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ITコンサルタント不要論について外資系IT企業のコンサルタントが考察してみた

みなさん、「ITコンサルタントは、高給取りなのにも関わらず、意味がない」という話を聞いたことがあるだろうか。私もITコンサルタントの仕事をするまでは、「コンサルタント」という抽象度が高い業種に若干信頼できない部分があった。しかし、実際に現在ITコンサルタントに関係した仕事をしていると、その重要性や課題が見えて来たので、現役ITコンサルタントが感じる未来のITのあるべき姿について伝えたいと思う。

まず、ITコンサルタントについて議論する上で、日系大企業のIT事情を理解する必要がある。ほとんどの日系企業は、これまで攻めではなく、「守りのIT投資」をして来てしまったことが、ITコンサルタントがとても不明瞭な存在になったことに繋がっている。また、DX時代の今だからこそ「コンサルタント」が活躍できる時代ではないかと思う。

電子情報技術産業協会(JEITA)が2021年1月12日に日米企業を対象としたDXに関する調査レポートの結果によれば、企業内でのIT予算の増減見通しを尋ねた項目では、日米両国ともに「増える傾向にある」と回答した企業が多数派で予算は拡大傾向にある様子が伺える。ただし細かく見ると、「増える傾向にある」という回答の比率は、日本企業が58.1%であるのに対して米国企業は71.0%となっており、差が生じている。

日本とアメリカに存在する約20%の差は、日系企業が考えるIT投資の目的と米国系企業が考えるIT投資の目的が違うことから、これだけの差が生じているのではないかと感じる。


守りのIT投資から攻めのIT投資が目指すゴール

みなさん、IT投資という単語を聞いて何をイメージするか一度考えてみて欲しい。みなさんがイメージするITとは、「テレワークを促進させるためのズーム会議の導入」「顧客データを保護するためのセキュリティー対策」「既存の会社PCのOSアップデート」などではないだろうか。もし上記のイメージだけが頭に浮かぶのであれば、これは日系企業で働くビジネスマンや現役ITコンサルタントに対しても黄色信号をプレゼント差し上げたい。なぜなら、上記で述べたIT投資やIT支援に纏わる業務は、守りのITに位置付けられることが多い。守りのITとは、一言で言うと、減点方式によって炙り出された課題をマイナスから0にまで行うことと定義する。例えば、昭和時代であれば、壊れたメインコンピュータをテクニカルエンジニアが直し、同じシステムを使い続けるなどがあげられる。

守りのITとは、CIOをトップにおいて、企業全体のITシステム基盤をいかに事業成長に合わせて安定稼働させるかを考える重要な責務であると考えられる。しかし、令和時代に社会全体で行う必要があることは、守りではなく攻めのIT改革だ。攻めのITとは、ビジネスモデルの変革や業務体制を最適化することを前提とした、IT導入を支援することである。例えば、トヨタが今後自動車を売る会社からモビリティーというサービスを展開する企業へと変革する上で、今までは機械エンジンの技術革新を重視してきたが、今後は電気自動車やIoTへの投資が求められる。この時、トヨタには、ITのバックグラウンドを持つエンジニアや専門家が少ないので、ITコンサルタントにお願いし、攻めのIT投資を推進する必要がある。

しかし、攻めのIT投資を前提としたITコンサルは、難易度が一気に上がる。なぜなら、既存の多くのITコンサルタントは、IT課題に対してIT知見を駆使し、適切なソリューションを提供することを重きしていたので、社内全体の変革を前提とした提案はまだまだ難しい所が多いと考えられる。ITコンサルタントは、ITが専門であるのであって、お客様先の業務内容やビジネスモデルの理解は、2番手、3番手だったりすることが多い。

だからと言って、現役ITコンサルタントやIT部門で日々仕事をされているビジネスマンの方は屈する必要は全くない。なぜなら、ITとは、人間の社会経済行動に密接につながる重要な知見であるからだ。仮にあなたが、営業支援ツールを導入するITコンサルタントだったとしよう。営業ツールをお客様先に導入することで、導入後は導入前よりも営業成績や社内コミュニケーションの活発化に貢献することはIT技術の視点から理解されているはずだ。後は、営業支援ツールを単体のメリットとして理解するだけでなく、お客様先のあるべきビジネス戦略や営業体制の最適化を理解し、営業支援ツールの活用を提案できれば、攻めのIT戦略への支援ができる一歩を踏み出せるはずだ。

ITコンサルタントは、日系企業のあるべき未来の姿を目指す上で直面する課題を一番早く見つけ出せるかも知れない立場にいる。また、日系企業のIT部門で活躍されている方も、社内の全体図を理解し、経営者が目指すビジョン戦略に対して、どうITが貢献できるのか1人で考え込まず、周りにエンゲージできれば、既存の仕事を拡張し、攻めのIT投資を会社としてできるはずだ。今回、ITコンサルタントやIT部門で働く方を意識して説明しているが、一番の根元にある課題は、それ以外の業務に携わる方がどれだけIT課題をビジネス課題として共感し実行することが日本のデジタル化を進める上で重要だと考えられる。

最後に

ITコンサルタントは、永遠に進化し続けるIT知識をアップデートしていき、お客様先の課題を理解した上で、どのようにIT技術が社会に貢献できるかを誰よりも考える必要がある。全企業がITリテラシーを平均的に向上させる必要があるのは前提だが、今後は知識のギャップを補い、攻めのIT投資を応援できるITコンサルタントが令和時代の社会を引っ張っていくのではないかと思う。

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