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【連載小説】私、悪役令嬢でしたの? 侯爵令嬢、冒険者になる ~何故か婚約破棄されてしまった令嬢は冒険者への道を選んだようです、目指すは世界最強!魔王討伐! スキルは回復と支援しかないけれど……~

130. バルコニーのアメリア ③ (挿絵あり)

はじめての方はコチラ→ ◆あらすじ◆目次◆世界観と設定◆

 パトリックと国王は過ぎし日を思い出し、揃ってジーンと感慨に浸っていた。

「陛下! お気を確かに! パトリック殿は爵位を返納済みの一般国民ですぞ! その前でクラウンを外すという事は、お、お、王位を譲ると取られても仕方のない行為では有りませんかぁ! は、早く戴冠たいかんをぉぉ! 早く早くぅ! 」

 ハッとした顔を浮かべた国王に対して、こちらも言われて気が付いたのだろう、パトリックが慌ててクラウンを手にして渡そうと差し出したのだが……

「反逆だぁー! ぱ、パトリックが王冠を手にしたぞ! これは、明らかな叛意ほんいであーるっ! 衛兵、衛兵を呼べぇ! 」

 ピリピリピリピリーッ!

 吹き鳴らされる警笛。

「「え、ええー! 」」

 狼狽ろうばいし捲る国王とパトリックの声を無視して雪崩れなだれ込んでくる衛兵たち。
 因みちなみにクラウンは焦り捲るパトリックの手の中でペチャンコになり見る影も無かった。

 しかし、会議室に入って来た衛兵は一人残らず精鋭、王宮騎士団のつわもの達である。
 強者は強者を知る。
 突入したは良い物の、目の当たりにしたバーミリオンの悪魔、巨人のパトリックに対しながらも、じりじりと後退りを始めるのであった。

 遅れて部屋に踏み込んだ王宮守護の役を張る騎士団長は眩暈めまいを覚えそうになるのを踏ん張って、ギリギリではあったが大声で自分と左右にはべった副官を鼓舞するのであった。

「なんの! きょ、巨人であろうが、お、お、おおおおお、王国を守護するのが、わわわ、我らの務め! ええいっ! 生を惜しむな名をこそ惜しめぇ! と、突撃ぃ! 見事玉砕ぃぃ! 」

「お? おお? 何だ? 何だ? おおおお? 」

 突撃されたパトリックが思わず片手を軽く振って群がる騎士達を跳ね除けたのであった。

 ドヒュッ~! ドゴッ! パラパラパラ……

報復リベンジ』の効果だろうか? 振り払われた騎士団長と副官、勇気ある数人の騎士は、背後の壁に打ち据えられて意識を失い床にその身を伏せたのであった。

「ひっひいぃっ! 」

 式部卿の悲鳴を聞きながら国王はパトリックに語り掛けたがその声は焦り捲った物であった。

「ぱ、パッキー! クラウンを! 王冠を余の頭に戻すのだぁ! 急いでっ! 早くっ早くぅっ! 」

「あ? ああ、そ、そうだな! えっとぉ…… はいっ! 」

 握り潰してしまっていたクラウンはパトリックの大きく無骨な手指では最早元通りには直す事が出来ない状態であった。
 途方にくれたパトリック、エマパパは仕方なく、元クラウンである金塊をオニギリ状に纏めて現王の頭の上に戻すのであった。

 ちょこんと頭の頂点に金と色鮮やかな宝玉で出来た玉を乗せた現王、国王は自信満々で言ったのである。

「鎮まれ! 我が力たる騎士達よ! 王冠は未だ我が頭上に有り! 狼狽えうろたえるなっ! 静やかな心を持って事に当たるべしっ! である! 」

 流石は鍛え抜かれた衛兵たちであった、王の言葉を受けると急激に冷静さを取り戻し、一斉に騎士団長たちの介抱を始めたのである。
 パトリックは怯え続けて一塊になっている国王派の大臣たちに歩み寄りながら言った。

「なあバース式部卿、法務卿も聞いてくれい! 儂には叛意ほんいなんぞ無いんだが……」

パトリックみてみん

『ヒイィッ! 』

 ジッと席に着いたままで成り行きを見守っていたスコットが立ち上がって兄と国王に向けて言う。

「皆さん怯えてしまって話になりませんな…… 兄上、一旦屋敷に戻ると致しましょうか? 国王陛下、追って今回の沙汰を頂きますまで謹慎しております、それでよかったでしょうか? 」

 スコットの丁寧な物言いに国王はホッとした表情で答えた。

「うむ、そうしてくれるか、何、他愛無い誤解で起こった騒動に過ぎぬ、大事おおおごとにはせぬつもりだ、安心して待っていてくれ…… それにしても、其方も良く辛抱してくれたのぅ~感心したぞ」

 スコットは首を振りつつ答える。

「いいえ、とんでもございません…… テーブルを失礼しました、無作法をお許しくださいませ、では、兄上失礼しましょう」

「お、おう、陛下、失礼します」

 スコットが兄、パトリックの肩に手を伸ばして退室を促した、その時、大理石のテーブルが粉々に砕け散ったのである。

 国王派の大臣たちの誰かが粗相をしたらしく、床に失禁の跡が広がり、同時に衛兵達が左右に分かれ、道を作った。
 その真ん中を堂々と退室していくバーミリオン兄弟を制止する馬鹿は誰一人いなかったのである。

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公爵令嬢冒険02


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