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人気アニメの原作小説!『氷菓』を読みました。

作者の米澤穂信さんは22年1月に166回直木賞を受賞されました。文学賞も今までにたくさん受賞されていて、アニメの原作になるなど人気の作家さんです。知ってはいたのですが、僕は今まで米澤穂信作品を読んだことがなかったです。

直木賞受賞されたこともあって
今回古典部シリーズの第一弾『氷菓』を読んでみました!感想を綴ります。

あらすじ
いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実──。何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ、登場! <古典部>シリーズ第1弾!! 

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本書は青春×ミステリー小説です。日常に潜む謎を解くお話ですが、魅力はキャラクターにも詰まっています。
主人公・折木奉太郎の省エネ思考は一度は考えたことがありそうです。
自分の芝よりも、隣の芝の方が青く見えがちです。ちょっとめんどくさそうに見える主人公は↓のような考えの持ち主です。

高校生活といえば薔薇色、薔薇色といえば高校生活、と形容の呼応関係は成立している。西暦2000年現在では未だ果たされていないが、広辞苑に載る日も遠くはあるまい。
しかしそれは、全ての高校生が薔薇色を望むということを意味しているわけではない。例えば、勉学にもスポーツにも色恋沙汰にも、とにかくありとあらゆる活力に興味を示さず、灰色を好む人間というのもいるし、それは俺の知る範囲でさえ少ない。けど、それって随分寂しい生き方だよな。

『氷菓』p7

ですが、千反田えるさんとの出会いで少しずつ変わっていきます。
千反田さんは謎を呼ぶ人で、主人公はその謎にめんどくさそうに巻き込まれていきます。旧友で謎解きの相棒の福部里志と、小学校以来の付き合いでそりが合わない伊原摩耶花も一緒に謎解きに挑みます。

奉太郎と里志との会話
「ホータローは……」
「ん?」
「ホータローは、薔薇色が羨ましかったのかい?」
俺はなにも考えずに答えていた。
「かもな」
自室。見上げる天井は白い。俺は里志に言ったことを反芻する。俺だって楽しいことは好きだ。バカ話もポップスも悪くはない。古典部で千反田に振り回されるのも、それはそれでいい暇つぶしだ。
だが、もし、座興や笑い話ですまないなにかに取り憑かれ、時間も労力も関係なく思うことができたなら……。それはもっと楽しいことなのではないか。それはエネルギー効率を悪化させてでも手にする価値があることなのではないだろうか。

『氷菓』p180

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奉太郎がいう薔薇色と灰色とは一体何なのでしょうか。
ちょっと自分の言葉で書いてみます。

薔薇色→勉強やスポーツ、色恋沙汰など熱中できるものがある状態のこと
灰色→熱中できるものを探している状態のこと

隣の芝生は青く見える。高校生でも社会人でも起きることです。
何かに熱中している真剣な横顔に憧れてしまいませんか。その横顔と自分の自信のない声を比較して、たいして誇れるものがない中途半端さが足を引っ張ってしまいます。

熱中に準備時間は用意されていない。
熱中が僕を動かす。
熱中をコントロールすることはできない。
熱中は時間を忘れさせる。

その時、かつて憧れていた真剣な横顔をしているんじゃないかな。
探しているけど、見つかった!という瞬間はなくて、灰色とか考えなくなったら、すでに薔薇色に変わっている。

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本書を読んで、改めて「隣の芝生は青く見える」ことについて考えてみました。そんなこと考えられないくらい「熱中」してしまえば解決ですね!

最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。

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