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四季の残り香

夏の気配が消えて、朝晩は冷えた空気が漂う時期になった。
それでも、お昼の日差しは「まだ夏は終わっていない!」と言わんばかり。

ただ暑いだけじゃ、夏じゃない。
それが夏を夏たらしめる理由なのかもしれない。

夏だけじゃなくて、どの季節の終わりにも”残り香”のような日がある。

桜咲く季節に雪が降ったり、
秋のある日に突然一匹だけ蝉が鳴いていたり。

その瞬間のことを後々思い出すことはない。
「去年の夏は、1日だけ涼しい日があったよね」なんて会話が、この先、生まれることはほとんどない。

その瞬間は、まるで香りのように突然あの日を思い出させては、何事もなかったかのように大空に消えていく。


四季の残り香に触れたその瞬間にだけ、あの季節のことを思い返す。
季節が巡れば、いいことも悪いことも全て残り香になって、風が彼方へと運んでいく。

(220912)

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夏の思い出

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