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『独白』

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#孤独

夕陽の映る海面が

翡翠色の波を立てていた

砂浜には忘却の孤城が

波にさらわれ崩れてゆく

波は肌で触れれば暖かく、

丘には琥珀色のすすきが

夕凪の涼風になびいて心地よかった。

丘の上には赤と白の灯台が

独り静かに砂浜の音楽を聴いていた。

掻き消された想い

まっ白な雪の中に指で文字を刻んだ。

明日にも消えちゃいそうな

震えた文章を書いたよ。

なぜなら僕の想いは

誰にも届きそうにないから。

雪のように積もる想いも

寒さに震えた感情も

何もかも踏み潰されて凍りついてしまった。

凍った僕の心は春を待ち、叫んでいる。

素晴らしき思い出

泡沫に飲まれる沈没船
 
波に崩れ、深海を静かに漂う。

木片は腐り果て、粒子となって

やがて海水となった。

かつて船だった場所は

水底の砂地に窪みを残し

やがて窪みから鮮やかな海月が生まれた。

海月は水底で唯一の光源となって

いつまでも漂っている。

夜の踏切

揺蕩う鬼火に誘われて

遮断機を乗り越えた

単調な警報音

赤く点滅する警告灯

甲高いソプラノが鳴る

不協和音 耳鳴り

泥濘と混ざり 吐瀉に溶ける

宵、酔い

静寂包む 冬の夜の街

酔いの漂う 熱い吐息

世界を覆う 黒い天蓋

空に散りばむ 儚い星に

故郷想う 孤独の空に