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商社に入社し、海外MBAに行った日本人が、アフリカで活躍するベンチャーキャピタリストになるまで

こんにちは、アフリカのスタートアップ企業に投資を行うKepple Africa Ventures(ケップルアフリカベンチャーズ)の広報担当です。以前、日本のVCがアフリカで最もアクティブなVCになった理由について書きましたが、 今回はその続編として、西・北アフリカ投資担当の品田と東アフリカ投資担当の山脇が、Kepple Africa Venturesの投資スタイルにも影響を与えている商社とMBA時代を振り返ります。(下記の記事をお読みでない方は、下記も併せてご覧下さい。)

投資担当の二人(品田・山脇)は、偶然にも多くの共通点があります。新卒で総合商社に入社し、海外MBAを経て、現職のアフリカでのVC。そこで今回は、これまでの商社とMBAのキャリアを振り返ると共に、商社・MBAを経たからこそ、現在VCを行う上でどういった要素が活きているのかについて迫ります。是非、最後までご覧下さい。

それでは、商社に入った理由と商社でどのような仕事をしていたのかを教えてもらえますか?

品田:東大を0日で休学してアフリカに行く程アフリカに関心があった私は、ビジネスを通じて「お金を稼ぐ」という共通目標によってこそ、アフリカ人と対等な立場で一緒に汗を流して働くことができると考えていました。そこで、当時、商社の中でも最もアフリカに力を入れると宣言していた商社に入りました。入社後2年半で、同期の中で最も早い駐在員として、ナイジェリアに赴任しました。西アフリカにおける新規ビジネス開発担当として計4年半駐在し、当時サブサハラアフリカで初めての海水淡水化案件をゼロから立上げて、140億円規模のプロジェクトを実現しました。

山脇: 私は、学生時代にボツワナで大使館を作った経験とケニアへの渡航経験から「自分でアフリカで起業してみたい、現地でビジネスを作ってみたい」と思い、商社に入ることにしました。商社であれば、現地でジョイントベンチャーを作ったり、アフリカに関わる仕事が出来そうだと思ったからです。実際商社に入って、アフリカ関連の仕事はたくさんできました。貿易分野では、ブルキナファソやコートジボワールのマンガンを輸入し、投資分野では、ブルキナファソの鉱山の開発プロジェクトに参画し、最終的にはプロジェクトリーダーとして携わりました。商社時代を振り返ると、アフリカ冥利につきる感じでしたね。

MBAへ行った転機は何だったのでしょうか?

品田:インフラはどでかいプロジェクトですので、例えば一つのプロジェクトに対して、開発から投資まで3年半、建設に2年、そこからオペレーションが20年、といった具合でプロセスが長いんですね。ビジネスの進め方と仕組みはほぼ出来上がっているうえ、現地政府と共同で事業を行うので、非効率な部分も多い。

そんな中、2014年頃にこれまでアフリカから頭脳流出していた人々が、自分の祖国に戻ってきて起業する動きが加速し始めていました。彼らは大きなビジョンを持って、テクノロジーと自国の市場を結び付け、新しいビジネス・新しい仕組みを創っており、私がそれまで取り組んできたインフラ事業とは対照的でした。彼らこそが、新しいアフリカの未来を創る新しい世代であると直感しました。彼らの多くは、欧米のトップスクールでMBAを取っており、自分もこの人たちと同じコミュニティに入り、一緒に取り組んだほうが面白い。そう思ってハーバード・ビジネス・スクール(以降、HBS)に行きました。

山脇:私は、自分で起業することを視野に入れていたので、アメリカのカリフォルニア大学バークレー校のMBA、Haasに行きました。経営全般を学ぶため、また起業した際の資金調達のコネクションを作ろうと思っていたので、ビジネススクールは、起業の準備期間として使いました。

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お二人はMBA在学時から、現在のVCのキャリアは考えていたのですか?

品田:もともとスタートアップ投資か起業をしたいと考えていました。HBS在学中にナイジェリアのVCで働き、そこでアフリカのスタートアップエコシステムの課題が見えてきました。アフリカでは、シードとレイタ―の分断が深い。シードの投資家は、かなりローカルのVCか、リモートでソーシャル色の強い欧米のVCがいますが、現地に根を張りながら次のファンドレイズも視野にいれつつ、アンカーになって投資ができるVCが本当に少ない。そのため、良いスタートアップでも、なかなか次のステージに進めない。

自分がシードVCとしてその役割を果たし、かつ、アフリカのスタートアップには足りないブランドやネットワークを持ち、オペレーションに強い日本企業を繋ぎこむことができれば、エコシステムに対して大きなインパクトをもたらせるだろうと思いました。

1人でファンドレイズに向けて動きはじめ苦労していた時に、私と同じくアフリカに関心のあるMBA仲間であり、ケニアで既に投資を開始していた山脇とキャッチアップしたところ、一緒にやろうと意気投合し、今に至ります。

なるほど、先に山脇さんがVCをはじめられていたんですね。山脇さんは、起業するためにMBAに行ったとのことでしたが、なぜそこからVCになったのでしょう?

山脇:MBA在学中は、起業スクールとして使っていたので、実際に夏休みにケニアにいって仮説を検証する等していました。その結果として、CrediationというFintechスタートアップを立ち上げました。その後自分の会社のエンジェル投資家を探していて、神先(Kepple創業者・Kepple Africa Venturesの現ジェネラル・パートナー)に会ったのですが、「アフリカでスタートアップ投資を一緒にしないか?」と逆に誘われて。それで、CrediationのCEOを務める傍ら、Kepple Africa VenturesのGPも務めています。

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(左から神先、山脇、品田)

お二人の話を聞いていると、最初からVCになりたかったというよりも、アフリカを追い続けていたら、結局VCになったんですね。

山脇:そうですね、私も品田も大学時代からずっとアフリカを貫いてきていて。アフリカに住んでいたこともあるし、アフリカ関連の仕事を長くやっていたので、2人あわせたら合計30年ぐらいアフリカ歴があって。

VCをやりたい人が「アフリカ面白そう」とやっているのではなく、アフリカをずっと追いかけ続けた結果VCが立ち現れたので、今VCをやっている形です。商社とMBAは私たちのキャリアにとって重要なパーツではありましたが、狙っていたのではなく、偶然、点と点が繋がった感覚です

品田:本来、アフリカでVCとして0からやろうとすると、長い道のりであるはず。ですが、インターネットや携帯電話が普及する前からアフリカに通い始め、商社では実際にアフリカで事業を作り、MBAに行ったことで、「アフリカ市場への理解と経験」「現地と米国のネットワーク」「VCというアプローチ」「日本の株式会社ケップル」この4つがきれいに結びついた。その結果、立上げから2年足らずでアフリカで最もアクティブなVCになれたのだと思います。日本人のキャリア形成という観点からも、面白い事例を提供できているのではないでしょうか。

商社の経験が現在のVCに活きていることは何かありますか?

品田:私と山脇さんって「つなぎ上手」なんですよ。様々なネットーワークを使いながら、右から左に繋ぐのが得意で。自分自身に答えがなくても、「この人に聞いてみたら?」というパスを回すのが、絶妙だったりする。これは、商社時代の経験が活きていると思います。

商社は、インテグレーターであると思っていて。メーカーだろうが、エンジニアリング会社だろうが、金融機関だろうが、一つの事業を作り上げるために、様々な立場の人・組織を巻き込んで形にしていく。日本企業特有の社内稟議のプロセスも含めて、一番ややこしくてめんどくさいプロセスまで知っているからこそ、各社の考え方もよく分かるし、ボタンの押し方もよく分かる。

山脇:オープンイノベーションを行う上でも、僕らは強い場所にいますよね。オープンイノベーションを第一の目的に掲げてはいなくとも、要請があれば上手く料理できる。それは、商社時代の経験から、相手の考え方を理解したり、いろんな人を巻き込んだことがあるからですね。

MBAにいったことによる強みはありますか?

品田:シリコンバレーとアフリカの間で、お金・人・知識がいったりきたりする中で、日本人としてその流れに入っている人がいない。その流れに入れたら、日本人でも圧倒的な存在になると思い、私はMBAに行きました。ですので、実際にMBAに行ったことでアフリカとシリコンバレーの間を行き来するコミュニティの一員となり、そこに日本の資金や日本企業をつなぐことで、日本、アメリカ、アフリカのトライアングルを持てるようになったのは強みですね。

また、VCとしてスタートアップに投資する際にも、MBA時代の人脈は生きています。例えば、投資しようと思っていたスタートアップにHBSのクラスメートも投資していたり、HBSのコミュニティ内で良い案件が回ってくることもあります。ユニークなネットワークを持ちながら投資できるのは、日本のVCとしても、強みになっていると思います。

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Talamus Health社CEOのDr. Muri Raifu氏と。品田とはハーバード・ビジネス・スクール在学時からの知り合い)

山脇:おっしゃる通りですね。また、MBAでは、目の前に色々な会社を起業している人がいたので、起業が非常に身近な感覚になりました。うまくいっている会社の人達がどういう雰囲気なのかを実感できるので、感覚値として非常によかったです。知識面では、ファストトラックで色々学ぶことができるので、圧縮して、VCの入門・基礎編を勉強できたのは非常に活きています。VC経験がなかったにもかかわらず、いきなりVCをできたのは、MBAのおかげですね。

ありがとうございます。最後に一言ありますか?

品田:これまでの話をまとめると、商社の経験を通じて、アフリカと日本企業を繋ぐ上で必要な日本企業の考え方とか視点を得る事ができ、MBAの経験から、人・お金・ネットワークの点で、日本・アメリカ・アフリカのトライアングルを持つことができました。さらに、今、私たちは実際に現地で根をはり、ナイジェリア・ケニアに住んで投資をして、アフリカの起業家の視点も分かっていて。

山脇:商社、MBA、VC。この3つのキャリアと、それに伴った社会的信用がミルフィーユみたいに積み重なった結果として、今の状況があるんだろうなと思っています。

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