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続いていく。

ある日、工事現場でたまたま出会った一枚の写真。

それは、古い家族写真だった。
きっと100年以上も前の写真。

見るにそれは、
ネガフィルムが誕生するよりも前の、
写真が普及し始めた時代のもの。

そこに写る人々は、まさか100年後に僕の手に渡って
こうしてまじまじと顔を見られるなんて、
思ってもみなかっただろう。

今、僕らが写真を撮るのは、
なぜだろう。

まさか遠い未来に、誰かに見てもらうことを前提として写真を撮ることはないと思う。

ただの記録として、
もしくは誰かの共感を求めて。

写真を撮る理由なんて、
十人十色だと思う。

でも、もしもその写真が、
遠い日の誰かへ宛てたメッセージになるとしたら、
僕らは一体、何を残すのだろう。

何を伝えたいと思うのだろう。

写真は、
時間も空間も想いも、
全てを乗せて運んでいく。

シャッターを切った瞬間から、
写真は自分の元を離れて遥か彼方へと旅を始める。

どこまでも続く水平線の端を探して、
長い長い航海に出る。

行く先は誰にもわからない。

様々な“もうひとつの時間”の中を漂い、彷徨って、
出会い、別れ、朽ち果てるまで旅を続ける。

そうして紡がれた遠い日の記憶は、
確かに輪郭を帯びて、あなたの元に届く。

あなたはその写真に出会い、別れ、
そしてまた、新しい写真が生まれる。

写真は続いていく。

これまでも、これからも。

(230506)

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