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私的詩手帳

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_人人人人_ > 突然の詩 <  ̄Y^Y^Y^Y^ ̄
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2021年10月の記事一覧

(詩)そら

すかす すべて
そら すべて

すかす すべて
そら すべて

しとり しとり
しとね しめる

ぬめり ぬらり
やどり やどす

とばり するり
あけて あける

あかり あかし
めざめ さめる

すかす すべて
そら すべて

すかす すべて
そら すべて

さらり ぽろり
からり はじく

たわみ きしみ
かすれ すれる

ふるい ふるえ
ひびき ひびく

ひかり はらり
ふらり とどく

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(詩)奇跡のなかのきみ

わたしを呼んだ奇跡のなかに
思いがけずきみがいて
Y字路でわかれてそれぞれ
泣き顔困り顔で
道を急いだはずなのに
ひとつところで落合うなんて
互いにそれが幸いだと
なかなか思えなかった
あの日々が
なつかしくて

きみのいないここまでも
考えられないけど
そりの合わない日がないのも
考えられなかった
でも歯車が噛み合うように
きみが出るとわたしは引っ込み
わたしが突っ張ればきみは引く
プラマイゼロ

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(詩)五線譜

いっしょならどこへでも行ける
いっしょならどんな憂いも分けあえる
いっしょならなんだかうれしい
そう思える日々が
そう思える場所が
いまここにあるふしぎな奇跡

あの音のひとすじの輝き
わたしの中からあらわれた輝き
パパにもママにも見せられなかった
無邪気な光が鋭利すぎて
みんなを傷つけてしまう
それが怖かったから
泣き濡れた夜をつつんだ星あかりも
わたしの瞳の奥には届かなかった

気ままなふりし

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(詩)飛ぶ夢

空を飛ぶ夢を見る

大人になったからって
空を飛べるわけじゃない
そんなことはわかってた
人は鳥じゃないし
鳥になることはできない
そんなことはわかってる
それでも飛びたいと思うのは
現実から逃げたいわけでも
ここではないどこかを目指すわけでも
なにかを持て余してるからでも
ない

空を飛ぶ

空を飛ぶことができるからって
大人になれるわけじゃない
飛べなくても知ってる
鳥より高く飛べたとしても

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(詩)ソング オブ バード

ひとり 暗闇を飛ぶ
夜明け前よりも暗いかなたに
虹がぽっかりと浮かぶ
追いつけないそのむこうに
何があるかは知らない
でもわたしは飛ぶ
すべてをなげうっても
みんなのために
だれかのために
そこにあるものに
手を伸ばしたい
そうすることで
あの日裏切ってしまった
わたし自身に
報いることができる
そう思ったから
でもそんなとき
歌が聞こえた

みんなとみんなをつなぐ
みんなとわたしをつなぐ
過去と

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(詩)名前のない日々

名前もなく刻をわたり
誰かのなまえに出会うまで
越冬する花の種のように
時をとめたぼくら

あの日出会ったあのなまえの
けがれのない瞳のこと
もう覚えてないはずなのに
いまもわすれられない

追いかけても行けないところまで
刻の河のむこうまで行ってしまって
影だけを残したなまえを忘れて
ひざをかかえてぼくは眠った

名前も忘れたぼくを起こしたのは
芽吹きを戸惑う小さななまえ
きみのくれたくすぐった

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(詩)星座

わたしがわたしになるまでには
たくさんの人からもらった
たくさんのかけらが必要だった
ちっぽけなわたしには
六等星のかがやきもない
だれかの輝きがないと
見つかることもないような
光ることをしらない
ちいさな惑星ですらあった

わたしがわたしであるためには
わたしだけで何もできなかった
すれちがいをくりかえす星々の
ふしぎな引力のまじわる線
それがみちびく運命のすじが
おぼつかないわたしたちを

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かたち

かたちあるものに
かたちのないものが宿る
いっしょの日々をくりかえし
荒れた手のぬくもりを
冷や汗かく肌のしめり気を
うつわのように受けとめつづけて
わたしのにおいが染みつくまで
無言でよりそっていったかたちの
その声が聞こえたとき
かたちあるものへ
かたちのないものは息づく

かたちのないものに
かたちが与えられる
ふれることのできないより所を
時間のすきまの息継ぎに
なんどもなんどもたぐり寄せ

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きりきず

いつのまにか紙の端で
切られて血をにじませる
指先のひふのように
心の中にひりつくきりきず

小さく小さくそれでいて
いつまでもささいな痛みで
感情のすきまにひそみつづける
そしていつくしみを許さぬうちに
いつしか痛みはどこかへ消える

あとに残るのは小さなしこり
なおったあとでやさしくなでても
かたくなさだけが残りつづける
そのうちいつかのしこりと
示しあわせたように
肌寒い夜にやけるような

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(詩)珈琲の味

考えることをやめようとせず
安易なほうへ流されることに
いつだって抗おうとして

サーチエンジンの向こうでなく
わざわざ自問自答の中に
答えを見つけようとして

100人中のn人になってしまう前に
せめてちっぽけなままで
ありつづけようとして

そんなきみの淹れたコーヒーは
某かでしかないぼくには
ただひたすら甘くて苦かった
今のぼくにもまだ手に余る
昔ムリして好きって言った味

自分にうそをつく

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