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オールタイム好きなアルバムランキング100 (2022年版)

はじめに

 こんにちは。今回は定番企画「名盤ランキング」を実施してみます。
 選出についての簡単な縛りについて述べておきます。
①「歴史的意義」に触れつつ、「個人的好み」を反映したランキング 
②1名義1枚(改名、別名義は構成メンバーが同じなら1名義カウント)
③編集盤、ベストアルバムの選出可
④5曲以上、かつ「EP」「アルバム」「ミニアルバム」と銘打ってリリースされたものに限る(シングルの「Complete Edition」は含まない)
 選出されたアルバムにはジャケット写真、サブスクで聴ける場合はリンクを掲載し、簡単なレビューも掲載しています。
 それではいきましょう。

100~91位

100位 『Nonstop』 OH MY GIRL    (2020年)

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 売上を倍増させ、ステップアップを果たした1枚。日本デビューシングルにも選ばれたセツナダンスポップの表題曲は日本語verでは "「キュンときた、大好き」" "こんなはずじゃない" と変わっていてキャッチーさ満点。バラードからミニマルな曲まで揃っていて聴きやすい。

99位 『NATURALLY』 清水翔太    (2012年)

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 リリース当時は「マダオワラナイ」のような意欲作や小田和正とのコラボ「君さえいれば」などの変化を意識していたように感じる作品だが、最近ではTikTokで毎年のように踊られるクラシック「冬が終わる前に」の存在感が増している。

98位 『Knee Deep In The Hoopla』 Starship    (1985年)

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 全米1位「We Built This City」「Sara」収録。特に「Sara」は80's王道の泣きのバラードで、何度口ずさんだかわからない。多幸感ある「Nothing's Gonna Stop Us Now」が入った次作『No Protection』も好き。

97位 『THE SIGN』 Ace of Base    (1993年)

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 全米年間1位の表題曲、全英週間1位の「All That She Wants」収録のヒット作。スウェーデンのポップグループは私の肌によく合う(今回は入れられなかったが原田知世『Flowers』など)のだが、このグループはレゲエを取り入れたリズムが楽しい。

96位 『Distance』 宇多田ヒカル    (2001年)

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 あゆと同日発売になった2枚目。今年は『BADモード』が賞賛の嵐だったし、『First Love』辺りは名盤ランキングでも見かけることがあるがこれは少ない。河野圭を中心とし、Rodney JerkinsやJam&Lewisなども参加した打ち込みR&Bはノリやすくポップ。

95位 『Nellyville』 Nelly    (2002年)

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 歌モノ色も強いヒップホップの1枚。全米1位「Hot in Herre」や「Dilemma」を収録。特に「Dilemma」は軽い打ち込みトラックの上で女性シンガーをフィーチャーしたラップナンバーの一つの完成形で、日本の着うた時期に流行したコラボナンバーの源流といえる。

94位 『The Bad Gals』 半熟卵っち    (2022年)

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 既発曲の編集盤。雑誌『egg』所属のモデルによるHIP HOPユニットが歌唱しており、ギャルらしい強気なマインドが現れたリリックに味のあるフローが合っている。ちなみにメンバーにはゆうちゃみもいる。

93位 『CHAMBERS』 Steady&Co.    (2001年)

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 Dragon Ashの降谷建志らの呼び掛けで集まったスペシャルグループの唯一のアルバム。シングル「Stay Gold」「春夏秋冬」はミクスチャーロック寄りなのだが、アルバム全体ではチルな印象。「Only Holy Story」「Pass da Mic」が特に好き。

92位 『さ・え・ら ジャポン』 Pizzicato Five   (2001年)

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 渋谷系関連では一番好きなアルバム。曲ならオザケンの「Buddy」などになるがアルバムのコンセプトはピチカートが一番凝っている。「世界から見た日本」がテーマ。どことなくズレているイメージが漂っているのが楽しい。ブックレットなんかも凝っていて、モノとして持っていたい1枚。

91位 『瞳へ落ちるよレコード』 あいみょん   (2022年)

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 ドラマ主題歌を多く手掛けるようになり知名度を獲得したあいみょんの今年の作品。「愛」をテーマにした作品での歌詞が瑞々しく心に響く。シングル「初恋が泣いている」の個人的ブレイクと共にここで選出。

90~81位

90位 『GAUZE』 Dir en grey   (1999年)

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 メジャーデビュー作。中後期のメタル色を強めていくサウンドとは異なりキャッチーでメロディアスな曲も。全曲にPVがあり、統一された世界観がさらに引き出されている。インディーズ期の『「楓」〜if trans…〜』などもちゃんと再発してほしいところ。

89位 『déjà-vu』 hitomi   (1997年)

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 TKプロデュースの中でも異色だったのがhitomiだ。次作以降は渡辺善太郎がサウンドプロデュースに入り、avex流ポップロックを強めていくがhitomiの声の特徴である「ギリギリの高音」(切なさが演出される)が減ってしまったので過渡期にあたるこの作品を選出。「PRETTY EYES」はhitomi自身へのメッセージと解釈した小記事もぜひ。

88位 『あまちゃん 歌のアルバム』 Various Artists   (2013年)

Buy (配信版はCD版と収録曲が違う)

 大ヒットした連続テレビ小説『あまちゃん』のコンピ版。シングルとしてもヒットした「潮騒のメモリー」を始めとした劇中歌が収録されている。この楽曲の歌詞が劇中で伏線回収されるのも見事だが、地下アイドルや80年代アイドルの空気感を掴んだ作風が見事。

87位 『VISITORS』 佐野元春   (1984年)

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 NY滞在中に制作された佐野の意欲作。「COMPLICATION SHAKEDOWN」に代表されるラップ手法などの先鋭さが評価され私もその方面で知って聴いたがレコードB面の哀愁漂うサウンドも味わい深い。

86位 『残響』 福山雅治   (2009年)

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 10枚目のアルバム。シングルだと断然90年代に好きな曲が多いのだが、アップテンポなシングル「想 -new love new world-」「化身」のような若さを感じさせる作品からアダルティーな魅力あふれる「明日の☆SHOW」「道標」などまで福山の歴史が詰まったようなバランスの良い作品。

85位 『まるりとりゅうが』 まるりとりゅうが   (2021年)

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 男女デュオの初のフルアルバム。ただ実質は活動終了に向けたベスト盤のような性質の作品。ブレイクのきっかけとなった「気まぐれな時雨」から「幸せになって。」など代表曲はほぼ収録。恋愛をテーマにした詞と共にまるりの刺さるような声がマッチしている。

84位 『MIND CRUISIN'』 杏里   (1990年)

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 年間5位を記録したヒット作。シティポップブームで評価の上がっている杏里だがバブル期まではその波が来ていない。ブラック・コンテンポラリー色の強いダンサブルな夏の1枚で気分高揚に最適。早くフォーライフには前作『CIRCUIT of RAINBOW』以降のリマスター版をリリースしてほしい。

83位 『欲望図鑑』 及川光博   (1999年)

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 アイドル・花椿蘭丸や振付師・流星光一郎などの別キャラクターも登場していた頃のミッチーの作品。Princeや岡村ちゃんの影響も残しつつ音楽性が広くなっている。声援が入るなど「コンサート」要素もあり、寸劇も面白い。改めて聴き直してほしい作品だと感じる。

82位 『靖幸』 岡村靖幸   (1989年)

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 岡村靖幸らしさが確立された3枚目。次作『家庭教師』かベストの『早熟』辺りが評価されるがもう既にこの作品で独自性を出しているからこっちも! と思う。さらにクセが強くなった「聖書(バイブル)」や代表曲「だいすき」、自虐の入った「Punch↗」や泣きの「ラブ タンバリン」など収録。

81位 『Viva La Revolution』 Dragon Ash  (1999年)

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 ヒップホップを導入し、タイトル通り「革命」をもたらした3枚目。「Rock the beat」ではGEISHA GIRLSと同じサンプリングネタを使っていてヒップホップの継承を感じさせる。アンセム「Grateful Days」も収録。ヒップホップという音楽ジャンルにおいて評価を避けてはならない作品だろう。

80~71位

80位 『Japanese Singles Collection: Greatest Hits』 Wham!  (2020年)

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 日本でも大人気なイギリスのデュオ・Wham!の2020年のベスト。オリジナルアルバム『Make It Big』辺りも好きだが、如何せん音が悪いものが多いのでこのベストに。意外とバージョン違いの多いこのデュオにとって外せない作品だし(初CD化の曲も)高いポップセンスを楽しめる1枚。

79位 『ZOO FOR SALE』 ZOO  (1993年)

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 久保田利伸もそうだが、宇多田以前の日本でのポップR&Bシーンの評価は低い。ニュージャックスウィングを取り入れ、現在のLDHに連なりダンスミュージックの一派を築いたZOOの初ベストを選出。

78位 『Ja,Zoo』 hide  (1998年)

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 hideの遺作。zilchでの海外進出を含め時代の先をいった男が最後に遺した名曲をまとめた作品。シングル曲など特に明るくて元気になれるはずなのだが同時に涙も浮かんでしまう。「HURRY GO ROUND」のアウトロとか反則だろ……と思う。

77位 『川本真琴』 川本真琴  (1997年)

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 個人的に「天才」と言われればこの人が浮かぶ。取り上げるテーマは「性」や「青春」、「神話」などが多いイメージだが、確かにその描き方は秀逸で瑞々しい。若さ特有の疾走感なんかも出ているし、ギターサウンドも勢いたっぷりで儚さも演出できている。

76位 『Diana』 Diana Ross  (1980年)

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 モータウンの功労者の80年の大ヒット作。ヒップホップのサンプリングも増え、重要度の上がっている(ローリングストーン誌のアルバムランキングにも登場)今作は、Chicによるプロデュース。「I'm Coming Out」はLGBTの文脈からも再評価されている。ディスコのノリが心地よい作品。

75位 『Shadow Dancing』 Andy Gibb  (1978年)

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 Bee GeesのGibb兄弟の弟・Andy Gibbの2枚目。当時『Saturday Night Fever』で大ヒット中だったBee Gees。あのファルセット歌唱もエポックメイキングだと思うが、Andyも多彩な声色で歌い上げていてお見事。全米年間1位の表題曲など、ディスコナンバーを中心にした構成で楽しめる。

74位 『Twelve』 IZ*ONE  (2020年)

Listen (配信は一部曲目が異なる)

 私がK-POPにハマるきっかけとなった作品。独特の「型」のあるK-POP作品の入口として非常に入りやすい1枚となっている。日本でのシングルと韓国でのリード曲を収録したベスト盤的な立ち位置。LE SSERAFIMなど、今のK-POPシーンを考える上でも無視できない作品。

73位 『MIND』 ROUAGE  (1997年)

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 ヴィジュアル系の中でも特に名古屋系は好きで、Laputaと共に好きなバンドがROUAGE。ビブラートの勢いが凄まじいボーカルのKAZUSHIの「美しさ」はもちろん、王道ヴィジュアル系サウンドがクセになる。シングルだと「Queen」が一番好きなのだが、シングルミックスのほうが好きなので収録アルバムの『BIBLE』ではなくこちらを。

72位 『Kylie』 Kylie Minogue  (1988年)

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 KylieとRick Astleyは共にStock Aitken Watermanプロデュースで、私の音楽人生にも大きな影響を与えたアーティスト。このアルバムにはユーロビートにのせたキュートなボーカルととびきり明るいメッセージが満載で、いつ聴いても元気をもらえる。時に哀愁あるメロディーが飛んでくるのも最高。

71位 『HEAVY』 President BPM  (1987年)

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 今回の100枚の中では最も稀少版となるのが今作。近田春夫が手掛けていたヒップホップユニットのコンピ盤で、『建設的』を発表したいとうせいこう、TINNIE PUNXや細野晴臣らが参加している。コンシャスな姿勢がリリックに現れているのにも驚きだが、歌謡曲のサンプリングなども鮮やか。

70~61位

70位 『パピヨン -ボヘミアン・ラプソディ- 』 氷川きよし  (2020年)

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 KIYOSHI名義から時間をかけて、2010年代後半から発表していたポップス路線の歩みをまとめ、新曲も多数収録した作品。自身作詞曲も収録され、「自分らしくあること」を訴えかける近年の作品のきっかけとなった作品。話題になった「限界突破×サバイバー」など収録。

69位 『terzo』 Juice=Juice  (2022年)

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 3枚目。オリジナルメンバーの度重なる卒業と新メンバーの成長を、シングルコレクションとなっている1枚目と全曲新曲の2枚目で楽しめる作品。高い歌唱力はハロプロの中でも随一との評価があり、全員歌唱でない曲もあって様々な角度で味わえる。

68位 『Answer』 當山みれい  (2018年)

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 2枚目のオリジナルアルバムだが、名前の通り「アンサーソング」を軸に作られたコンセプトアルバム。ヒットした「Dear My Boo」「願い〜あの頃のキミへ〜」など、素朴さの中のひたむきさが楽しめる作品。

67位 『BASED ON A TRUE STORY』 ZEEBRA  (2000年)

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 日本におけるヒップホップにおいて、彼の名を避けるわけにはいかない。王道の前作『THE RHYME ANIMAL』、R&B寄りの次作『TOKYO'S FINEST』の中間という音楽性。「ヒップホップをいかに受け入れさせるか」というテーマに挑む彼の思想が垣間見える作品。

66位 『ABBA Gold』 ABBA (1992年)

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  『Voyage』での復活も感動的だったABBA。オリジナルアルバム未収録「Gimme! Gimme! Gimme! (A Man After Midnight)」などを含めパワフルなポップが楽しめる定番のベスト盤を選択。オリジナルアルバムだと『Super Trouper』が一番好き。

65位 『MOTHER』 原由子 (1991年)

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 今年これ以来の最新作がリリースされた原坊の3枚目。原坊は「童話性」のある声を持っていて、サザンでのコーラスなどの存在感も絶妙だが、この作品でも心にそっと寄り添う楽曲群が素晴らしい。「花咲く旅路」みたいなバラードでハマるのはもちろん、「ハートせつなく」「少女時代」のようなアップテンポにもマッチするから凄い。これもリマスター再発を望む。

64位 『ABSOLUTE VALUE』 中谷美紀 (1998年)

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 中谷美紀のフォーライフ期の楽曲をまとめたベスト盤。プロデュースの坂本龍一とはまさにベストマッチだったと感じる。歌モノ期『スウィート・リヴェンジ』『スムーチー』があまりヒットしなかった坂本龍一の「リヴェンジ」ともいえるシンセポップに、透明だがアンニュイで芯のある中谷美紀のボーカルは切なさを描いていた。

63位 『Don't Be Cruel』 Bobby Brown (1988年)

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 ニュージャックスウィングの代表的な名盤。個人的にはこれとMilli Vanilli『Girl You Know It's True』で悩むところだが今回はこちらのみランクイン。独自のダンスステップを確立した代表曲「Every Little Step」など収録。

62位 『Janet Jackson's Rhythm Nation 1814』 Janet Jackson (1989年)

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 こちらもニュージャックスウィング期の作品。Jam&Lewisによるはじけるビートのサウンドがノれる作品。インタールードを含みストーリー性を持たせた作風はまさに安室ちゃんの『SWEET 19 BLUES』の直接の影響元だろう。メッセージ性ある作風ながら「Miss You Much」のキュートな詞も可愛い。

61位 『DROP by DROP』 MIHO (2000年)

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 Steady&Co.プロデュースの、J-R&Bの隠れた名盤。降谷建志の幼馴染で、一時期交際の噂もあったほど。チルなヒップホップサウンドに乗ったアンニュイなボーカルは心にスッと馴染んでくる。シングルの「Life」「OVER」や、降谷建志プロデュースの「Lean On Me」など名曲多数のアルバム。

60~51位

60位 『White Christmas』 Bing Crosby (1955年)

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 永遠のクリスマス・クラシック。表題曲はオリジナルではなく戦後にリテイクされたもの。家族で暖房をつけながらゆったりと暮らすクリスマスには欠かせない1枚で、私も12月1日になったらまずこのアルバムを出してきて聴くように。

59位 『Southern All Stars』 サザンオールスターズ (1990年)

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 活動再開後初のオリジナルアルバム。桑田佳祐ほど歌謡のツボを押さえたアーティストもそういないと思うのだが、それをついてきた絶妙な作品。バラード系が特に光っていて、「さよならベイビー」や人気曲の「YOU」「忘れられた Big Wave」「逢いたくなった時に君はここにいない」などが収録。

58位 『THE GEISHA GIRLS SHOW - 炎の おっさんアワー』 GEISHA GIRLS (1995年)

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 最も勢いのあるお笑い芸人のダウンタウンが坂本龍一プロデュースで出したラップユニットの唯一のアルバム。幅広いジャンルの楽曲とコントが続きざまに流れる「ショー」となっている。歌詞は日常のたわいもないことやローカルネタも多いが「少年」のように泣ける青春ナンバーなども収録。

57位 『SUNNY』 TOWA TEI (2011年)

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 GEISHA GIRLSにも参加していたTOWA TEIの6枚目。PVも含めデザインが洗練されているのがTOWAスタイルで、さらにこのアルバムの前辺りから取り入れられている女性モデルの歌唱参加が固まった作品。高橋幸宏と水原希子が参加した「The Burning Plain」はそれぞれの声質が生かされた名曲。

56位 『J.BOY』 浜田省吾 (1986年)

Buy (配信のものはリミックス版)

 80年代の三部作のうちの一つ、大ヒットした作品。メッセージ性の強い表題曲や代表曲「もうひとつの土曜日」など浜省のパブリックイメージを一般にも定着させた作品。99年リミックス版が現在のマスターとなっており、リリース当時の打ち込み色の強いサウンドが弱まったのが残念でならないので、オリジナルマスターのCDリマスター再発を望むところ。

55位 『Love』 河村隆一 (1997年)

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 男性ソロ最大の売上を誇るメガヒットアルバム。ヴィジュアル系の王道をゆく艶やかで甘い歌声に、セルフカバーを含め美しいメロディーの楽曲が連なる捨て曲なしの名盤。歌詞は時に毒々しいところがまた意外性あって面白い。

54位 『Strawberry Time』 松田聖子 (1987年)

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 個人的には聖子の好きな時期は80年代後半。海外進出を経て作家陣が広まっても(若手など)、明るいボーカルが凛として立っているので統一感が保たれている。特にシングル「Strawberry Time」「Pearl-White Eve」は2枚とも大好きで、前者を収録したこのアルバムも愛聴盤である。TK作曲の「Kimono Beat」もお見事。

53位 『Passion』 大原櫻子 (2020年)

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 ベストアルバム発表を経て、丸谷マナブらを中心に洋楽・ダンス路線に舵を切った作品。当時のファンには賛否両論だったが、大原櫻子の「揺らぎのある高音」を器用に使えているのがこの作品だと感じる。「Shine On Me」「Special Lovers」のようなダンスナンバーから「きらきらきら」のようなバラードも収録されている。現行路線の先駆けを作った作品。

52位 『TODAY IS ANOTHER DAY』 ZARD (1996年)

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 明石昌夫に代わり、葉山たけしがほとんどの曲のアレンジに参加した転機の作品。シングルだと「あなたを感じていたい」「My Baby Grand~ぬくもりが欲しくて~」のようなバラード系が好きで、アルバム全体でいうとこれ。シングル「心を開いて」「マイ フレンド」など4作のほか、セルフカバーも多く間口の広いアルバムと感じる。

51位 『LOVE WARS』 松任谷由実 (1989年)

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 年間1位も獲得したヒット作。シングラヴィアを大胆に使用したいわゆる「バブル期ユーミン」の代表作の1つ。今年のベストアルバム『ユーミン万歳!〜松任谷由実50周年記念ベストアルバム〜』ではこのあたりの曲の大幅リミックスが行われており個人的に残念。シンセの「冷たく無機質な」サウンドだから人間らしいボーカルが引き立つし切なさも生まれるのだが。名曲「Valentine's RADIO」「WANDERERS」「ANNIVERSARY」など収録。

50~41位

50位 『NEW CHAPPIE』 Chappie (1999年)

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 唯一実在していない歌手のアルバム。Chappieというのはキャラクター名で、曲ごとにボーカルが交代している。松本隆作詞、草野正宗作曲の「水中メガネ」が一番有名だろうか。(中にはバレバレの人もいるが)  Chappieという「仮面」を被り各々のボーカルで勝負している。曲のほうはこれまた個性が強く、「誰の音か分かりやすい」90年代の象徴的作品。今回のセレクトではサブカル寄り。

49位 『α』 山本彩 (2019年)

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 NMB48、AKB48などで中心メンバーとして活動したさや姉の卒業後最初のソロアルバム。髪を短く切り変革をアピールした「イチリンソウ」以降の3枚のシングルが収録。「追憶の光」など切ない声に合ったアレンジもされており完成度が高い。休業から復帰し、そろそろ次のアルバムを聴きたい。

48位 『プラチナ 9 DISC』 モーニング娘。 (2009年)

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 パフォーマンスのクオリティが高く、「プラチナ期」として再評価されるきっかけとなった作品。ロッキン1曲目に選ばれた「みかん」や名バラード「雨の降らない星では愛せないだろう?」など、ライブ定番曲も多い。R&B色の強いダンスミュージックが多くて最近個人的な評価も上昇中。

47位 『12 Love Stories』 童子-T (2008年)

Buy (配信では曲目が一部カット)

 ZINGIの頃から長くラッパーとして活動していた童子-Tのヒット作。シンガーをゲストとして迎えたラブソングを集めたコンピ盤で、「もう一度… feat.BENI」「約束の日 feat.青山テルマ」「願い feat.YU-A」などのアンセムを多数収録。DISも多かったけど90年代から彼はあゆと組んでラップ曲作っているし元々「彼のリアル」だと知っておかねばならない。

46位 『No Way Out』 Puff Daddy (1997年)

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 東海岸の主役・Bad Boyの親玉であるPuff Daddyの1st。ヒップホップの面白さをサンプリングで知った私としては、このアルバムは宝箱のよう。「I'll Be Missing You」を聴いた時の衝撃は大きかったし。ちなみにビギーの『Life After Death』と近い時期にリリースされ、そちらにも「大ネタ使い」のヒットシングルが収録されている。

45位 『private』 広末涼子 (1999年)

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 90年代~00年代は女優によるアルバムが数々リリースされた。3Mに内田有紀に深キョンなど、有名アーティストに曲提供してもらうパターンが多かったが、広末もそうだった。シングル提供は竹内まりや→岡本真夜→原由子→広瀬香美…と超豪華。元気なポップで藤井丈司がほとんどアレンジをしていた1stに比べ大人びた作風が多く、参加者も多い。これがもっと売れていたらベスト盤収録の新曲となった名曲「真冬の星座たちに守られて」がシングルとして出たのかもと思うと残念。シングルでは「明日へ」が特に好き。

44位 『Starting Over』 SPEED (1997年)

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 伝説の4人組ガールズグループの1st。NewJeansなどの登場でSPEEDを想起した人もいたようだけど、実はメンバーはTLCなどを聴いていてR&Bに親和性があった。今後は『Carry On My Way』の評価が上がることもあるかもしれないが、パワフルなボーカルに驚かされるこの作品をまずは。

43位 『VALENTI』 BoA (2003年)

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 BoAの功績は大きい。10代のうちに異国の日本語をマスターし日本語で歌ってJ-POPの秩序の中で売れ、後進への道を築いたこと。表題曲の印象が強いが、日本語で歌えるが時に発音の甘いポイントをフレーズに入れるなどの技巧もお見事。そしてS.E.S以降のR&B路線を継承しているのもポイント(売れなかったがS.E.S『REACH OUT』も名盤)。

42位 『Chicago 17』 Chicago (1984年)

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 Peter Ceteraボーカル期の最後のアルバム。この出来に満足してCeteraはソロ活動へと進むことになるが「You're the Inspiration」などを聴いているとそれも納得せざるを得ない完璧さ。転調の畳み掛けなど絶品。この後も「Look Away」筆頭に好きなシングルはあるがアルバムだとこれ。

41位 『True Blue』 Madonna (1986年)

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 Madonnaで最も売れたアルバム。全編ほぼノリの良いダンスポップだが、特にシングルで幅が出ていて面白い。サビがジワジワ盛り上がるところが特に好きな「Open Your Heart」、ラテン調の「La Isla Bonita」、社会問題に一石を投じた「Papa Don't Preach」など知名度の高い曲も多く聴きやすい。

40~31位

40位 『Greatest Hits』 2Pac (1998年)

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 東西の争いの中心にした伝説のラッパー・2Pacの死後に出た初のベスト盤。オリジナルアルバムだと『Me Against the World』が好きだが、やはり泣けるメッセージソングの「Changes」やヒット曲が満載のこの作品を一番よく聴いていることもあって選出。

39位 『Hide'n' Seek』 中山美穂 (1989年)

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 80年代後半のアイドル四天王は、それぞれサウンド面で違いがあったのが音楽的にも面白いが、ミポリンは角松敏生・CINDYの系譜からダンスポップ路線へと移行し、90年代頭頃までその傾向が続く。杏里節炸裂のシングル「Virgin Eyes」など、80年代後半の女性シンガーソングライターのサウンドに通じる作風が印象的。ノンストップな感じも良い。

38位 『LOVE GOES ON...』 DREAMS COME TRUE (1989年)

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 ブレイク作となった2枚目。「うれしい!たのしい!大好き!」で始まり「未来予想図Ⅱ」で終わる豪華さ(特に「うれしい…」はこちらのバージョンが馴染み過ぎている)。吉田美和による自信のある女性像も印象的で、「BIG MOUTHの逆襲」など正にそう。アルバムとしてのリマスター再発がされておらず、80年代の音というのが残念なところ。

37位 『②ペイント イット ゴールド』 後藤真希 (2004年)

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 今の音楽界に足りないボーカリストの成分は「声の艶」であろう。そういう意味でごっちんは欠かせなかった。「スクランブル」のサビの "だ、いーっれんあい"、「LOVE。BELIEVE IT」の "えいえんにーっ" などに顕著な艶が声に深みをもたらす。ライブ定番の「涙の星」も含め、シングルではこの後に取り組むバラードがこのアルバムの価値を高めている。

36位 『Every Best Single +3』 Every Little Thing (1999年)

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 avexの新機軸の成功がELTだ。特に2nd『Time To Destination』は300万枚以上売れ、この後のavexシーンの手本になっていくわけだが売れすぎてメンバーの疲労もあり実現したベスト盤。もっちーの歌声の変遷が特に21世紀以降激しいのは有名だが、実はこの段階でも少し確認できる。ただ全体として「冷たく感じるまっすぐな」ボーカルでそこがまた儚さを出すんだよな。

35位 『GIRL TO LOVE』 KAN (1988年)

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 コンサートにも何度か行ったことのあるKANからは3枚目のアルバムをセレクト。近年の多彩なジャンルを網羅した作品群も素晴らしいが、ラブソングを取りそろえたこの作品で生き生きしているのが伝わる。シングル曲以外ではドラマチックな展開がお見事な「君はうるさい」が絶品。

34位 『LOVEppears』 浜崎あゆみ (1999年)

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 「白アユ」である。同年に出した『A Song for ××』が大ヒット、シングルもスマッシュヒットを連発する中でリリースされた2枚目。初々しかったボーカルもこの頃になると程良い艶が生まれ、闇のある歌詞の世界の説得力を増していた。『A BEST』も印象的だが収録曲の塩梅でこちらを選出。後期では小室哲哉プロデュースの『Love Songs』も名盤。

33位 『BOØWY』 BOØWY (1985年)

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 伝説のロックバンド・BOØWYのブレイク作。ビート・ロックスタイルを確立させ、私のロックの好みを決めた作品ともいえる。定番曲「Dreamin'」から最後のシングルとしても後に選ばれる「CLOUDY HEART」、シングル曲など口ずさみやすく胸に響くロックチューンが満載な1枚。

32位 『Bon Appetit!』 竹内まりや (2001年)

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 ZARDの坂井泉水と並んで、日本のヒーリングボイスの筆頭に来るのはこの人。80年代以降の作品に特に好きなものが多いが、一番はこれ。作品ごとの変化でいえば、よりターゲットの広い作品になってきているというところか。木村拓哉、広末涼子と何かと縁のある作品でもある。

31位 『Pure』 PAMELAH (1996年)

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 ビーイングの王道ロックとダンスポップを混合させた音楽性のPAMELAHの中でも特にポップなのが今作。1曲目の「BABY BABY」から2曲目の「忘却の彼方」の流れですでに心掴まれる。シングル曲を経た後半も聴きやすさは変わらない。そしてボーカルの水原由貴の歌詞もポップに合わせたキラキラな歌詞……ではなくて結構パンチの強い歌詞。この両面性も魅力。

30~21位

30位 『A Song For You』 The Carpenters (1972年)

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 既にヒットを連発し実績のあったThe Carpentersがリリースした72年の作品。日本では「Top of the World」が有名だが、他にも表題曲、「Hurting Each Other」、「It's Going to Take Some Time」などカバー曲でも選曲・アレンジのテクニックの高さを見せた。特に「Hurting Each Other」など、じわじわ心に沁みるように感じる。カレンのボーカルは本当に耳に馴染む。

29位 『An Innocent Man』 Billy Joel (1983年)

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 オールディーズのブラックミュージックからの影響が大きいヒット作。ベストをよく聴いて育ったがこちらを選出。「Tell Her About It」「Uptown Girl」「An Innocent Man」「The Longest Time」などラブストーリーのシングルは歌詞も美しいしメロディーもキャッチー。特に「Uptown Girl」は全部サビといえる恐ろしいポップチューン。

28位 『delicious way』 倉木麻衣 (2000年)

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 断然倉木派。独自の髪型も今や懐かし。今は和服のイメージも強いけどこの頃はアメリカ留学経験もあるという洋楽イメージだった。Cybersoundによるアレンジは一貫して無機質なビートによる「冷たいシンセ」の音であり、柔らかみのある詞曲やウィスパーボイスとうまく調和したJ-R&Bの名盤となった。この次のシングル「Simply Wonderful」が大好きでもう少しこの辺りの路線を聴きたかった。

27位 『GOLD SUN AND SILVER MOON』 SHAZNA (1998年)

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 ヴィジュアル系四天王、SHAZNAのメジャーデビュー作。評論的な意味での名盤ランキングでも入れるべき意義の大きな作品。IZAMの女装を中心としたビジュアルや恋愛をテーマにした歌詞、ピンクというイメージからマイナス面も生んだが、IZAMのボーカルはこの歌詞にぴったりだし、このアルバムを聴けばニューウェイブを含んだロック色が十分に感じられる。

26位 『Tommy february6』 Tommy february6 (2002年)

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 the brilliant greenの川瀬智子のソロプロジェクトの1st。UKロック色の強いバンドとは180度異なる音楽性(しかも音楽制作は同じ奥田俊作)を提示してヒット。80sユーロビート直球でもオリジナリティを獲得したのはボーカルスタイルがユーロビートでよくあるソウルフル寄りではなかったこともあるかもしれない。ノリの良い作品で、自作『Tommy airline』と共にコンセプトの作りこみも凄い(学校の部活という設定)。

25位 『Daydream』 Mariah Carey (1995年)

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 日本でも大ヒットしたアルバム、95年の作品。本格的にヒップホップに接近した作品で収録シングルの「Fantasy」はTom Tom Clubのサンプリングやラッパーをフィーチャーしたリミックス版の制作などで評価が上がっている。全体としては落ち着いたテンポの作品で、「Always Be My Baby」「Long Ago」なども好き。

24位 『Digitalian is eating breakfast』 小室哲哉 (1989年)

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 TK初のボーカルソロアルバム。TMの関連から木根尚登、松本孝弘、小室みつ子らも参加している。シンクラヴィアを使い、90年代のプロデュース業の足掛かりとなった作品といえる。アルバム曲だと「HURRAY FOR WORKING LOVERS」が、シングルだと「GRAVITY OF LOVE」が好き。

23位 『BRILLIANT』 hiro (2001年)

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 SPEEDを経てリリースしたソロ1枚目。avex・沖縄色の2枚目もなかなか好きだが、PV集『BRILLIANT ON FILMS』をよく見ていたこともあってかなり馴染みの作品。R&B色の抑えめのアレンジにhiroのハネたボーカルがよく合っている。葉山曲も良いスパイスで良いバランスの作品。

22位 『氷』 宇徳敬子 (1996年)

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 私のハンドルネームの由来でもある宇徳敬子の2枚目アルバム。自身が作曲もやりだしてアップテンポな曲が増え、ヒーリングボイスにマッチしてさらに説得力を増した作品。瀬戸朝香に提供した「この情熱はダイヤモンド」のセルフカバーも素晴らしい。シンプルなアレンジが多いがバンドサウンドも何曲かある。

21位 『Ring』 加藤ミリヤ (2009年)

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 「大ネタ」使いのサンプリング曲を多く発表するなどヒップホップとの親和性が高い一方で同世代の女の子の声を代弁するような立ち位置だったミリヤが後者への支持をさらに獲得したヒット作。清水翔太とのデュエット、名曲「Aitai」や「SAYONARAベイベー」などパブリックイメージを作り上げた代表作。「20 -CRY-」などのような叫ぶような情熱的な歌い方も印象的。

20~11位

20位 『RUN TO THE FUTURE』 Dream5 (2010年)

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 2009年度『天才てれびくんMAX』内オーディションで結成された5人組の初ミニアルバム。深く太いボーカルの重本ことりと明るいボーカルの日比美思のツインはバランスが良く、m.c.A・Tや中西圭三、伊秩弘将、塚田良平の豪華な作曲陣のポップスを歌いこなしていた。前年度に番組内で発表された「ひまわり」のカバーも絶品。

19位 『回帰線』 尾崎豊 (1985年)

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 名盤ランキングでは1枚目『十七歳の地図』がよく登場するが、個人的にはこちらがかなり好き。「Scrambling Rock 'n' Roll」「卒業」のように激しい尾崎の姿があれば、「ダンスホール」「シェリー」のように優しく儚い尾崎の姿もありバランスがとれている。特に好きなのは「シェリー」と「Scrap Alley」。

18位 『REFLEX』 SANDAL TELEPHONE (2022年)

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 戦国時代となっている女性アイドルの中でも「楽曲が良い」と評価されるアイドルはいるが、SANDAL TELEPHONEは格別。インストアルバムやリミックスアルバムも出すなど楽曲への拘りも強い。前作『Step By Step』でも見られたが(こちらも名盤!)多彩なダンスミュージックに小町まい、夏芽ナツ、藤井エリカの良いバランスのボーカルが絡んでいる。特に小町の艶は一際目立つので、詞の解釈が増えて楽しめる名盤。

17位 『FAKIN' POP』 平井堅 (2008年)

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 R&B期を経て、多彩なジャンルを収録し「ポップ・アルバム」として完成された1枚。パブリックイメージのバラードだけでなくアップテンポなナンバーも多い。近年の作品では自身の声を生かした抑えめのアレンジが多いがその幅も広く楽しめる一枚。

16位 『増殖』 Yellow Magic Orchestra (1980年)

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 スネークマン・ショーのコントをフィーチャーした異色作。スネークマン・ショーがメインで活動していたラジオ番組を模した作りになっていて、コントと曲が交互に流れてくる。コントでは「若い山彦」が特に好きで、YMOが推されるくだりには爆笑。世界を意識した作品らしく「日本」が覗いているのも特徴。

15位 『denim-ed soul 2』 EAST END x YURI (1995年)

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 デビューから「DA.YO.NE」「MAICCA〜まいっか」が連続ミリオンヒットという初の記録を樹立し、ヒップホップ界だけでなくJ-POP界でも旋風を巻き起こしたメジャーデビューアルバム。パーソナルな面や若者のリアリティを記したリリックは、男女共にラップをすることで描ける情景が広がって深みが出ている。ラップの広まりを実感したリリックの「denim-ed soul」は当時の空気感がよく出ている。

14位 『古今東西』 森高千里 (1990年)

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 J-POPの歌詞の概念を変えたといわれる森高。ユーロビートにのせてインパクトある詞を発表した初期、自身で楽器をたたきシンガーソングライターとしての道を歩んだ中後期。『非実力派宣言』の方が批評的には重要だが、ジャケットにある江戸時代の物語やマイク位置の小ネタなど飛び道具の多い作品。歌詞もぶっ飛ぶものが多いが「雨」「この街」などのスタンダードも収録されておりニクい名盤。

13位 『GRAVITY』 Kiss Destination (1999年)

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 小室哲哉と吉田麻美のR&Bデュオのメジャーデビューアルバム。アメリカに渡って音作りをし、本場のミュージシャンに評価されたヒップホップ色の強い『TRUE KiSS DESTiNATiON』もJ-R&Bに寄った次作『AMARETTO』も名盤だが、麻美のメロウな歌声と凝ったサウンド・ヒーリング性も兼ね備えた今作をセレクト。何度も録り直される「ViCTiM」も収録。

12位 『ファーストKISS』 松浦亜弥 (2002年)

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 アイドルのアルバムとして最も完璧なのがこの作品だと思う。あややとつんくの二人三脚で作り上げた、全くスキのない49分。シングル曲はもちろん、「オシャレ!」など今なお後輩に歌い継がれるライブ定番曲の数々が収録。等身大だけどどこか大人びた女の子の姿がたっぷり詰まっている。卒業曲の「笑顔に涙〜THANK YOU! DEAR MY FRIENDS〜」ではやっぱり泣く。

11位 『ASTROMANTIC』 m-flo (2004年)

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 m-floほど、各アルバムで聴いて楽しめるアーティストはいない。インタールードで世界観が提示され、その世界は「未来」「宇宙」と大がかり(今回は「ASTROMANTICなレディー・ジェントルマンとは」)。しかも同じSEやナレーターが複数作に亘って使用されるなどの徹底ぶり(『KYO』CDでの隠しメッセージには感動)。LISAボーカル期も素晴らしいが、「loves」というコラボの概念を創造したことと音の楽しみを改めて感じられるこれを選出。

10~1位

10位 『merveilles』 MALICE MIZER (1998年)

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 最も徹底されたヴィジュアル系、それがマリスである。中世貴族を意識したヴィジュアルと立ち居振る舞い、神秘的なサウンドと甘美なボーカル。随所で聴こえるストリングスもまた世界観の荘厳さを強めている。その中でデジタルサウンドも導入するなど意外性もあり、唯一無二の作品。ファルセットを使うことすらも必然性がある計算ずくのボーカルも味わい深い。

9位 『mihimalife』 mihimaru GT (2005年)

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「HIP POP」を掲げたポップラップデュオのセカンド。hirokoのボーカルが定まった時期で、明朗なだけでなくバラードで切なく映える声質が引き出せている。ICEの宮内和之がアレンジに参加した遠距離恋愛を歌った「Love is…」、結婚行進曲をサンプリングした「YES」などは感涙もの。「emotion」のようなアップテンポの楽曲でも声色の使い方が切ない。売れてからの作品だと『mihimalogy』が好き。

8位 『break the rules』 安室奈美恵 (2000年)

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 TKプロデュースで10代のカリスマになり、離脱後はR&Bプロジェクトに取り組み再び世間に注目され、押しも押されぬトップスターの地位を確固たるものにして引退した安室ちゃん。振り返られることの少ない(『Finally』でもスルーまみれ)5枚目、Dallas AustinとTKの2人がプロデュースした作品。TKプロデュース期の特徴だった力強いボーカルに加え、「no more tears」のような抑えた歌唱もマスターし、後のR&B路線への足掛かりに。Dallas曲が和のテイストの印象を受けるのも面白い。TK曲もアップロードしつつ色が色濃く出ているのが楽しめる。あとは「HimAWArI」が最高。

7位 『今はまだ人生を語らず』 よしだたくろう (1974年)

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 音楽批評の中で過小評価されがちなのが拓郎だ。日本にアルバム文化を根付かせた『元気です。』やライブアルバムの名作『LIVE'73』、そして長らくの封印から解き放たれた今作など名作に溢れているのに。封印の原因だった「ペニーレインでバーボン」は社会派の色もあるが酒をテーマにしたフォークロックだし「人生を語らず」の熱唱は胸を打つ。ヒットシングル「シンシア」や森進一への提供曲「襟裳岬」のセルフカバーも収録。

6位 『むらさき。』 ともさかりえ (1999年)

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 広末涼子『private』と並ぶ女優アルバムの最高峰。その艶のある低音めな声が非常に好き。スウェディッシュな1枚目『un』も、架空のラジオ番組を模したさかともえり名義の『さかさま』も名盤だがこのアルバムもかなりの名盤。女性作曲家による楽曲をしっとりと、でも退屈にならないテンポで歌っている。楽曲の個性もあるんだけどともさかのボーカルパワーでまとまっている作品。「カプチーノ」は椎名林檎の中でも最も良い曲と思う。「愛しい時」「パールグレイ・スノーダンス」が特にお気に入り。

5位 『NHK天才てれびくんMAX MTK the 14th』 てれび戦士2009
(2010年)

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 NHK『天才てれびくん』シリーズの音楽コーナー「MTK」を年度ごとにまとめたCDの2009年度版。塚田良平が音楽を手掛け、戦士たちの真っ直ぐなボーカルを引き出すストレートな曲作りはお見事。全員歌唱の「夢のチカラ」はハーモニーも相まって感動の1曲。この年の公開演劇内のセリフ「歌には希望の力が宿っている」ことを体現した作品。沖縄音階からR&B、ダンスチューンからミュージカルなど多彩な楽曲が楽しめる。

4位 『AWAKE』 WANDS (1999年)

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 ボーカルが2代目・和久二郎に代わっての唯一のアルバム。ミリオンヒットを連発していたボーカルの上杉昇は徐々に音楽性をグランジに寄せ、WANDSの楽曲もダンサブルなポップロックから変化していた矢先に脱退。WANDSらしい王道のポップロックが展開されている隠れた名盤だ。WANDSに最も長い期間在籍している木村真也のソングライティングの素晴らしさが堪能できる。上杉期なら『Little Bit…』が好き。上原大史も低音ボーカルが素晴らしいので今後の活動が楽しみ。

3位 『evergreen』 MY LITTLE LOVER (1995年)

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 名盤ランキングにこれが入っていないと心配になる。それくらい「最強」のアルバムがこれ。タイトル通り時が経っても愛され続けるポップスが連発の1枚。カバーされ続ける「Hello, Again 〜昔からある場所〜」も収録。akkoの「少年性」のあるボーカルも作品解釈の幅を広げてくれて、リスナーの少年期を想起させるものだと感じる。張り上げる箇所の切なさも完璧だし。特に好きな曲は「Free」「Man&Woman」。

2位 『BEYOOOOO2NDS』 BEYOOOOONDS (2022年)

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 デビュー年以来3年ぶりの2枚目アルバム。一言で言うと「令和のサージェント・ペパーズ」。デビューシングル「眼鏡の男の子」の世界観が通底し、役として歌唱している側面が強かった前作『BEYOOOOOND₁St』とは異なり、役の中の人間に加えて演者としての顔も強く覗かせている。元々「演劇」が重要なコンセプトとなっているため、歌やダンスのクオリティは当然として寸劇も素晴らしい。また12人個々のボーカルなどの役割分担がしっかりなされているのもお見事。詳しいレビューはこちらでも。

1位 『globe』 globe (1996年)

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 10000DAYSを迎えたglobeの1枚目アルバムが1位。ピアノ「GIVE YOU」から一気にデビュー曲「Feel Like dance」に流れ込み、アルバム曲もシングル曲も途切れることなく聴かせる。特に「SWEET PAIN」は、ポップスとして「明るさ」と「切なさ」を共存させた完璧な曲だと感じる。最大ヒット曲の「DEPARTURES」が浮くことなくバランスも取れているし、最後の「LIGHTS OUT」まで全くスキがない。歌詞は「Feel Like dance」「Regret of the Day」「Precious Memories」などに顕著だが少し大人が主人公で、煌びやかな世界の端にある暗さが描かれている印象。セールス面では2週目の売上が100万枚を超すという宇多田ヒカル『First Love』もやっていない記録を持つなど400万枚を突破しているが、それも納得の完成度。他の作品だと『Relation』『Lights』『LEVEL 4』辺りを選びたいところ。レビューはこちらでも。


 以上です。別の記事にてこのランキングの解説版をお届けしますので、そちらもお楽しみに。


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