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「システム」と「ネットワーク」の組織論

5年後、10年後どうなってるかがわからない。
いまが一番いい、という視点の積み重ね。
(『スマイルズという会社を人類学する』より引用)

『スマイルズという会社を人類学する』という本を読みました。

正直に白状すると、さっき冒頭で引用した文章はこの後に取り上げる内容とあんまり関係ないけど単純にぼくの価値観と近いなと思って引用したのと、この本を読むまではタイトルにもなっている「スマイルズ」のことをそこまで知らなかったのですが、会社の上司に紹介してもらって本書を手に取りました。

会社のことについてはググればいろんな情報が出てくるので興味ある方はそちらで見ていただくとして、最高級にざっくり言うといろんな事業をやっている面白い会社です。

その会社で社会人類学者たちがフィールドワークをして、人類学的な観点からスマイルズを考察しようという本なのですが、個人的に印象に残っているのが「システムとネットワークは二項対立ではなくて併存する」ということ。

これだけだとなんのこっちゃか全然分からんと思うのですが、簡単に言うと「システム」と「ネットワーク」はそれぞれ組織の形態のようなものです。

「システム」の特徴は「それぞれの項は序列の中で固定された位置をもち、単一の意味や機能を与えられている」のに対して、「ネットワーク」は「一つの項は他のどの項とでも結ばれうるし、意味や機能もその時々に応じて変わっていくこと」が特徴です。

やや抽象的な表現にはなってしまうのですが、なんとなくのイメージは伝わりますかね・・・??

それで、よく言われているのが「これからの組織はシステム型ではなくネットワーク型に移行していくべきだ」のような言説。

ネットワークの例としては、数年前に「ティール組織」という言葉も話題になりました。


こういう文脈でそれぞれの概念が登場すると、つい「システム=古臭くて悪いもの、ネットワーク=先進的で良いもの」というレッテルを貼られがちなのですが、もちろんそうではなくて、それぞれに良いところがあるし注意点もあります。

そして、ここからが面白いポイントで、ひとつの組織のなかでどちらか片方だけのタイプが居座っているのではなくて、実はどの組織にも両方の面があって、それらはグラデーション(=どちらがメインでサブか)の違いでしかないということ。

どちらか片方だけだと、組織がうまく回らないのですね。

例えば、スマイルズの創業者であり代表でもある遠山さんは、当初「ネットワーク」に全振りしたような組織を志向しました。

しかしその場合、ネットワークの弱点でもある「個々の役割が不明確になる」や「責任者が誰か分からなくなる」といった箇所がもろに出てしまい、プロジェクトの進行に支障が出てしまったそうです。

本書中にて引用されていた遠山さんの著書『成功することを決めた』には、このように書かれていました。

背広もネクタイもしないで、異業種の才能が意見を交換しながら物事を決めていく、あの感じです。私はそれを、「スパゲティ型」なんて呼んでいました。
しかし、これは「攻めるには強く、守るには弱い」やり方であることもわかってきました。社内の誰も、店舗の営業の結果に責任を持つ構造になっていなかったのです。私は自分の認識が甘かったことを思い知りました。
(『成功することを決めた』より引用)

こののち、遠山さんは「スパゲティ型から定食型へ」という表現で、それぞれの仕事を明確にしながらも、そのうえで個々の個性を発揮してもらうという組織のあり方に変えました。

このようにして、「ネットワーク」と「システム」の両方があるという前提で、時代の流れや組織の価値観、フェーズなどによってどちらをメインに据えるかをスイッチングしていくイメージです。

モダン(近代)の従来型の会社は、ツリー状のシステムを公式の組織としているが、それは水平で柔軟なネットワークを非公式なものとしているだけで、そこにもネットワークは働いていたのである。
(『スマイルズという会社を人類学する』より引用)

個人的にはここの「システムとネットワークは二項対立ではなくて併存する」って箇所が面白くて、つい今回の話だけじゃなくて物事って二項対立で捉えがちというか、「AかBか」という構造で見てしまうことが多いんですけど、物事ってそんなに単純にできていなくて絶妙なバランスで成り立っているのだなと、今回の話を読んで改めて感じました。

ぼくがいまいる会社は11期目で70~80人くらいいるベンチャー企業なのですが、本の感想を紹介してくれた上司に伝えたところ「ぼくたちの会社はいまシステムがメインのフェーズだね」と教えてくれました。

ある程度人が増えてきて(揃ってきて)、かつどんどん売り上げを伸ばしていこう!といういまのぼくたちのフェーズには、役割の分担や責任の所在の明確化が必要だからです。

あと別の上司にこの話をしたら「会社のビジョンや事業ドメインにもよるね」ということも教えてくれて、「システム」と「ネットワーク」のバランスにはめっちゃ変数があるのだなと思いました。

「システム」と「ネットワーク」という枠組みで組織を見るだけで、けっこういろいろと見え方が変わって面白いなあと感じました!

たぶん今後もしぼくが人を雇うような立場になったら、また解像度がグンと上がりそうな気がしますね。


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