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ライターや小説家といった書き手の「価値の本質」とは?

作家という職業も結局は同じようなものだ。
辞書というすでに確立された言葉の有限のデータベースに入り込んで、見つかった言葉を再構築し、誰も知らなかったような記事や小説や詩に組み替えていく。
引用:〈インターネット〉の次に来るもの


『〈インターネット〉の次に来るもの』を読んだ感想、第30回です!

第1回はこちら↓


『イノベーションとは、組み合わせだ』なんて、話をたまに聞きます。

これ、どこが出典なのかなと思って少し調べてみたら、イノベーションという概念を提唱したシュンペーターという人が、イノベーションという単語を使う前に、同じような意味で『新結合(neue kombination)』という言葉を使っていたそうです。

ここから、イノベーションとは、0から何か新しいことを生み出すのではなく、既存にあるもの同士をうまく組み合わせることだという主張がでてきたのでしょう。

これに関しては、ぼくも同意です。

特に、いまの時代の文脈に即した話でいえば、テクノロジーもアイデアも、大抵の『素材』はもう出揃っているから、大事なのはそれらをどううまく結びつけるかです。

そしてそういったビジネス要素の強い局面だけでなく、クリエイターが生む作品も、完全なオリジナルなんてものはなく、多かれ少なかれそれまでの時代や周囲の作品の影響を受けています。

それまでのインプットの組み合わせて、クリエイターは新しい作品を生み出しているのです。


ということは頭では理解していたものの、いざ『作家や作詞家、ライターも既存の言葉の組み合わせによって価値を生み出している』と言われると、あっ、そう言えばというか、灯台下暗しな感じがしますね。

作家という職業も結局は同じようなものだ。
辞書というすでに確立された言葉の有限のデータベースに入り込んで、見つかった言葉を再構築し、誰も知らなかったような記事や小説や詩に組み替えていく。
引用:〈インターネット〉の次に来るもの

小説にしたって、曲にしたって記事にしたって、イメージとしてなんとなく白紙のものにどんどん言葉を書いていくという感じなので、『0から1を作っている』と思ってしまいがちです。

でも、そこに描かれた作品の要素に着目すると、そこで使われている言葉のひとつひとつは、既に昔からあったものなんです。

なかには造語もあるでしょうが、全体からの割合で見ると、そのほとんどは既存の言葉で、つまり、作家にしろ作詞家にしろ、『新しい言葉を生む』という行為で価値を出しているわけでは決してありません。

じゃあ、何によって価値を生み出しているのか。

そうです、作家や作詞家やライターも、『言葉の組み合わせ』によって価値を生み出しているのです。

その妙味は、言葉の新しい組み合わせにある。
新しい組み合わせを発明しなくてはならない場合はほとんどない。
どんな偉大な作家でも、以前に使われて一般に共有された表現をリミックスすることで魔法をかけるのだ。
引用:〈インターネット〉の次に来るもの

もう少し具体的に言えば、どんな言葉とどんな言葉を組み合わせるのかや、どういった風に組み合わせるのかといった、『引き出しの多さ』や『観点』、『組み合わせ方』に、ぼくたちは魅力を感じているということです。


ということで、作家も作詞家もライターも、そのクリエイティビティの本質は『組み合わせ』だよという話でした!



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