見出し画像

新しい顧客のつくりかた

山脇秀樹氏著『新しい顧客のつくりかた』(東洋経済新報社)。
消費者の観察と丹念な洞察をもとに、デザイン思考によって商品に独自の世界観と意味をもたらす手法について、極めて具体的なユーザー像やその購買活動に関する事例を挙げて解説しています。

かつて性能と品質で世界を凌駕した日本製品には、それらとは異なる新たな意味付けを行なうことによって再び世界を驚嘆させ得るポテンシャルがあるという前提で、その道筋を示す目的で書かれたものです。

様々な事例を通して、筆者が一貫して掲げているのは「一体誰が顧客なのだろう?」「彼らは何故うちの商品を買うのか?」というシンプルな問いです。

企業が新たな市場に進出する理由は、「成長している市場を求めて」、「競合が参入しているのでそれを追って」、「既存市場のみに依存するリスクを回避するため」、といったもっともな理由からです。しかし筆者は、その際に「その市場の消費者は本当に自社の商品を買うのか」、といった冷静な視点が忘れられがちだとしています。

そして筆者が最も重要だとするのは、「新しい顧客を発掘するためには、その商品が顧客にとってどのような意味を持つのか、或いはどのような世界を創り出しているのか」という視点です。

本書では、主にモノと一般消費者を題材に話が進みめられていますが、たとえ法人向けの無形財を取扱うビジネスであったとしても忘れてはならない視点を幾つも提供してくれます。

私が身を置く人材紹介ビジネスにおいても、労働市場の大きな様変わりによって様々なビジネスチャンス(新市場)が産まれており、そこに参入しないことがリスクとなるような分野もあります。

しかしそこに参入する際にも、年齢や業種といった旧来の分類軸によって安易な事業定義を行なうのではなく、その市場で自社のサービスに顧客はどのような意味を感じるのか、それは他社のサービスと何が違うのかを、顧客の購買行動を充分に観察した上で、明確な言語化をしておかなければなりません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?