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「私の奴隷になりなさい」レビュー

公式動画

私の奴隷になりなさい - Wikipedia

公開

2012年

監督

亀井亨

キャスト

壇蜜 - 香奈
真山明大 - 僕
板尾創路 - 先生

感想

名前だけは知っていて、サブスクで見つけたので暇つぶしに視聴。
個人的にそっち系の映画は興味なく、文学ではサドと他少しぐらいしか読んだことなく、団鬼六もあんまり興味ない。
まあつまんなかったりグロかったらやめとこと思って観たら非常に面白かった。
文学でいうとサドというよりはピエール・モリオンの「閉ざされた城の中で語る英吉利人」に雰囲気が近い気がした。

チャラい新入社員の「僕」は、やたら妖艶な先輩社員の香奈(壇蜜)にウザ絡みし、軽蔑されるも、なぜか突然ホテルに誘われ、そこからのめり込んでしまい、やがて香奈がご主人様(板尾創路)の奴○であり、「僕」の相手をすることを命令されていたと知る。
プロットが秀逸でサクサクと進んで行き、登場人物も極端に少ないのですぐに世界観に入り込める。
描写はどぎついが、作品自体が各人物の精神を描くことにフォーカスしているため、精神を理解するための装置としか見えなかった。
とはいえめちゃくちゃそういうシーンが出てくるので視聴場所は選んだ方がいい。

本作の主題は精神の交わり。
アブノーマルプレイを通して人間と人間がどのように精神を交わらせ、逆説的に安心を求め、獲得し、より高次の自我を形成していくのかを描いている。
なのでただ単に相手を痛めつけたり、暴力で服従させるといった描写は皆無。
そういったものがあれば観るのをやめていただろう。

本作の見所はなんといってもキャストのハマり具合。
「僕」役の真山明大はいかにもチャラ造な感じ。
壇蜜は一見気が強そうに見えながら、実は精神は空虚で、それを満たしてくれる誰かを探しているという印象がよく出ている。
そして、過激なプレイの数々を演じきっており、偉そうに言うと見直した。
そもそも壇蜜ってアダルト女優ではなくれっきとした芸能人だし、アダルトな雰囲気もキャラのはずだが、ここまでM嬢役を演じきるとは恐れ入った。

そして極めつけは板尾創路の怪演。
謎の迫力で壇蜜に命令し、調教し、「僕」に説教をする様子はもはや”本物”にしか見えず、一切ボケていないのにめちゃくちゃ笑ってしまった。
個人的には、常に「○○しなさい」と丁寧に命令しているところがツボだった。

ラストは板尾が去り、「僕」と香奈が残って関係性がひとつ変化して終了。
板尾が香奈を解き放った理由は、めくるめくエロスと究極にまで高められた関係性の奥に隠されたまま。
意外なほど文学的な映画で驚いた。
日本の陰の部分を丹念に描写した秀逸なJapanese Hentai Movieであった。

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