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「無名」のメリット

『理系に学ぶ。』という本を読みました。


著者は川村元気さん。

『君の名は。』や今年公開された『天気の子』のプロデューサーを務める傍ら、小説家としても活動しています。

たぶんこのnoteを読んでくれてる方は全員知ってると思うので、詳細は省きます。

とにかく、めっちゃすごい人です。


そんな川村さんが、いわゆる理系のこれまたすごい人達と対談して、いっぱい学ぼうという趣旨の本です。

というのも川村さん、学生のころから数学や物理などの理系科目がてんでダメで、そのことに対してずっとコンプレックスを持っていたそう。

しかしこれからの自体を見据えたときに(≒テクノロジーが大きく社会を変えている、変えていくなかで)、理系の人たちから学ぶことによって、なにか自分も生かせるものがあるのではないかということです。

ということで、これから何回かのnoteに分けて、15人との対談のなかで、ぼくの印象に残った場面をピックアップして、感想を書いていきます。

まずはクリエイティブディレクターの佐藤 雅彦(まさひこ)さん。

電通に入社して活躍した後、退社して独立。いまは東京藝術大学の教授も務めています。

『だんご3兄弟』のプロデュースや、『ピタゴラスイッチ』の監修などをしています。

職業自体は一見文系っぽい感じもしなくはないですが、佐藤さんの場合は職種というより考え方がものすごく理系チックだなというか、ロジカルで図式に落とし込んだり、再現性を重視したりしているなという印象を持ちました。


そんなすごい実績を持つ佐藤さんですが、めっちゃ勉強不足ながら、正直、この本で読むまでこの方のことはそこまで詳しく知りませんでした。

名前を何度か聞いたことがあるなーくらい。

ただ、対談を読むなかで知ったんですが、佐藤さん、普段はほとんどメディアの出演を断っているそうです。

だから、そこまで世間の認知度が高くないことに納得しました。


それで、どうして普段メディア露出していないかということに対する佐藤さんの哲学が印象深かったので、きょうのnoteはそれについて書きます。

まずは、該当箇所の引用から。

佐藤
僕はテレビだけではなく新聞も、表に出ることはほとんど断っています。
その時間があったら、企画や制作や教育をしたいと思っています。
無名でいると、相手もストレスなく素直に意見をしてくれます。
教室でも仕事場でも学生や若い人が「『先生、それは違いますよ』」と平気で言ってくるし、全否定されることも多いんです。
その環境がなくなったら、もう終わりですよ。
(『理系に学ぶ。』/川村 元気)


これだけ実績を残されてきたなかでも、自分より若い人や実績のない人からの意見を積極的に求めている姿勢が、常にクリエイティブ業界の最前線で走りつづている所以なのかなと思いました。

ただ、これって言うは易く行うは難し系問題で、実績や年齢を積み重ねるほど、とても難しくなるものだと思っています。

というかぼく自身は、まだなんの実績もないし22歳なのに、『周囲からのフィードバックをどう受け止めるか』なんてことを考えています。


たぶん、この『フィードバック』と『自分の信じたやり方を貫く』みたいなところの議論は、『フィードバックを受ける』ことと『フィードバックを実際に自分のやり方に反映させるかいなか』の2段階に分けることが大事なんだろうなということを、最近考えています。

とりあえずフィードバックを受けるだけ受けて、その内容を自分のやり方に反映させるかいなかは自由。

そこの取捨選択は自分に委ねられているというイメージです。


たぶん、佐藤さんにフィードバックする人たちの何百倍、何千倍もそのことについて考え抜いたうえで佐藤さんはそのアウトプットを出しているので、実際に受けたなかで反映されているものの割合は、ものすごく低いんじゃないかと予想しています。

しかし、極稀に新しい視点や気付きをくれるフィードバックがあるからこそ、佐藤さんは無名(と言っても実績の割にという話で、世間の平均から見たらものすごく有名ですが)で居続けるのだと思います。


これたぶん、フィードバックを受けたいと思って、周囲に『フィードバックをください!』って佐藤さんが言い回るんじゃなくて、自然とフィードバックを相手からもらえるような環境にいるってことがミソなんじゃないかと、いま書きながら気づきました。

というのも、さっき書いたように、たぶん、フィードバックをもらっても実際に取り入れられるのって、すごく低い割合のはずです。

自分から聞きにいって反映されないって、それはけっこう相手にとって失礼なんじゃないでしょうか。

礼儀として、『自分から』意見をもらいに行ったのなら、内容の全てにその時点ですべて納得できなくても、とりあえず一旦思考停止して実行してみるのが筋だと思ってます。


つまりは、『相手から』フィードバックをもらう環境を作るかが、フィードバックの取捨選択をするには大事なのではないかと。

『自分の意見を通しやすくするために、知名度を上げたい』っていう人が多いなか(それはそれで立派な戦略のひとつですが)、あえて意見してもらうために無名でいるっていう考え方が、とても新鮮だなーと思いました!


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