ただそれだけのために動く。映画『予告犯』
新聞紙を被ったポスターは見たことがありましたが、映画自体は見ていませんでした。おすすめされたこともあって見てみたら、思うところがあった映画になりました。感想を綴ります。
若干ネタバレしてしまうので、注意してください。
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ネットに予告動画が流れ、実際に事件が起こります。
声なき者の味方というスタンスで、正義を振りかざした犯行声明で、新聞紙で顔を覆って不気味な雰囲気がありました。
愉快犯系の犯罪で、犯人を警察が追いかける展開なのかな、と思いました。
実際ほぼその通りで、戸田恵梨香演じるサイバー犯罪対策室のメンバーが犯人を追いかける展開でした。前半までは。
この作品が面白かったのは、前半と後半で魅せ方が違うことです。
前半は犯行の意図が読めないまま進み、歓喜する犯人と翻弄される警察が対比されています。このままの展開で進むと、よくある2時間ドラマです。
後半は違う様相を見せました。犯人側のチームの成り立ちと絆、犯行の意図が描かれていました。悪の成り立ちが後半の見せどころでした。
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勧善懲悪のストーリーは好きです。わかりやすいので。
そして、悪役から悪意を感じられると、もっと作品が深くなります。悪役が魅力的な映画は「ハリーポッター」でしょうか。ヴォルデモートが悪役としての魅力にあふれています。カリスマ的で、トラウマと信念があり、無慈悲で合理的な性格で、作品の魅力がさらにあがっています。
本作でも、ヴォルデモートとは違う方向ですが、悪役の魅力があったと思います。
弱いという絆がありました。
社会の中では、弱者と呼ばれてしまうような境遇にいて、
がんばりたくても、がんばれない人達でした。人が良く、簡単に裏切られ傷つけられ、弱った自尊心を嘆いていました。共通点と引き返せないきっかけで、弱さは凶器になりました。
その弱さとネットの相性がよく、匿名であることをよいことに、
計画を実行していったところが作品としてよくできていると思います。
新聞紙をかぶって正体を隠していますが、正体を隠すための偽装だったのでしょうか。その意味もあったかと思いますが、なりたい自分になる装飾なのかなと思います。弱い境遇を過ごしてきた自分ではなく、ネットの中に今の瞬間だけ存在する何者でもない自分になりたかったのでは。
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犯人側の生い立ちやのっぴきならない状況があったのが、ある意味、救いでした。久々に、人間味のある犯人をみた気がしました。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。
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