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10数年前の個人出版界隈の空気を思い出して書いてみる

僕は10年ほど前、電子書籍の個人出版をはじめました。
それについてはこちらから。

意外と反応がよかったので、電子個人出版草創期のアマチュア作家界隈の空気感を思い出して書いてみたいと思います。

早々と個人出版に食いついた人たち

当時(2012年、13年頃)、まだ電子書籍が今ほど当たり前に普及していない時代に早々と個人出版に食いついたのは、公募に疲れた人たちでした。
僕は1作だけ出したものの、そのまどろっこしさにイライラし、サービスが開始されたばかりの電子書籍個人出版(KDP)に飛びつきました。
当時はプロで個人出版する人は皆無だったと思われます(一部漫画家の方がやってたかも)。
ビジネス書や自己啓発系の個人出版はわりと早くから出ていた気がします。
小説では有名賞最終選考まで残ったみたいな人もいたような……

空気

そんな個人出版界隈の空気は、

・自分達は面白い小説を書いている
・なのに出版界は無視
・デビューする作家は自分達よりもつまんない
・けど時代が自分たちに追いついた
・公募なんてもう時代遅れだ
・個人出版してどれだけの才能が埋もれているかを腐った出版界に知らしめてやる
・さあ、アマチュア作家の革命の始まりだ!

……だいたいこんな感じでした。
で、僕はというと、まあそういう気持ちもなくはなかったものの、既に「ギタリスト身体論」など数冊出版社から出しており、『出版社をそこまで敵視しなくてもなー』と思っていました。
というか、正直ちょっと気持ち悪いなーとも思っており、それがわりとすぐに界隈を離れた原因でもあります。

ハブられてた?

誰もが出版未経験の中、自分のような出版経験者が界隈にいると、当然嫉妬する人も現れます。
ときどき「出版経験済みのお前がこっち来んな」的な空気は感じていました。
露骨に嫌味を言う人、無視してくる人、喧嘩を売ってくる人、SNSをブロックする人などなどいろんなことがありましたっけ。
今思い出してもけっこう面倒くさかったなと思います。
これを書いていて思いだしたんですが、誰かが作ったランキングサイトで僕がなぜか人気を得たことがあったんですが、すぐに潰されてたなあ……

勘違い野郎

あと、僕の小説を読んであそこはこうした方がいいとか、文章がどうこうと言ってくる人も時々いました。
その人も普通にアマチュア作家とかです。
どういう立ち位置でそれ言ってんのか意味不明で、指摘もトンチンカンだったので無視したりブロックして対応してました。
ブロックした人が怒り狂って悪口言いまくってたのを後から誰かが教えてくれたこともありましたっけ。
なんか編集者気取りの人もいて、雑誌か何かに誘われましたが、それも断った記憶があります。

低評価攻撃

あと、個人出版というと低評価攻撃。
自分が苦労して出版した作品に低評価されて発狂している人も大勢いました。
個人出版者ばかりを低評価しているアカウントもありましたねえ。
僕もいろいろやられました。
こういうのは今でもありそうですね。

馴れ合い

一番気持ち悪かったのが、アマチュア作家同士の馴れ合いです。
当時やっていたツイッターでよくあったのが、誰かの作品を読んでその人のアカウントにわざわざメンションし「君の作品読んだから、はい、次そっちが自分の作品読む番ね」と圧をかけるというもの。
当初は『あー、そんな風に交流していくもんなのか…』と理解はしていたものの、実際にそれが来た後その人の作品を読むとクソつまんなくて返信できずにスルーしてしまい、なんか気まずくなるということが結構あった気がします。
つまんなかったのに面白かったと嘘をついたことも多々あり、後悔しています(相手にではなく、自分の感性に嘘をついたことに)。

派閥

界隈ができると必ず派閥が生まれます。
派閥はやがて敵対するようになります。
派閥を作ろうとして一発で潰されていた人もいましたねえ…
そういうゴタゴタもなんかあった気がしますが、その頃にはもう僕は界隈を離れていた記憶があります。
ツイッターも早々とやめたのでその後はどうなったかは全く分かりません。

で、デビューしたのは?

僕が界隈にいた頃でデビューした人は、「魔女の旅々」の白石定規さんぐらいじゃないでしょうか?

個人出版されたのをDLした記憶があります。
あとはこちらの作品も話題になっていましたが、

作者の梅原氏はこれ一冊しか出していないようです。
界隈で有名だった人はたぶん誰もデビューしていないような気がします。
まあ、僕も(有名だったかどうかは知らんけど)そうなんですが。

革命の火はいずこ?

結局、革命だの復讐だのと息巻いていた人たちはどうなったのか?
たぶん出版社が積極的に電子書籍を出すようになり、公募も増え、アマチュア作家にもチャンスが巡ってくるようになったことで自然と鎮火されたのでしょう。
そもそも<悪の出版社VS正義のアマチュア><虚構のプロVS真実のアマチュア>というバカみたいな図式が成立してなかったということです。
出版社は昔も今も小説や書籍の未来を真剣に考えて仕事をしているはずです。
そこの公募に落ちたということは、単純に実力が足りなかっただけです。
で、僕はというと、たぶん大手出版社から実力不足を認定されるのが恐くてずっと個人出版していたのかもと今になって思えてきました。

近年では長年闇のベールに包まれていた新人賞の内幕について、編集者自ら選考基準などを説明する動画なども出てき、真面目に選考している様子が分かるようになってきました。
例えばこれ。

あと、いわゆる「下読みさん」って評論家とか文章を読むプロがやってるとどこかの動画で言っていて、下読みが内容を理解できないということは絶対ないそうです。
つまり、新人賞はちゃんとしてるってことですね。
かつての革命家wさん、お疲れ様でした……

結局、界隈なんてロクなもんじゃない

2024年現在では東横界隈などの影響で、界隈=掃きだめという印象が広まっていますが、まさにそうですね。
界隈なんてものはロクなもんじゃありません。
そういえば作曲やってた教室の生徒さんから聞いた配信界隈もロクなもんじゃなかったですねえ…
真剣に何かを目指す人はちゃんと王道を進むべきでしょう。

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