フランス語翻訳練習 リルケ『果樹園』37
原文
Rilke, Vergers, 37
Souvent au-devant de nous
l'âme-oiseau s'élance;
c'est un ciel plus doux
qui déjà la balance,
pendant que nous marchons
sous des nuées épaisses.
Tout en peinant, profitons
de son ardente adresse.
日本語訳
リルケ、果樹園、37
しばしば私達の前で
魂の鳥が舞い上がる。
私達が密雲の下を
歩いて行くときに(行くのに)
既に魂の鳥を揺すっているのは
より穏やかな空だ。
苦労しながらも、私達は
魂の鳥の熱情的な器用さ(宛名、(ある人に)言葉をかけること、Mitteilung, Botschaft (KA, S.487.))から利益を得よう。
研究者によるドイツ語訳
Oft schwingt sich vor uns der Seelen-Vogel auf; es ist ein milderer Himmel, der ihn schon wiegt,
während wir unter dichten Wolken gehen. Profitieren wir, mitten im Leiden, von seiner leidenschaftlichen Geschicklichkeit.
(Rainer Maria Rilke Werke, Kommentierte Ausgabe in vier Bänden, herausgegeben von Manfred Engel, Ulrich Fülleborn, Horst Nalewski, August Stahl, Supplementband
Gedichte, in französischer Sprache mit deutschen Prosafassungen, herausgegeben von Manfred Engel und Dorothea Lauterbach, Übertragungen von Rätus Luck, Insel Verlag, 2003, S.50f.)
白井健三郎と吉田加南子訳
37
しばしばわたしたちの前で
鳥である魂が飛びたってゆく
すでに魂を揺さぶりはじめているのは
より甘美な空なのだ
わたしたちが
厚い雲の下を歩いているときに――
苦労しはたらきながらも わたしたちは
魂の熱い巧みさをわたしたちのために用いよう
(リルケ全集、第5巻詩集Ⅴ、監修塚越敏、河出書房新社、1991、p.480.)
山崎栄治訳
37
しばしば、わたしたちに先んじて、
あの魂であり鳥であるものは舞いあがる。
わたしたちが厚い雲の下を
歩きつづけているあいだに、
あれはもう揺られている、
別の、より甘美な空のなかで。
困憊のさなかにもわたしたちは
あの熱烈な妙技から利益をえよう。
(リルケ全集2、詩集Ⅱ、責任編集富士川英郎、昭和48年、p.393-394.)
プルースト読書により刺激を受けてできた、芸術と生の問題を扱う詩群の一編です。
魂の鳥はエジプト神話から取材したようです。飛ぶ鳥はリルケにとって世界空間に関与します。つまり魂の鳥は世界内部空間Weltinnenraumを飛び抜けます。
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