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「インタビュー後」の複雑な気持ち
これまでたぶん100回近くインタビュー記事を書かせてもらうなかで、けっこう「え、どうしようかな...」となる瞬間があります。
そのうちのひとつが「インタビューで話したあの話、記事では使わないでいただきたいんですけど...」と、インタビューが終わったあとだったり、確認の原稿を送ったりしたタイミングで言われてしまうとき。
要は、「インタビュー中はつい勢いで話してしまったんだけど、いまになって冷静に考えると、やっぱり記事として他の人に知られるのは避けたいな...」ということです。
これを言われると、ぼくはとても複雑な気持ちになります。
うれしい気持ちとしては、たくさんの人に知られることだったり、記事として残るものに書くのは嫌だけど、ぼくには話してもいいかなと信頼してくれたのかなとか、それくらいインタビュー中に気持ちが乗ってくれたのかとかっていうもの。
ただやっぱり「どうしようかな...」となる気持ちとしては、聞き手のこちらとしては、そういう記事にするのをためらってしまうくらいの、なにかしらの「強い」話を引き出すために、こっちはあれやこれやと準備をしたり、当日も頭のなかで「どうすればもっと気持ちよく話してもらえるかな?」と考えながら、話を聴いているのにな…というもの。
オフレコ級の話を現場で聴けるぼく自身は楽しいですけど、ぼくはそのあとに「記事として世に出して、読み手の人たちにも、役に立ったり楽しんでもらったりする」役割があるわけで、単なるオフレコの話だらけだったら、「プライベートの食事でいいやん」と思ってしまう...。
やっとの思いで引き出した話を、あとになってから「やっぱり記事にするのは...」と言われてしまうと、「じゃあなんのためのインタビューなんだ...!」と。。。
ただ、「なんのためのインタビューなんだ...!」という話に関連して、もうひとつだけうれしい気持ちになる理由を付け足しておくと、ぼくはインタビューを単に「記事にするための材料」だけの存在にはしたくなくて、一言でいうと「インタビュー自体にも価値を創出したい」と思っています。
たとえば、インタビューが終わったあとに「これを機会に頭が整理できた!」とか「気持ちがスッキリした!」とか「新しい観点をもらえた!」とかって言ってもらうことがあると、「あ、インタビュー自体で価値を発揮できたかも」と思うことがあります。
だから、そういう意味ではインタビュー後の「やっぱりこれは記事に出すエピソードしてNGで...」と言われるのは本当に難しい話で、いまもまだ全然完全な解決策は見つかっていません。
とはいえ、現時点でできることというか、さすがにずっと「どうしようかな...」で止まっていても仕方がないので、最近は試行錯誤するなかで、いくつか対応策が出てきました。
まず、最初にできることは、インタビューに応じてもらう人を「ぶっちゃけることをためらわない人」にするだけで、だいぶ違います。
たとえば、すごく外から見えるキャラクターを気にするモデルさんよりも、なんでもアリっす!みたいな、はっちゃけたモデルさんのほうが、同じモデルの話でも、後者のほうが(少なくとも)記事にするときの対象者としては、適切かもしれません。
ただ、これはあくまでも商業系メディアで、インタビュー対象者の候補が広い場合にとれる選択肢の面が大きいです。
これがオウンド系のメディアになると、基本的に社内の方にインタビューさせてもらうことが多くなり、かつ話を聴かせてもらう対象者って、職種やポジションによって、(悪い意味で)必然的に絞られてしまうことも多いので、そういうときは、あんまり「ぶっちゃけてくれる人を選ぼう!」作戦の効力はないかもしれません。
次は、インタビュー中に話を聴かせてもらいながら、これはもう明らかに記事で使えないでしょ!というのが確実であれば、「この話って記事で使えますか?」と聞いちゃうのもアリだなと思っています。
その時間で、多少パンチが弱くても、記事で使える話を聴かせてもらうほうが、ライターとしては正解なので。
そして、インタビュー後にどこかのタイミングで「この話、やっぱり記事で使わないでもらえますか...?」と言われてしまったときの対応としては、「見極めのポイント」があると思っていて。
まずは大前提、ポイント関係なしに「本当に使わないで欲しいです!」って本気でダメなときがあるので、そのときは温度感の見極めを慎重にして、潔く引き下がります。
そういうときはどれだけ言ってもダメで、粘れば粘るほど関係がギクシャクしてしまう可能性すらあるので、潔く諦めます。
そのうえで、見極めのポイントは「インタビュイー以外に迷惑をかけてしまう可能性があるかどうか」だと思っています。
要は、その話が出ることによって、インタビュイー以外の関係者に迷惑がかかってしまうような場合であれば、それは記事に出さないほうがいいです。
たとえば、中途入社の方に「入社の経緯」を聴いて、前職の悪口がめっちゃ出てきちゃったときや、事例インタビューをさせてもらったときに、クライアントが前に使っていたサービスの悪口をめっちゃ言ったときなど。
(記事の構成上、どうしても必要なときには表現や会社名をぼかして書くこともある)
ただ基本的には、こういうときは「インタビュイーが腹をくくればなんとかなる!」の領域を超えてしまうので、記事に出さないことが多いです。
じゃあどういう話であれば、交渉の余地があるかというと、それは「インタビュイーが単に恥ずかしがって記事にするのをためらった」とき。
たとえば、同期と熱く励ましあった話とか、大きな失敗をして(しまったけどいまにつながっている)話とか。
こういうのは、単に「インタビュイーのプライド」の問題なので、そういうときは丁寧にそのエピソードが記事にどれだけ必要かを伝えて、記事で使わせてもらえないかという話をします。
そういう話は、「インタビュイーの恥ずかしさ」だけ乗り越えたら、読み手にとっては胸が熱くなったり、教訓になったりする話であることが多いので、記事の魅力をアップさせるうえで、とても大事な要素。
それにめっちゃ極論を言うと、記事にするからには、そこにはなにしからの「有用性」や「メッセージ」「面白さ」などがないといけないわけで、逆にインタビュイーが出すことになんのためらいもない、なんてことのない話ばっかりの記事に、価値はないのです。
そこの「マジで記事にできないNG話」と「ギリギリ出せるハラハラ話」の境界を探りながらインタビューをさせてもらい、記事にすることこそが、ライターの大事な役割のひとつなのかもしれません。
まとめると、インタビュアーのスタンスとしては、話してくださる方に事前に「記事にできる話だけをしてください」ってブレーキをかけることはしたくないので、とりあえず聞き手としては「できる限りどんどんはっちゃけた話を引き出す」方向性を志向すべき。
そのうえで、「記事が面白くなるハラハラ」と「ガチで使えないハラハラ」の見極めだけ少し念頭に置きつつ、インタビュー後に「やっぱり...」ということであれば、温度感とともに「そのNGの理由はなんなのか」を考えて、突破できる&すべきNGであれば、丁寧にこちら(=ライター)側の思いを伝えて、できる限り記事として出せるようにするって感じでしょうか。
とはいえ、まだまだぼくも模索中なので、これからも試行錯誤していきます!
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