまり近付き過ぎないように! 気を付けて頼みますわ」

「ははっ! ドロンっ! 」

 待つこと僅かわずかに十数秒。
 戻って来たイーサンは首を傾げて何やら不思議そうにしている。
 
 エマが聞いた。

「違いましたの? 」

 イーサンが答える。

「いえ、居ました、金と赤と青揃っていたんですが、その、居眠り中でした……」

「まあ! 」

 デニーが珍しく不愉快な顔を覗かせて吐き捨てるように言う。

「居眠りか…… 随分余裕みたいだね! 舐められてるね、僕たち! 」

 この声を聞いてマリアとデビットも眉をしかめている。
 エマは逆に落ち着いたようで皆に声を掛けたのである。

「冷静に! ですわ、こちらを見縊ってみくびっているという事はチャンスなのでしてよ! イーサン、三人だけだったのですね、ザトゥヴィロはいなかった、そうなのですか? 」

「はい、三人だけでしたね」

「なお、チャーンス、でしてよ! まずは三魔人から倒してしまうのですわ! 」

「「「「おおっ! 」」」」

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お読みいただきありがとうございます。
感謝! 感激! 感動! です(*'v'*)
まだまだ文章、構成力共に拙い作品ですが、
皆様のご意見、お力をお借りすることでいつか上手に書けるようになりたいと願っています。これからもよろしくお願い致します。
拙作に目を通して頂き誠にありがとうございました。

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※この作品は『小説家になろう』様にて、完結している作品でございます。是非こちらからご覧くださいませ^^↓

公爵令嬢冒険02


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