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「編集=うまくまとめること」ではない

昨日から魔法をかける編集の感想を書き始めたんですが、今日は編集の理念とか効用とかじゃなくて、ガッツリ本中で公開されていたノウハウについて書きます!

ちなみに、アイキャッチが2日連続で『魔法をかける編集』を手に持った画像になってるんですが、今日のデザインが一般的に本屋さんで売られているものです。

昨日の表紙は、ぼくが参加したイベント用で販売する用として特別に作られたもので、もしかしたら世界で持ってるのはぼく入れて20人くらいかもしれません…!

ということで、本中では著者の藤本さんがこれまでの経験で培ってきた編集術が8つ紹介されてるので、それを1つずつ見ていきます。


①台割は適当。尺をフレシキブルに!

尺とは、ページ数や文字数などの制約のことです。

これまでの一般的なメディア(テレビや新聞、雑誌など)は、この『尺』を厳密に管理したうえで中身を作るのですが、藤本さんはそれは不要だと言います。

実際、藤本さんが編集として携わっていた『のんびり』という雑誌では、『尺』という概念がほぼない状態で作っていたそうです。

本中では、

取材を進める僕自身ですら予測不能な展開を、臨場感たっぷりに読者のみなさんにお届けしたいと思えば思うほど、尺がフレシキブルに変化できないといけません。

と書かれていました。


②まとめることの罠

この項目では

僕の経験で言うと「うまくまとまった!」と思えば、いい部分八割消えています。

と書かれていて、ドキッとしました。

『編集』というと、ややもすれば『まとめる』と同義に捉えがちですが、そうではなかったんですね。

ただ、

とはいえ、尺の制約はつきものだから、そこに向き合うのなら、思い切って抜き出すのが一番

とのこと。

それに続く

百あったものを、全体から薄く取り出して、こちらの言葉で十にまとめてしまうくらいなら、ありのまんまを十抜き出したほうが、読者は残りの九十を豊かに想像してくれます。

という一文は、すごく印象に残りました。

例として、実際に『のんびり』で掲載されている記事が取り上げられているんですが、

美奈子(インタビュイー):そうそうそう、自由なの。だからね、新幹線だって絶対に指定席は取りません。縛られてどうするのよ。例えば隣にいる子があたしを嫌でも、あたしが嫌でも、動きがとれないじゃない。自由だったら自由なの。

藤本:なるほど。

美奈子:一人だったらどんなに混んでいても一席くらいはどこかにあるの。その時、その駅で降りた分空くのよ。なら大丈夫よね。だから絶対に新幹線は指定席無し!

藤本:わざわざ高い料金払って縛られなくても良いですもんね。

美奈子:新幹線の自由席買っても本当に自由なのよ。在来線に乗ってみたり、景色が違うじゃん、ね。でもやっぱり遅いな〜って思ったら新幹線に乗換えたら良いの。自由席ってすごく便利なの、指定席だとそれが利かない。だから上手に使ったらも旅は面白いっ!

このやり取り、美奈子さんの『新幹線では自由席しか取らない。自由の席の方が良い』という『情報』だけを伝えることが目的であれば、1回で十分です。

ただ、同じ内容を少し言い方を変えてわざわざ5回も繰り返すことによって、美奈子さんの『自由席がいいんだー!』という『想い』が文字からすごく伝わってきます。

ただ、これは単純に同じ内容を繰り返せばいいという話ではなくて、その情報が本当にその人の伝えたいメッセージなのか、見せたい姿なのかを判断したうえで、必殺奥義として使う術だなとぼくは解釈しました。

いちいちこんなくどくどやってたらいくら尺があっても足りないし、結果的に本当に伝えたい内容がボヤケてしまいます。

あんまり多用するとヤケドします。


あと、この項目では『曖昧模糊(あいまいもこ)したものを、尺が足りないからと、白黒ハッキリさせてしまうことの恐ろしさ』についても言及されていました。

これは普段記事やブログを書いているぼく自身への自戒の念でもあるのですが、メディアとはなにかと『”分かりやすい”メッセージ』で締めくくりたがります。

そっちの方が、受け手側もスッキリ感があるので、物事を二項対立の構図に落とし込んで、『賛成or反対』『良いor悪い』のジャッジに持ち込もうとします。

けど、世の中の物事や人間はもっと複雑なものなので、ほとんどの場合そんな簡単に二者択一できるものではありません。

なので、二元論で斬りたい欲をグッとこらえて、『曖昧さ』『グレー度合い』そのものを、メッセージとして届ける。

白黒言い切る安易さに逃げることのない誠実さが編集には必要です。

と、この項目は締めくくられていました。

・・・

1記事のなかに8個全部収まるかなと思ったんですが、思ったより1つ1つの項目がボリューミーになってしまったので、明日以降に分けて書きます。

とりあえず今日は

①台割は適当。尺をフレシキブルに!
臨場感たっぷりに伝える。

②まとめることの罠
ありのままの一部を抜き出すこともアリ。キレイにまとめて安易な結論に着地させず、曖昧なものを曖昧なまま伝えることの勇気。

の2つ!

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