ぼくは「文字起こし」をしない

『ぼくは「文字起こし」をコピペしない』という、文藝春秋の編集者である村井さんのnoteを読みました。


ふだん他のライターさんや編集者の方が、どうやって記事を作っているのか知る機会がなかなかないので、こういうnoteはとってもありがたいです。

それで、結論から言うと、村井さんが「文字起こしをコピペしない」理由については「それはぼくも同じような感覚があるかもしれない...!」と思いつつ、同時に「でもそもそもぼく、文字起こしをしないんだよなあ...」とも思いながら、noteを読んでいました。

ぼく、いままでたぶん100記事くらいインタビュー記事を書いてきたんですけど、そのうち文字起こしをしたの、10記事もないかもしれないです。

最初のころや、途中何回かは文字起こしをしてみようと試みたんですけど、結局「自分には合わないのかもしれない」と思って、最近は一切やってません。

ただ、bar bossaの林さんにインタビューさせたもらったこの記事は、100スキを超えているし、


元ZOZOの田端さんにも「記事の書き方が良かった」と言ってもらえたので、


文字起こしをしないことによって、少なくともめちゃくちゃ変な記事ができあがってるってことは、ないはず...!


それで、最初の「なぜ文字起こしをコピペしないのか」に戻ると、村井さんはnote中にて理由を2つ挙げていて、1つ目は「文字起こしをコピペすると、文章の論理の破綻に気がつきにくくなる」からです。

第一には、文字起こしをコピペすると、文章の論理の破綻に気がつきにくくなる。

喋り言葉は、良くも悪くも、いい加減である。会話では、仮に前後の話の文脈が少しつながっていなくても接続詞などで強引につなげて展開していける。ところが、文章ではそういうわけにはいかない。取材時は全然気にならなくても、文字起こしを読んでいると「あれ? ここの文章のつながり変だな」と気づく。ここに「喋り言葉と書いた文章の微妙な差」がある。


文字起こしって、冷静に読み直すと分かるんですけど、大半の人の話は、論理構成がめちゃくちゃなんです。

よっぽどしゃべり慣れている人とか、頭のなかで話を組み立てるのがうまい人とか以外は、思いついた順にものごとを話すので、そのまま文章にしようとすると、とっても読みにくい...。

そしてその前後むちゃくちゃな話を「コピペ」するのではなく、読みやすいように整理するのが、「編集」の役割のひとつと言えます。


2つ目の理由は、文字起こしをコピペして記事を書くと、書き手がフワッとした理解のまま、ただ文字数だけを満たした内容の薄い原稿ができあがってしまうからです。

第二には、コピペで記事を書くと、「なんとなく」の雰囲気で“記事っぽいもの”ができてしまう。

当たり前のことだが、インタビュー記事を書くときは、インタビュー対象者が言いたいことを完璧に理解していなければならない。語り手に「憑依」して――その人になりきって――文章を書かない限り、いい記事は生まれない。だから、喋っている内容を理解していないと、記事を書き始めることさえできなくて当然なのだ。


1つ目の理由と重複するところはありますが、話し手の方は、けっこうめちゃくちゃにしゃべっているので、同じことを何回も言ったり、説明が冗長だったりして、話している文字数に対しての内容が、薄くなることもあります。

その薄くていい加減な文字起こしをコピペして記事にすると、言い方は悪いですけど、「文字数を稼ぐ」ことは可能です。

一応インタビュイーの方が話してくださった言葉をそのまま使っているので、内容は嘘ではないし、それっぽい記事はできあがります。

ただ、それが読者にとって読みやすい記事で、なんらかの価値を提供できる記事かというと、それは「NO」であることが多いです。

ぼくはよく、記事を書くときに「話し手の方の"言葉"ではなく"メッセージ"を伝える」ってことを意識しています。

インタビュイーの方の話を理解して、より分かりやすく、端的にその本質を伝えるように、使う言葉や言い回し、構成を考えることもまた、ライターや編集者の役割のひとつです。


そして、最後に、ぼくがそもそも「文字起こしをしない」理由なんですが、上述したように、文字起こしって結局、「コピペするかしないか」という点に関して言えば、ほとんど使わないんですよね。

にもかかわらず、文字起こしって、かなり労力を割かれます。

村井さんのnote中でも、

文字起こしは、とにかく時間がかかる。そして、疲れる。とてつもない重労働なのだ。(中略)

経験上、1時間の音声データをきっちり起こすと、平均で3時間はかかる。2時間くらいのインタビューはざらにあるので、それをパソコンで起こす場合、単純計算で6時間は椅子に座っていなければならないことになる。目や腕、指は当然ながら、腰を痛める。

と、その大変さが綴られていました。


となると、明らかに生産性の面で「割に合わない」んですよね。

だからぼくは、1回音源を聴いて、だいたいの構成を作って、そこからは各段落ごとに該当箇所の「聴く」と「書く」を繰り返すっていうやり方で、いまのところは書いてます。

これから音声認識がもっと発達したらわからないですけど、しばらくはこのやり方を洗練させていく予定です。


「文字起こしをせずに記事を書く」って、ちゃんとした出版社とかメディアとかで腕を磨いた方たちからしたら、少し我流感があるかもしれません...。

ただ、良くも悪くも、ぼくはそういった道を経ずに、いま曲がりなりにもライターとしてお仕事させてもらうようになったので、「文字起こし」をほぼ経験しないまま、いまに至ります。

まあ、正解はひとつじゃなくて、それぞれに合ったやり方があると思うので、しばらくは「文字起こしをせず」に、記事を書くやり方を模索していきます!

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