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「引き算」で作るインタビュー記事

『19才の母。静岡出身の2児のママモデルが、渋谷のベンチャーで1人広報になるまで』という記事を書きました。

記憶が新しいうちに、この記事を書くにあたってぼくが考えていたことをメモとして残しておこうと思います。

思いついた順に書いていくので、構成は汚いです。


前回の記事の振り返りも、ご興味ある方はぜひご覧ください!


①タイトル

最初の「19才の母」は、当時日本中で話題になったテレビドラマ『14才の母』からのオマージュです。

正直ぼく自身は中身を見たことはないのですが、逆に中身を見ていないぼくでさえそのタイトルは知っているので、それだけ当時話題になった作品であるとも言えます。

あと最悪、このドラマを知らない人が今回の記事のタイトルを見ても、「19才の母」というワード自体が強いので、ドラマのことを知っているかどうかは正直そこまで気にしていなかったです。

知っている人が見れば、「あ、ドラマタイトルのオマージュだな」となるし、知らない人が見ても「お、どういうことだ!?」と興味を持ってもらえるかなと思いました。

今回の記事に関しては、インタビューが終わった時点でほぼほぼタイトルは固まっていましたね。

ちょっとだけ考えたのは、「静岡出身」を「茶畑出身」と言うかどうかです。

後半の「渋谷のベンチャー」との対比を出すために、出身の地名を出す案は固まっていて、最初は「茶畑」にしようかなと思っていました。

「茶畑」の方が「渋谷」の都会的なイメージとの対比構造をより鮮明に出せるかなと思っての検討だったのですが、「茶畑」だけだと日本中いろんなところにあると思うので、「茶畑=静岡=地方出身なのだな」にならない人も一定数いそうだなと判断しました。

読者に「お!?」という意味で立ち止まってもらうタイトルは良いのですが、「どういう意味?」では立ち止まるところか意味が分からなくてスルーさせてしまうので、そのリスクを考慮して、シンプルに「静岡」とすることにしたのです。

「茶畑」とちょっと比喩的な言い方にしたかったのは自分のライターとしてのエゴも混じっているなと検討段階で気づいのたで、それならば余計に「静岡一択だな」と思い、今回のタイトルに至ります。


②導入文

今回の記事の導入文全体の優先事項として、インタビュイー自体が持っているネタが大きく、それに伴ってタイトルもわりと要素がふんだんに詰め込まれたものになっているので、導入文は簡潔にすることを心がけました。

「タイトルが気になってクリックしたんだから、早く本文を読みたい!」と思っている読者が多いと仮定して、導入文ではタイトルの内容を一通り回収して、「本当にここからタイトルの内容について書いていくからね」という改めての確認程度の位置付けにしました。

逆に言えば、今回の記事ではタイトルで強く興味づけができているので、導入文で念入りに「この記事の読む価値はここだよ!」と叫んでじれったくなるよりも、タイトルの再確認だけしてなるべく早く本文に入った方が、読者ファーストな記事になります。

普段、ぼくが書く記事は導入文が400〜500字くらいになるケースもあるのですが、今回は300字以内に収めました。

あとはちょっとした遊び心、というか前座として読者の気持ちを無意識的に高める役割も兼ねて、「放心状態」、「中退」、そして「重大」と一文おきに韻を踏んでいます。

連続の文でやっても良かったのですが、あんまりわざとらしすぎるのもちょっと今回は合わないなと思って、隠れギミックみたいな感じにしました。


③写真

アイキャッチの写真は、文字やデザインを入れずに、素材のまま使うことにしました。

理由は一択で、インタビュイー(政岡さん)の笑顔がめちゃくちゃ素敵だし華があるからです。

変な加工をしたりカッコつけた文字を入れたりするよりも、彼女の顔を真ん中に大きく据えることが、タイムラインで流れてきた時に一番「お、なんだこの記事は!?」と興味を持ってもらえるなと判断しました。

検討した写真は最終的には2択です。

実際に使用した写真がこちら。

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もう一つの比較対象だったものがこちら。

政岡さん_10

結構迷ったのですが、タイトルの『19才の母。静岡出身の2児のママモデルが、渋谷のベンチャーで1人広報になるまで』との相性と、記事全体の内容から考えた時に、笑顔ではありながらも目線は外れていた方が、彼女のここにたどり着くまでの壮絶さや漂う感じがして、前者の写真を採用しました。

後者のカメラ目線のものだと、彼女の素敵な表情がちょっとストレートに届きすぎる感じがしたんですよね。

あえて目線が外れている写真の方が、彼女の笑顔の裏にある哀愁や苦悩などを感じ取ってもらえるのではないかなと思いました。

ちなみに、アイキャッチに採用しなかった後者の写真も、記事中の挿入写真として使用しています。

あと、写真に関して言うと、実は2箇所で撮影しているんですよね。

上記の写真2枚は渋谷にある宮下パークで撮影したものなのですが、あともう1箇所、実際にインタビューを実施したカフェでも撮影しています。

こちらですね。

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ただ、証明の位置や撮影した時間帯の関係などで、カフェよりも宮下パークで撮った写真の方が圧倒的に素敵な表情をたくさん撮れたので、記事中でも大半の写真は宮下パークで撮ったものを採用しています。

だからまあ、記事中のすべての写真を宮下パークでの写真にする選択肢もあったのですが、それだとちょっとインタビューの現場感が薄れすぎてしまうので、合間に3枚ほど入れることにしました。

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3枚のうち1枚は、まず最初の見出しの直後に入れることで、「インタビュー自体は宮下パークじゃなくて、このカフェでやったんだよ。だから話を読むときは、このカフェで政岡さんが話している姿を想像しながら読んでくださいね」というメッセージを伝えます。

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2枚目は、政岡さんが妊娠したことが分かった場面で使いました。

ここは「青天の霹靂。」という体言止めでインパクトのある言葉、かつ記事全体の中でも大きな転換点なので、文字の後にちょっとした余韻を残して欲しい場面です。

そこで宮下パークの華やかな写真は少し内容とズレてしまうので、カフェで撮った真剣な表情の写真を入れることで、「ここは緊迫した場面だ!」と読者の方々に感じてもらいます。

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ラスト3枚目は、『退職も検討。寝耳に水だった、広報への異動』という最後から2番目の見出しの直後にて使っています。

ここはいま政岡さんが務めるwevnalへ転職後、退職を検討するくらい葛藤した時期を過ごしますが、そこから結果的にいまの広報へと異動してくるという、先ほどの妊娠と同じくらい記事全体の中で重要な場面です。

ここも先ほどと同じく、宮下パークで笑顔の写真は、この段落で伝えたいメッセージのトーンと合わないなと判断したので、カフェでの真剣な眼差し、且つ顔がアップの写真を使うことによって、より緊迫感を伝えることを意識しました。

細かいことを挙げればまだもう少しあるのですが、写真全体の使い方としては、こういったことを意識しながら採用、配置を行ないました。


④全体構成

最後に、全体構成で、今回気をつけたことを書きます。

今回の記事で意識したことを一言で言うなら、「引き算」です。

冒頭のタイトルでも書いたように、今回の記事って、タイトルの時点で結構インパクトが強いんですね。

「19才で母」とか、「ママモデル」とか、「そこから渋谷ベンチャーへの転身」と「一人で広報」とか、盛り沢山です。

あと導入文では、タイトルの内容に加えて、「スタートアップのカスタマーサクセス立ち上げ」の話も予告しています。

もうこれだけで、わりとお腹がパンパンになってしまいます。

実は、今回記事に出した以外の話でも、静岡時代にまた違った経験をされていたり、記事中ではサラッと触れた「シェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルっていう、東京ディズニーリゾートのオフィシャルホテルでインターンしてたりしてたの。」って話も、インタビュー中では結構な時間を割いてその詳細を話してくださったんですよね。

そのどちらの話も、それぞれエピソード単独として充分に面白いものでした。

ただ、記事全体を大きく三分構成に分けて

①静岡でのモデル時代
②東京に来てからの出産、モデル時代
③前職スタートアップでのCS立ち上げ、wevnal時代

とした時、②以降には繋がらない「高校時代のモデルとは別の話」と、②以降での「モデル→CS→広報」という大きな仕事の流れとは少し脱線する「ホテルでのインターンの詳細」の話は、読者の混乱を招いてしまう可能性があります。

ホテルでのインターンのお話も、仕事関連の話ではあるので別に記事に入っていても違和感はそこまで正直生まれないのですが、仕事の話で伝えたいwevnalとしてのメインメッセージは「それくらい仕事に対して本気で向き合っている人がwevnalにいるよ」「仕事と子育て両方に本気で向き合うロールモデルがwevnalにいるよ」なのですね。

だから、ホテルでのインターンに関しては、極論すると「ホテルでインターンしてました」の一文で、伝えたいメッセージは伝えられてしまいます。

そして、仕事の詳細を描くとなったときは、前職でのスタートアップのカスタマーサクセスが一番濃密なので、そこのディティールを描くことによって、「どのように本気で向き合っているのか」のメッセージも伝えることができるのです。

ここで加えてホテルのインターンの詳細も描いてしまうと、前職でのカスタマーサクセス立ち上げの話と役割が重複してしまい、結局は「彼女は仕事に対しても本気だよ」と「こんな感じで本気だよ」の伝えられるメッセージは変わらないのに、文字数だけが増えて、記事全体の情報量の密度が落ちてしまいます。

言い換えると、インタビュー記事は強いエピソードが盛り盛りであればあるほど良いわけではないということです。

記事全体を通して伝えたいメッセージから逆算した時に、どのエピソードをどの順番で出せば、それがより伝わりやすくなるのか。

逆にそのメッセージを伝えるためのストーリーから逸脱するもの、単体としてはそのストーリーラインに載っているんだけど、他のエピソードとの兼ね合いで見た時に、全体最適の観点で削ぎ落とした方が結果的に読者の最終的な満足度と、こちらから伝えたいメッセージがより伝わっているであろう場合は、そのエピソード単体が仮に面白いなと思っても、削ぎ落とすこともあります。

といった経緯を経て、今回の記事では、インターン時代のお話は、断腸の思いでカットすることにしました。

結構慎重に検討したので、まさに「メディアは何を書くかよりも、何を書かないかに信念が隠されている」を強く感じた記事でしたね。


⑤結果

現時点での結果も一応メモ代わりに残しておくと、Wantedlyにて急上昇1位を獲得。

急上昇だけでなくて、週間ランキングでも8位に入ることができました。

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あと政岡さん個人のフォロワーも、公開前から37人増えました。(760人→797人:2021/10/17_20時時点)

あと定性的なところで言うと、HR業界の方から「最近読んだストーリー記事の中で一番良かった」というめちゃくちゃありがたいお言葉もいただきました😭


・・・

ということで以上、今回の記事を読むにあたって気をつけたことについて書きました。

記事本文の方も、ぜひご覧ください!


前回記事の振り返りもご興味ある方はぜひどうぞ。


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