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「心地よさ」だけでいい。 ふたり指輪 『CONNECT』

こんにちは、杉原賢です。
「もっとも心地よい"ふたり"のかたち」を掲げ、『SWITCH DE SWITCH』というライフスタイルブランドをプロデュースしています。

主に“ふたり指輪” 『CONNECT』という、とってもシンプルな指輪を提案するブランドです。今年1月のリリースからおよそ9ヶ月を経て、本日10月14日にブランドリニューアルと併せて新プロダクト『DOUBLE TITANIUM(ダブルチタン)』を発表しました。

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ここでは僕の、ブランドづくりにおける「過去の失敗と学び、現在の挑戦」を綴りたいと思います。
具体的なノウハウ共有やデータ分析といった頭脳派noteではありませんが、ブランドづくりに興味のある方や、新しいことに挑戦しようとする方には、何かしらの形でお役に立てるような気がします。これを読んで、どうか杉原と同じ轍を踏まず、賢くスマートに挑戦してください。
“ふたり指輪”に関しては、リリース時に投稿したこちらのnoteで詳細を説明しているので、より立体的に杉原の失敗を知りたい方は予めご一読ください。

失敗その1:クラウドファンディングの大敗

僕がまだ”結婚指輪”のデザイナーをしていた頃、クラウドファンディングに挑戦したことがあります。加速するパートナーシップの多様化を肌で感じ、「結婚指輪よりも自由なペアリングをつくりたい」と考え始めた頃です。この時には指輪のデザインも定まっておらず、“ふたり指輪”という名前すらありませんでした。

結果、プロジェクトの目標金額100万円に対して集まった支援額は32万2千5百円。大敗で幕を閉じました…

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今になって思うと、始まった瞬間から結果は決まっていたように思います。
当時の僕は、とにかく未熟でした。

プロダクトやコンセプトが未熟なうえに、僕自身が大変な未熟者だった。圧倒的に、プロジェクトに対する本気度が足りていませんでした。
「会社員だから時間が足りない」と言い訳をして宣伝活動を怠け、不要なプライドを捨て切れず、支援を求めることを恥ずかしいとさえ思っていました。僕には「なにがなんでも目標金額を達成させたい!」という気概がなかった。己の甘さと弱さが、そのまま結果となって表れただけだと思います。

これからクラウドファンディングに挑戦する人に向けて、僕からできるアドバイスなんて何一つありませんが、プロジェクト公開後が本番ですよ。とだけお伝えしたいです。

失敗その2:自己満で走り出した

クラウドファンディング挑戦から半年後、僕は大敗に懲りず、勝算のないまま“ふたり指輪”を事業化するために会社を辞めて独立しました。

日本政策金融公庫から年収レベルのお金を借り、技術力が高いと言われるジュエリーメーカーやケースメーカーを片っ端から調べ、直談判を繰り返しては契約を交わし、試作を重ねてようやく完成した“ふたり指輪”。

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ジュエリー歴10年の集大成だと息を巻き、根拠のない自信だけで全力疾走していました。

とはいえやはり、根拠のない自信は誤ちの原因になります。“ふたり指輪”リリースに際して、僕はロゴからパンフレット、Webサイトまで、全てのクリエイティブを自分でコントロールしていました。

勿論、各種プロの力を借りながらではありましたが、振り返るとこれが一番の過ちでした。客観性をごっそりと欠いた僕は「プロダクトは良くて当たり前」という謎の前提をつくり、肝心な指輪のこだわりポイントをほとんど伝える気がなかったんです。コンセプトや想いを伝えることばかりに力を注いでいました。

指輪が擬人化した物語の絵本「ぴったりぽかぽか」を最初からつくり、パンフレットに同封しちゃうあたりが、僕の無謀さを証明しています(笑)そうして2020年1月29日、僕の言いたいことだけを形にして、“ふたり指輪” 『Switch de Connect』をリリースしました。

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学び①:ちっちゃく始めればよかった

指輪は勿論、ケースやPR動画、パンフレットに絵本…すべてにこだわりました。そしてこだわった分、お金もそれなりに出ていきます。当たり前のことですね。

特に、指輪ケースは破格でした。詳しい額面は伏せますが、相場のおよそ10倍の単価でオーダーメイドケースを特注していました。そろそろお気づきでしょうが、杉原はシンプルにバカなんです。初期費用をかけすぎたばかりに、広告費などの運営予算が大幅に削られ、諸業務を気軽に外注できない状況を自らつくっていました。「もっとちっちゃく始めればよかった」。心から後悔しました。学びはずばり、「こだわればいいってもんじゃない」です。

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失敗その3:しぼんでいく自信と、ふくらむ自己否定

リリース直後は“ふたり指輪”を広めたい一心で、とにかく動き、沢山の人と話しました。

一向に成果は出ないけど、それでも走り回ることができたのは僕に“根拠のない自信”があったからです。手前味噌ですが、ジュエリーの世界ではそれなりに結果を出していたつもりだったので「本気で頑張ればなんとかなる」。そう漠然と信じていました。

しかし少しずつ、パンパンにふくれていた自信はしぼんでいきます。成果が思うように出ないことも原因のひとつですが、周囲の言葉による影響が大きかったと思います。

指輪のコンセプトについて、共感とお褒めの言葉を頂く反面、冷ややかで辛辣な言葉も沢山頂いていました。特に、学生時代から慕っていた実業家の方から「君の事業は100%、失敗するよ」と言い切られた時は、こたえましたね。おどけて明るく振る舞い、動揺を隠そうとする自分が心底情けなかった。妻と息子に、申し訳ない気持ちで一杯でした。

この頃は何度も「本当に“ふたり指輪”をつくるべきなのか?」「引っ込みがつかないから辞められないだけなのでは?」と自問を繰り返しました。そして答えは出ないまま、迫りくる新型コロナウイルス…

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失敗その4:諦めかけたけど、救ってくれたのはお客様

リリースから成果のないまま2ヶ月が経った頃、鬱屈する気持ちを吹き飛ばそうと「指輪の試着会」を企画しました。(通常はオンラインでのみ販売しています)

僕は元々接客業を兼ねたデザイナーだったので、接客には自信があったし、お客様と直接コミュニケーションをとれば次のアクションに活きる情報も得られるだろうと思ったからです。そして会場が決まり、企画が具体的に動き出した途端、新型コロナウイルスによる自粛期間が始まりました。当然、試着会は中止です。

僕の場合、指輪の販売方法はオンラインだけなので直接的な被害はありませんでしたが、運用していたSNS広告によるWebサイト流入数は激減し、資料請求もほとんど来なくなりました。ただでさえ自信をなくしかけていた中で、とどめを刺された気分でした。この頃は全てが無意味に思え、広告を一切打たなかった期間もあります。妻に隠れて転職サイトを眺めていたりもしました。

そうして自暴自棄になりかけている中、Webサイトから一通の問い合わせメールが届きます。

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?????

急いで会社の口座を確認すると、確かに1組分の指輪代金が入金されていました。どうやら、システムの不具合により確認メールが来ていなかったようです。信じられないことでした。なぜならこの注文が、全く面識のない方から頂く初めての注文だったからです。

その後、指輪のお届け時に電話でヒアリングを行ったところ、立ち上げ当初にイメージしていた通りの“ふたり”であることがわかりました。これは本当に嬉しかった。危うく電話口で泣いてしまうところでした(笑)僕は、事業を諦めかけていた自分を恥じ、少しだけ自信を取り戻すことができました。このお客様を、恩人だと思っています。

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学び②:一流の仲間が必要だ

ブランドのリリースからおよそ3ヶ月間、僕は持てる全てを出し切りました。しかし、満足のいく成果には遠く及びません。不安で悔しくて、寝れない夜がいくつもありました。

そしてある時ふと、うまくいかない最も重大な原因は、僕自身の能力不足だと気づきます。ブランドに関わる全てを自分で行っていたけれど、その中で誇りを持てるのは結局“指輪”だけ。一流のブランドにしたくて立ち上げたはずなのに、指輪以外はどれをとっても三流の僕がつくっているんです。そりゃあ、うまくいかないはずですよね。

だから、それぞれの分野で活躍する一流の仲間を探し始めました。

挑戦その1:リブランディング

仲間探しを始めた途端、奇跡のように縁が重なり、マーケティング、PR、デザイン、イメージ制作のプロが仲間に加わってくれました。総勢7名。実力はもちろん、人としても尊敬できる最高の面々です。

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zoom会議で顔を合わせる度、ひとり孤独に走り回っていた頃の辛さを思い出して胸が熱くなります。たまに我慢できず、感動していることをメンバーに伝えると、まあまあ面倒くさそうな顔をされますが、そんなやりとりすらたまらなく嬉しい。

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彼らと最初に取り掛かったのは、ブランドの指針づくり。つまり“理念”の言語化です。根本的なブランドの在り方や、これから目指すものを定めたうえで、ロゴマークなどのクリエイティブをつくっていきました。新しいブランドロゴがこちらです。

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SDSオリジナルのフォントを使用。アルファベットは全て大文字になり、よりシンプルで明瞭なサインになりました。
僕がつくった旧ロゴマークは「人の手から生まれる“装置”によって心を切り替えたい」という想いを込めて、手動式の古いスイッチをモチーフにしていましたが、その想いだけは今も変わりません。

話し合いを重ね、「もっとニュートラルに“ふたり”の心地よさを追求するブランドにするべきだ」という結論に至り、あえて既視感の強い現代式のスイッチをモチーフに、新しいロゴマークが出来上がりました。

「もっとも心地よい“ふたり”のかたち」を生み出すブランド
『SWITCH DE SWITCH』の誕生です。

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挑戦その2:みんなでつくる

ブランドに明確な指針ができたことで、メインプロダクトである“ふたり指輪”の在り方や目指すものも、より明確になっていきました。メンバーと議論を重ね、一緒に考えることで、ひとりの時は仮説でしかなかったものが、確信に変わります。ここでようやく、杉原の自信が原形を取り戻しました。
“ふたり指輪” 『CONNECT』は、“あらゆるふたり”にとって「もっともシンプルで、心地よい指輪」。脇目も振らず、それだけを追求します。

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だからこそ、リニューアルに際して指輪幅のバリエーションは増え、新プロダクト『DOUBLE TITANIUM(ダブルチタン)』が生まれました。チタンは金属アレルギーが起こりにくいうえに、驚くほど軽くて硬い素材です。

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つまり『DOUBLE TITANIUM(ダブルチタン)』は「ずっとつけたくなる指輪」ではなく「ずっとつけられる指輪」なんです。その特徴を活かし、つけるほど価値が増していく仕組みをデザインしました。詳細については、ブランドサイトで確認してみてください。

僕達のつくる指輪は、自分らしさを表現するデザインの自由度も、自尊心を高める豪華さも備えていませんが、心地よさだけはどの指輪にも負けません。“ふたり指輪”『CONNECT』こそが「もっともシンプルな“ふたり”の証」であると、今では自信を持って断言できます。

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学び③:続けてしまう理由

前述〈失敗その3〉の項で「『本当に“ふたり指輪”をつくるべきなのか?』『引っ込みがつかないから辞められないだけなのでは?』と自問を繰り返しました」。と記しましたが、これについては仲間が出来てからも自問し続け、最近になってようやく答えが出ました。

前提として、ブランドづくりには大きく2つの原動力「稼ぎたいドリブン」と「創りたいドリブン」があると思っています。リリースから半年間、僕は一体どっちなんだろうと悩み続けていました。でもなんだか、どっちもしっくりこなかった。もちろん稼ぎたいし、創り続けていたいけど、それによって突き動かされたわけではないからです。

行き着いた答えは「信じちゃったドリブン」でした。現在の僕を知るために、過去の僕を振り返ってみたんです。すると、数あるアート・デザイン分野の中でジュエリーこそが自分の道だと信じちゃった学生時代の僕や、結婚指輪だけが唯一社会に役立つジュエリーだと信じちゃった新人デザイナー時代の僕と同じように、今の僕は“ふたり指輪”が社会に必要だと信じちゃってることがわかりました。
要するに信者ですね。盲信でもしない限り、こんな尖ったコンセプトだけで2年間も走り続けるなんてできませんから(笑)

思うように結果が出なくても、嘲笑されても、続けてしまいたいものがあるなら、信じちゃうのはひとつの手だと思います。家庭がある人には、あまりおすすめできませんが。w 

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ここまで長々と綴ってきましたが、挑戦は現在進行中です。むしろこれからが本番です。

繰り返しになりますが、本日10月14日にブランドリニューアルと併せて新プロダクト『DOUBLE TITANIUM(ダブルチタン)』を発表しました。

“ふたり指輪”を信じちゃった僕は、今日から改めて、仲間達とともに走ります。
これからは失敗談だけじゃなく、成功談も語れるようにがんばりますね。
ご精読、ありがとうございました。

杉原賢

ふたり指輪 CONNECT ブランドサイト

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