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「インタビュー」のいろは

去年の暮れに、インタビュー術をインタビューさせてもらうという記事を書きました。


>美女のセックス事情から、飲食店の家賃・売上まで。なんでも聞き出すbar bossa林さんのインタビュー術


そしたらなんと、同じような趣旨の記事が、ほぼ同じ時期に公開されていた!


(ちなみに上記の徳重さんのほうが記事公開日は3週間ほど早いですが、徳重さんの記事を拝読した(=存在を知った)のは、ぼくが自分の書いた記事を公開した後です!)


ぼく自身、インタビュー記事の工程に関して、誰かから手取り足取り教わったわけではなく、元インターン先で4ヶ月ほどOJT的に経験させてもらった以外は、ここまでほぼ独学に近い状態でやってきたので、他の人がどうやってインタビューしているのか、とても興味があります。

だから、ぼくがインタビューさせてもらった林さんだけでなく、岩本さんのインタビューのやり方も『ああ、自分のやり方は間違ってなかったんだな』という再確認も込みで、参考になりました。

以下、林さんのやり方、岩本さんのやり方、そしてぼくのやり方を適宜照らし合わせながら、徳重さんの記事のなかで特に気になった箇所をピックアップしていきます。


インタビューの下準備はどの程度するか

これは、ぼくが林さんにお話を伺ったなかで、これまでの自分のやり方と一番乖離があった箇所です。

林さんは、インタビューに関して、『現場でのリアルな反応のために、あえて下調べしすぎない』と言っていました。

岩本さんも、時と場合によるという前置きをしつつも、あまり調べすぎないようにしているという旨の記述がありました。

理由は、『自分の質問内容が、事前に読んだ記事の影響を受けるから』。

そして、林さんと同じく『新鮮な驚きができなくなってしまうから』。

取材対象のそれまでのインタビュー記事などはあまり読みすぎないようにします。読みすぎちゃうと、読んだ記事の話をなぞっちゃう場合と、逆に記事で出た話に変に触れないようになってしまう場合がある。なので、あまり情報は入れすぎないように僕はしています。

最低限の情報は調べるんですが、特に直近のインタビューとかを読んじゃうと、相手の考えがわかってしまい、実際のインタビューのときの“生感”、新鮮な驚きみたいなものがなくなっちゃうので。

V・ファーレン長崎の高田明前社長にインタビューしたときには、日経新聞の『私の履歴書』という連載(全29回)は全部読んでいきました。1冊の本を読むくらいの感じですかね。そうするとやっぱり、信念とか、最低限の情報がわかるので。

ただ、V・ファーレンのことについて語っているインタビューは読んでないです。それを読んじゃうと、その記事に絶対引っ張られると思って。

経営者の人、スポーツ選手もそうかな。真面目でちゃんとしている人の場合、しゃべることが決まっている、固まっている人が多いじゃないですか。そういう人の場合、事前に記事を読んでしまうと、同じパターンにはまっちゃうことがある。そうすると何も面白くないし、読者にとっても新鮮な情報じゃないので。だから、事前に入れる情報に気をつけています。

(引用:インタビューの教科書:『REAL SPORTS』編集長・岩本義弘さんに聞くインタビュー取材のいろは


ただ、ぼくはこれまで『下調べはしていればしているほど良い』と思ってインタビューに臨んできました。

元インターン先は社長を専門にインタビューするメディアだったので、インタビューの前には、ネットやSNSなどで、その社長や会社に関して上がっている情報を、できる限り全部チェック。

あと、いまぼくはWantedlyなどの採用サイトに掲載される社員インタビューも行っているのですが、その際にも、事前にどれだけコミュニケーションをとって、その社員の方に関する情報を持っているかが鍵だと思っていました。


ただ、林さんと岩本さんの話す通りだと、それにも弊害がないことはないのかなと。

一番はやっぱり、『新鮮な反応ができなくなる』ということ。

ただ、これに関しては、正直ぼくはインタビュアー側の『演技』でどうにかなる部分もあると思っていて。

もうひとつ、岩本さんが言っていた『事前に出ている記事を変に意識してしまう』は、『新鮮な驚き』以上にインタビュアー側の力量でなんとかなる気がするので、それよりは、できる限り情報を仕入れたうえで、どれだけ深ぼった質問をできるかどうかのほうが、面白い話を引き出すためには大事だと考えています。

そして、また別の箇所で、若手のインタビュアーに対するアドバイスとして、『いつも聞かれていることを聞かないこと』という点を挙げていたので、どっちにしろ、そういった地雷を割けるためにも、やっぱり最低限の下調べは大前提。


ただ、インタビュアー側の『素の驚き』から出てくる面白い話ももちろんあると思うので、このあたりの『事前の準備の程度』については、引き続き試行錯誤をしていきます。

林さんや岩本さんのやり方を知って『すればするほど良いってものじゃない』という選択肢ができたことは、ぼくにとっての収穫。


質問はどの程度厳密に固める?

これに関しては、ぼくも岩本さんのやり方と似ているなと思ったところです。

ーー先ほどのお話ですと質問事項は企画書には入れない。けれども考えとしては当然、取材現場に持っていくわけですよね。どのくらいの数の質問を持っていくのでしょうか。

岩本:でも、大して持っていってないですよ。5個くらいですかね。

ーーダルビッシュさんのインタビューで、ですか?

岩本:はい。先ほど話しましたが、ダルビッシュ投手の取材では事前にインプットをたくさんしたので、想定質問はあまりいらないんです。聞きたいテーマで、向こうが言ったことを深堀りしていく。

僕が一番嫌なのはインタビュー取材が、用意された質問に答えるだけのアンケートになっちゃうこと。アンケートだったら誰がやっても一緒だと思っていて。そうならないためには、現場で向こうが言いたいことや、気になっていることを引き出す。引き出して膨らませる。特に言葉を持っている人の場合はそれがより良いと思っています。

(引用:インタビューの教科書:『REAL SPORTS』編集長・岩本義弘さんに聞くインタビュー取材のいろは


ぼくも基本的に、質問項目をあまりかっちりと固めません。

1時間インタビューの時間を作ってもらえたとしたら、事前に3~4つくらい聞きたいテーマだけインタビュイーに送って、あとは現場で話を深ぼっていくイメージです。

事前に決めた質問をどんどん投げかけていくというより、その場で出てきた言葉が次の質問につながっていて、会話ベースでインタビューが進むので、インタビューが終わったときには、インタビュイーの方に『めっちゃ雑談みたいな感じで、思ってることをバーっと話しただけだったけど、大丈夫?』と聞かれることがけっこうあります。

ぼくとしては、インタビュイーの方にできるだけ素の姿を出してもらいたいなと思っているので、その言葉は褒め言葉だと思って受け止めています。


ちなみに、ぼくのインタビューが『会話みたい』ってよく言われるのは、事前に細かい質問項目をあまり決めないことと、たぶんインタビュー中にメモを取らないこともあるかなと。

それも、岩本さんと同じでした。

やっぱり、メモを取るとインタビュー感が出ちゃう(=素の姿から遠くなる)し、わざわざ対面でコミュニケーションを取るということは、出てきた言葉以外の非言語情報も大切にしたいので、そういったすべての情報をできる限りキャッチするためにも、ぼくはインタビュー中にメモを取りません。

質問項目を詳細に固めすぎないと、メモを取らないは、今後も継続していこうかなと思います。


質問の仕方、言葉の引き出し方

ここも、林さんと同じようなことを岩本さんが言っていて『具体的な質問をすること大事だな』と、改めて思いました。


あと、それとはまた別で『仮に相手が少し答えにくいかもなという質問でも、これを聞かないと記事が面白くならない』というもの関しては、聞くようにしているというのも、林さんと岩本さんで同じでした。

ーーこれだけはやらないよう注意していることはありますか。

岩本:相手を怒らせて言葉を引き出すという方もいますが、僕はほとんどやらないですね。ただ聞きづらいけど、聞かないと面白くないという質問は聞きます。

どうやって聞くかというと、それに対して自分自身はこう思ったと考えをつけて話します。問題になった発言などって結局その後があったりするじゃないですか。それをどういうふうにポジティブに変えていこうと思っているか、という話をすることによって、それを聞かれて嫌だなというよりも、むしろそれについて話したいと思わせるように変えるようにしていますね。

(引用:インタビューの教科書:『REAL SPORTS』編集長・岩本義弘さんに聞くインタビュー取材のいろは

相手を感情的にさせて強い言葉を引き出すのは、ぼくも岩本さんと同じで、ナンセンスだと思っています。

ただ、ぼくはいままで『相手が少し答えにくいかもしれないけど、記事のためには避けずにはいられないという質問をすること』と、『感情的にさせて強い言葉を引き出すこと』を同義にしてしまっていて、インタビュイーの感情を刺激しないことを過剰に意識するあまり、質問すべきことを質問せずにインタビューを終えることがありました。

それは『読者のために必要なんだ』という一種の思考停止と、『どうすればインタビュイーが答えやすくなるか』という想像力を駆使しして、これからはもっと質問の幅を広げていきます。


PVとSNS

最後は、記事公開後の話。

記事のなかで驚いたのは、インタビュイーの岩本さんじゃなくて、インタビュアーの徳重さんの話です。

おそらく前職の『BuzzFeed Japan』を指していると思うんすが、これがもし本当にBuzzFeed Japanの話であれば、えっそうなのか!という驚きと残念さが3分の1ずつで、残りの3分の1がやっぱりかという気持ち。

ーー(中略)僕も辞めた理由の一つって、表ではPVじゃないと謳っているんですけれど、月末になって数字が足りなくなると、急にPVを稼げっていうような会社だったこともあって。名目で謳っている会社でも、やっぱりPVからは離れられないんだな、と。

(引用:インタビューの教科書:『REAL SPORTS』編集長・岩本義弘さんに聞くインタビュー取材のいろは


BuzzFeedって、日本に上陸したときは『読者ファースト』を全面的に打ち出して、可読性のために記事のなかに広告を入れないみたいな話もしていたと記憶しているんですが、いつの間にかガンガン記事の間に広告が入るようになりました。

新しいメディア像を示そうとするなかで、やっぱり日銭を稼がないと継続できないってところもあるんだろうなと思いつつ、BuzzFeedの記事を読んでいたんですが、やっぱりひとつのKPIとして、PVもあったんでしょうか。

たぶん徳重さんの前前職の東京スポーツじゃなくて、前職のBuzzFeedの話だと思うんですが、もし東京スポーツの話だったらごめんなさい。


あと、記事公開後の話で、『ぼくもこの小さなプライドを持ち続けよう』と思ったのは、『関係者にSNSシェアをお願いしない』ということです。


岩本:(中略)だから、逆にいうとSNS。当然記事が出たらSNSをマストでやってくれ、みたいなことを言う場合もあるじゃないですか。

ーーそうですね。お願いをするときはあります。

岩本:僕はそれはしないです。いいインタビューだったら絶対してくれると思っているので。だから、お願いはしません。小さなプライドですけれど。

いいインタビューだったり、いい内容の記事だったら、絶対に能動的にやってくれると思っているので。

(引用:インタビューの教科書:『REAL SPORTS』編集長・岩本義弘さんに聞くインタビュー取材のいろは


ぼくもいままで、基本的に記事に出ていただいた方や社内の人たちに、SNSでのシェアをお願いしたことはありません。

もちろん、記事が公開されたらそのタイミングでURLの共有と、こんな記事です!という簡単な紹介はしますが、それ以上のことは書かないです。

一時期、Wantedlyの企業ランキングを上げよう!となっていた時期に、社内の人たちに『記事のPV数のためにシェアしてください!』と、2週間くらいお願いしていたことはありましたが。


それ以外は、やっぱり『自然とシェアしたくなるような記事』を作ることと、『自然とシェアしたくなるような動線』を設計することが自分の役割だと思っているので、記事のシェアのお願いはしません。

この小さなプライドはビジネスにはあんまり向いていないのかなあと思っていましたが、逆にこの小さなプライドが自分のインタビュースキルやライティングのスキルを磨くことに寄与するのであれば、これからもこの小さなプライドを持って、記事を書いていきます。

・・・


ということで、基本的には『ああ、自分がいままでやってきた方向性は、間違ってはいないのかもな』と背中を押してもらえた記事でした。

話を聞きたい人に話を聞けて、そしてその内容を他の人に伝えて感謝されるって、とってもいい仕事だなと思います。


最後に改めて、きょう引用させてもらった、徳重さんの記事はこちら。


そしてぼくの書いた記事も、ぜひ読んでください!


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