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毒にも薬にもならない企業理念

日経ビジネスオンラインから「名コピーライターが「言葉」より大事にしているものとは」。

「言葉にできるは武器になる(※①)」(藤吉豊氏)、「文章力が最強の武器である(※②)」(梅田悟司氏)の著者で、“コトバ”を道具に仕事を行なうお二人の対談記事です。

 「言葉」は、アウトプットされて初めて目に見えるものとなり、その良し悪しや巧拙は「文章力」、「表現力」といった観点で評価されてしまいますが、お二人が強調するのは、そもそも言葉とは「考えるツール」として作られたものであるということ。すなわち、「言語化する」とは考えることであるということです。
 
 言葉を発する際、「相手に理解してもらおう」という意識に偏ると相手(受信者)がそのコミュニケーションの主役になってしまいますが、「伝える」というコミュニケーションの目的からすると発信者である自分が主役であるはずです。
 そこで重要なのは自分の言いたいことを自分が明確に理解している状態になっていること。自分の頭の中を自分で明確に理解できてさえいれば、どんなに言葉が稚拙であったとしても相手の理解を得られると梅田氏は言います。
 
 梅田氏は、多くの伝統的企業が掲げる「社会の公器として云々」という似通った企業理念を「毒にも薬にもならない」と評した上で、その原因を「抽象度が高く解像度が低い」ことにあるとしています。
 働いている社員が「そうそう、私はこのために働いているんだ! もっと頑張ろう!」という気持ちになるような理念を作るには、それを「抽象度も解像度も高い文章」にしなければならないというのです。

「抽象」の対義語は「具体」。理念を具体的にし過ぎると大義が伝わり難くなりますし、抽象的すぎると何をしてよいのか解らず解釈にバラツキがでます。
梅田氏が挙げた実例は、ユニクロ(ファーストリテイリング)の『Life Wear』というタグラインからの「ふだん着の日が、人生になる」というメッセージへの落とし込み。たしかに、「普段着を作る(売る)」という“具体”が、「それによって人々の人生をよきものにする」という目的と相まって仕事の意義を解像度高く表現する文章になっています。
 
 企業理念はともかく、「私たちが顧客に提供する価値は何か」、「真に顧客が求めるサービス品質とは」といった問いは、安易に皆が共感するキーワードや施策を話し合うのではなく、まずは一人ひとりの従業員が“自分で理解できる状態”になるまで考え抜くところから始めるべきなのではないでしょうか。

<第1回>

<第2回>


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